豊かな源泉とさまざまな泉質。
江戸時代より愛された歴史ある湯
北アルプス南部の乗鞍岳のふもと、海抜1250mにある「平湯温泉」。岐阜県高山市奥飛騨温泉郷の中で最も古く、歴史のある温泉といわれています。発見にまつわる、さまざまな伝説や民話が残されており、江戸時代末期に書かれた「飛州志」によると、甲州の武田家臣が飛騨に攻め入った際、硫黄岳の毒霧で倒れた兵士たちが、老いた白猿に導かれ道端の湯へ。それが「平湯温泉」で、みんなが元気を取り戻したそう。
そのほか、江戸時代には、北陸の諸大名が参勤交代の途中で疲れを癒したことから、湯治場としても繁栄。明治初期に書かれた「斐太後風土記(ひだごふどき)」にも、多くの人がこの温泉を利用している図などが描かれており、古くから愛されてきたことが伺えます。
現在は広いバスターミナルが設けられ、周辺には飲食店や土産物店もあることから、乗鞍や上高地、新穂高、高山などを訪れる人の拠点にもなっています。
活火山の焼岳と乗鞍岳を熱源とし、20軒の旅館や民宿に40以上の源泉があるのが特徴。現存する源泉(60度以上の高温泉)の総湧出量は毎分8600ℓ、1日約1200万ℓにもなり、これは一般家庭の浴槽で使用する水量の約130年分にも相当するほど湯量も豊富です。泉質もさまざまで、湯の色も透明、茶褐色、緑褐色、白濁と施設によって異なり、日帰り温泉をハシゴしてお湯の違いを楽しめるのも「平湯温泉」ならではの醍醐味です。
文/佐藤千鶴子、長南真理恵(LoLo Creation)
効能/胃腸病、リウマチ性疾患、神経症、皮膚病など
平湯大滝
落差64m、幅6mの迫力ある平湯大滝は、飛騨三大名瀑のひとつで、日本の滝百選、岐阜の名水50選にも選出。新緑の季節は、緑鮮やかな木々が大滝を囲み、マイナスイオンたっぷり。
平湯の湯
森の中に建つ木造り湯小屋は、日々の喧騒を忘れられる穴場的スポット。石造りの露天風呂で、茶褐色に濁った単純温泉をかけ流しで堪能できます。入浴料は寸志(300円程度)。営業時間6:00~21:00 (冬期は8:00~21:00)、不定休。
平湯民俗館
昔の暮らしを再現した館内には、夏も火を絶やさない囲炉裏や、農機具などを展示。40年以上も前に富山県利賀村から移築した合掌造「旧高桑家」や、飛騨の蔵柱地区から移築した高山市文化財「旧豊坂家」があり、見学も休憩も無料で利用できます。
奥飛騨クマ牧場
ツキノワグマなど、100頭余りのクマたちに出合えます。おねだりする熊にエサをあげたり、こぐまを抱っこしての記念撮影も。お土産には、やけどや擦り傷に効果があるという、マタギも使っていた「熊の油」が人気。入園料は大人1100円。