ゆったりヒストリー

ゆったりヒストリー
硫黄岳の毒霧で痛手を負った武田軍の兵士たち。老いた白猿に導かれて入った「平湯温泉」で癒され、元気を取り戻しました。
イラスト/池田衣絵

平湯温泉[岐阜県]

その湯にまつわる伝説や歴史を巡る、温泉の旅。今回は、江戸時代の兵士たちを癒した奥飛騨温泉郷の平湯温泉へ
平湯温泉[岐阜県]
ゆったりヒストリー 平湯温泉[岐阜県]
平湯の湯
資料館「平湯民俗館」の敷地内にある日帰り露天風呂。秘湯情緒のある森の中の湯は、訪れる季節によって、新緑、紅葉、雪景色など、美しい景色とともに、良質な湯を堪能できます。
平湯温泉[岐阜県]
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平湯足湯公園
平湯バスターミナルも近く、バスの待ち時間や、散策の休憩にぴったりな公園内の足湯。24時間の年中無休(10:00~11:00は清掃中で不可)で、無料で利用できます。
平湯温泉[岐阜県]
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ひらゆの森 露天風呂
手つかずの原生林の中に16もの露天風呂が点在。野趣あふれる雰囲気で、湯船によって湯の濁り方や温度が異なるので、入り比べる楽しみも。宿泊のほか、日帰り入浴も可能です。
ゆったりヒストリー 平湯温泉[岐阜県]

豊かな源泉とさまざまな泉質。
江戸時代より愛された歴史ある湯

北アルプス南部の乗鞍岳のふもと、海抜1250mにある「平湯温泉」。岐阜県高山市奥飛騨温泉郷の中で最も古く、歴史のある温泉といわれています。発見にまつわる、さまざまな伝説や民話が残されており、江戸時代末期に書かれた「飛州志」によると、甲州の武田家臣が飛騨に攻め入った際、硫黄岳の毒霧で倒れた兵士たちが、老いた白猿に導かれ道端の湯へ。それが「平湯温泉」で、みんなが元気を取り戻したそう。
そのほか、江戸時代には、北陸の諸大名が参勤交代の途中で疲れを癒したことから、湯治場としても繁栄。明治初期に書かれた「斐太後風土記(ひだごふどき)」にも、多くの人がこの温泉を利用している図などが描かれており、古くから愛されてきたことが伺えます。
現在は広いバスターミナルが設けられ、周辺には飲食店や土産物店もあることから、乗鞍や上高地、新穂高、高山などを訪れる人の拠点にもなっています。
活火山の焼岳と乗鞍岳を熱源とし、20軒の旅館や民宿に40以上の源泉があるのが特徴。現存する源泉(60度以上の高温泉)の総湧出量は毎分8600ℓ、1日約1200万ℓにもなり、これは一般家庭の浴槽で使用する水量の約130年分にも相当するほど湯量も豊富です。泉質もさまざまで、湯の色も透明、茶褐色、緑褐色、白濁と施設によって異なり、日帰り温泉をハシゴしてお湯の違いを楽しめるのも「平湯温泉」ならではの醍醐味です。

文/佐藤千鶴子、長南真理恵(LoLo Creation)

名湯DATA

泉質/ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、炭酸水素塩泉など
効能/胃腸病、リウマチ性疾患、神経症、皮膚病など

平湯温泉周辺のおすすめ情報

平湯大滝

平湯大滝

落差64m、幅6mの迫力ある平湯大滝は、飛騨三大名瀑のひとつで、日本の滝百選、岐阜の名水50選にも選出。新緑の季節は、緑鮮やかな木々が大滝を囲み、マイナスイオンたっぷり。

平湯大滝
平湯の湯

平湯の湯

森の中に建つ木造り湯小屋は、日々の喧騒を忘れられる穴場的スポット。石造りの露天風呂で、茶褐色に濁った単純温泉をかけ流しで堪能できます。入浴料は寸志(300円程度)。営業時間6:00~21:00 (冬期は8:00~21:00)、不定休。

平湯民俗館

平湯民俗館

昔の暮らしを再現した館内には、夏も火を絶やさない囲炉裏や、農機具などを展示。40年以上も前に富山県利賀村から移築した合掌造「旧高桑家」や、飛騨の蔵柱地区から移築した高山市文化財「旧豊坂家」があり、見学も休憩も無料で利用できます。

奥飛騨クマ牧場

奥飛騨クマ牧場

ツキノワグマなど、100頭余りのクマたちに出合えます。おねだりする熊にエサをあげたり、こぐまを抱っこしての記念撮影も。お土産には、やけどや擦り傷に効果があるという、マタギも使っていた「熊の油」が人気。入園料は大人1100円。

湯を愉しむお宿

山のよろこび お宿栄太郎

山のよろこび お宿栄太郎
2種類の源泉を引いた濃い湯と
こだわり抜いた料理が自慢

趣も効能も異なる、微白濁の湯「湯の平の湯」と、濁り湯の「家上(いえがみ)の湯」の2種類の源泉を引いた大浴場と、2カ所の貸切風呂が魅力。「加温なし、循環なし、入浴・消毒剤なし」という日本温泉協会の最も厳しい基準を守り、湯船は常に新鮮な濃い湯で満たされています。大浴場の露天風呂には筋肉の疲れを癒す「家上の湯」を、内湯や別館の貸切風呂は、美人の湯として評価が高い「湯の平の湯」を使用しています。創業者の先代、2代目ともに料理人で、供される夕食も絶品揃い。飛騨牛をメインに、料理人自らがとった川魚、山菜、きのこなど、奥飛騨の食材にじっくり手をかけた品々ばかり。客室は広々とした和風の特別室のほか、スタンダードタイプの和室もあり、旅のシチュエーションによって選ぶことができます。旅館前にある「大手鞠」と表された小屋には大きな万華鏡があり、観光名所にもなっています。

住所/岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯649
電話/0578-89-2540

深山桜庵別館 湯めぐりの宿 平湯館

深山桜庵別館 湯めぐりの宿 平湯館
個性豊かな8つの風呂は
宿内での湯めぐりも楽しい

露天風呂をはじめ、東屋の外風呂、大浴場の内湯など、8つの風呂に浸かれる湯宿。露天風呂は2カ所あり、大露天風呂は雄大な山の景色を眺めながら入浴できるだけでなく、50人ほど入れる圧巻の広さで開放感もたっぷり。もう1つの岩風呂は木々に囲まれており、時間を忘れてゆったりと過ごせます。どの湯船も平湯温泉の源泉のなかで人気が高い、「蓬莱の湯」と「新子宝の湯」の混合泉のかけ流しで、湯量も豊富。夕食は、旬の食材や地場の料理が並ぶバイキングが好評です。客室は100年以上の歴史を誇り、異なる時代に建てられた3つの館で構成。特別室は真正面に奥飛騨の山々をとらえるつくりになっていて、部屋にいながら絶景を堪能できます。ほかにも、庭園を望める和室や、洗練された洋室など、どこも落ち着きのある雰囲気。2021年3月にリニューアルオープンしており、格式高い伝統とともに、清潔感が際立ちます。

住所/岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯726
電話/0578-89-0012