サステナブルって? “農color”を使った染色体験を通して地球にやさしい旅を考えた
熊本在住の旅色LIKESライターかっきーが茨城県土浦市にあるアパレルショップfutashiba248(フタシバ)へ。規格外となってしまったピーマンからできた染液“農color”を使った染色体験をしてきました。月刊旅色の新連載企画として、“サステナブルな旅”について考えた結果、地球にやさしい持続可能な旅のヒントを得られた気がします。
目次
茨城県土浦市でサステナブルな体験
今回の目的は、農業廃棄物となる野菜から生まれた農colorの染色体験を通して「サステナブルな旅」について考えるため。茨城県土浦市にあるfutashiba248(フタシバ)で、ピーマンを使った染色体験へ行ってきました。
最近よく耳にするサステナブルという言葉。わかりやすく言うと「環境負荷の少ない持続可能な」という意味だそうですが、その言葉があまりにも曖昧かつ広範囲であるがゆえに、よく分からないという人も多いのではないでしょうか。私もその一人で、サステナブルという言葉は聞いたことはあるけれど、説明を求められると愛想笑いを浮かべることしかできませんでした。
農colorを使った染色体験、スタート!
futashiba248がある茨城県は、耕地面積の割合が日本一。関東随一の農業大国で、メロンや栗、ピーマン、れんこん、白菜などの生産量が日本一を誇ります。
農colorの染色は、染液を作るところから始まります。今回は神栖(かみす)市のピーマンを染料としたストールの染色体験をしました。
体験に使うのは、規格外のピーマンや葉、茎など、農業廃棄物となってしまったもの。こちらは地元の農家さんからいただいているようです。これらを煮出し、布で濾(こ)して染液を作ります。ピーマンの茎は1時間以上煮出した後でも火を通したとは思えない程固く、力には自信のある私でも絞るのに一苦労でした。煮出した後の染料も乾燥させて、コンポスト(堆肥)にして畑の肥料に再活用されるそうです。煮出す際の撹拌(かくはん)※1 のために用意されたのは、味のある木の枝。梅の枝で、創業の頃からの相棒だそうです。全ての作業で自然への配慮が感じられました。
※1 かき混ぜること
黄味がかった濃い茶緑色の染液に選んだ生地を浸して、少し時間をおきます。染液に浸す時間や濃度によっても色味が変わってくるそうで、全く同じものを作ることはできません。
ここからは染めた色が落ちないようにするための媒染(ばいせん)に入ります。仕上げに水洗いをすると、生地の色は少し緑がかったマスタード色。緑色のピーマンや葉、茎で染めるなら緑色に染まるだろうと思っていたので驚きでした。乾かすとまた色味が変わるとのことで、仕上がりが楽しみです。
自然の風でしっかりと乾いたところで完成。ストールは水洗いをした時よりも落ち着いた優しい黄色に仕上がりました。もしかしてピーマンの香りが残っているのでは? と思い、期待して鼻を近づけてみると、微かに遠くでピーマンを感じる程度で、ほとんど分かりませんでした。
最後はストールの巻き方まで丁寧にレクチャーしていただき、この日の染色体験は終了。衣類においては大量生産でコストパフォーマンスが求められる昨今、自分で染色したという愛おしさと、洗濯や経年劣化で変化し育てていく楽しみと、一点ものという尊さを感じ、物を大切にする気持ちを再確認しました。
ピーマンから考えるサステナブル
農業経験がある友人に話を聞くと、「ピーマンの固い茎のほとんどは、乾燥させてゴミに出す」と言っていました。減農薬で育てた収穫後の葉や茎は、病気になっていることも多いそうです。ゴミとなった茎などは焼却することで環境負荷がかかってしまいます。futasiba248のような農業廃棄物を活用した取り組みがもっともっと広まり、地球にやさしいサステナブルな取り組みが増えていけばいいなと思いました。
日常的に食べているピーマン1つからも、考えられることはたくさんあります。例えば、そのピーマンはどこから来たのか。産地の近くであれば輸送距離が短いため、排気ガスなどの環境への負荷が少なく済みますが、遠くから運ばれてきた場合はその分燃料や排気ガスの量も増えてしまいます。今は便利な世の中になり、食べ物の旬がわからなくなるほど年中同じ食材が店頭に並び、食べられるようになりました。それは大変便利で有難いことなのですが、旬ではない時期に農作物を育てるには、ハウス内に暖房を入れて気候を調整したり、日照時間を長くする為、夜間にライトを照らしたりする場合もあり、環境への負荷がかかることも。他にも、味は同じでもサイズや見た目で商品にならなかった規格外の品などもあります。
廃棄となったピーマンの行方は? と帰路につきながら、いつも見ているピーマンの見えなかった部分をイメージし、私にもできることはないかと考え始めました。もちろん、作物には育てるのに適した環境があるので一概には言えませんが、その土地で採れた物を選んだり食べたりするだけでも、環境への負荷は減らすことができるのかもしれません。私の頭の中で考えているだけでは何も変わらないのですが、いつも食べている野菜のその前やその先について、イメージするだけで今の行動や選択が変わってくると思います。
その前と、その先を考える
染色体験の合間には関将史さん・裕子さんと、サステナブルな旅や考え方について話す時間もありました。普段からマイボトルを持ち歩いたり、レジ袋を断ったり、リサイクルできるものは積極的にリサイクルしたりと気を付けていますが、旅となると普段の生活とは異なるので、エコな心掛けもいつも通りにとはいきません。できることを見つける、気付く力が必要だと感じました。例えば、時間にゆとりを持った旅を計画し、街を自転車や徒歩で散策してみる。タクシーや公共交通機関で目当ての場所だけをいくつも巡る旅ももちろんいいのですが、乗り物を使わず自分の足で気が赴くままに旅をしてみると、ガイドブックには載っていないその街の魅力が見えてくるかもしれません。無理のない範囲でサステナブルな旅を楽しむヒントを教えていただきました。
サステナブルとは答えがないからこそ、さまざまな分野や視点で考えて、それぞれで実行することができます。一人ひとりが旅をちゃんと考え、地球にやさしい持続可能な旅を続けていけたらいいですね。
染色体験の詳細やfutashiba248の関将史さん、裕子さんのインタビューも。サステナブルの旅を考える参考にしてみてください。
◆futashiba248
住所:茨城県土浦市板谷1丁目4003-23
電話:050-5372-2803
※要事前予約