西九州新幹線開業記念で誕生した武雄市の日本酒「御船山」を知る
九州の北西部に位置し、東は福岡県、西は長崎県に接している佐賀県。九州と聞くと焼酎のイメージを持つ人も多いと思いますが、佐賀県には日本酒文化が根付いています。県内には日本酒文化を広めるために制定された「佐賀県日本酒で乾杯を推進する条例」など面白い施策が多々あるものの、武雄市内では日本酒造りが途絶えていました。しかし、2022年9月に西九州新幹線開業を記念し、武雄市の水と米で造られた新たな日本酒「御船山」が誕生。念願叶って完成した武雄市の日本酒は、どのような味、特徴、こだわりがあるのでしょうか。「御船山」誕生の背景も、あわせて紹介します。
目次
きっかけは西九州新幹線開業 「御船山」の誕生秘話
おいしい水や米など、豊かな自然に恵まれた佐賀県武雄市ですが、市内発祥の日本酒は半世紀前に途絶えてしまったそう。“市内唯一酒造” という屋号である牟田酒造場も、そのときに酒造りを辞めていました。そこから再び武雄市の酒を造ることになったきっかけは、西九州新幹線の開業です。この機会に多くの観光客に来てもらいたいという思いから、武雄市の小松市長が「武雄市オリジナルの日本酒ができないか」と提案したとのこと。この言葉をきっかけに「牟田酒造場」をはじめ、同じく武雄市にある「黒牟田焼」、「丸田宣政窯」、武雄市で味噌醤油などの加工製造を行っている「角味噌醤油」、鹿島市で酒蔵を営んでいる「光武酒造場」などが一丸となって「御船山」が誕生しました。
佐賀県の多くの方の思いが込められている「御船山」には、武雄市ならではの特徴が詰まっています。ここからは気になる3つの特徴に触れていきます。
特徴1:武雄市の「棚田米」を掛米として使用
日本酒の製造には、日本酒専用の酒米が使われることがほとんど。酒米は私たちが普段食べている食用の米粒より少し大きいといった、酒米ならではの特徴があります。ただ、私たちが普段食べている米にある“もちもち感”などが酒米にはないので、食べてもおいしいとはいえません。
酒米は、日本酒造りの工程の中で酒母・麹米・掛米に分かれ、そのうち「御船山」で掛米として使われている米は、武雄市北部に位置する若木町川内地区の「棚田米」。「将来に残したい棚田100選」にも選ばれていて、川内の棚田でできた米は食用として流通しています。つまり「御船山」の製造には酒用ではなく、食用の米が使われているということになります。「御船山」に使われている米は、ご飯として食べてもおいしく、日本酒にしても甘味がしっかりと残っているのです。
特徴2:日本酒が苦手な人にとっても飲みやすい味
佐賀県の日本酒の特徴は、甘口であること。加えて、特徴1でも紹介した通り、日本酒製造に使われている米は、炊いて食べてもおいしい米であるため、より甘味が増した味となっています。フルーティーですっきりとした飲み口なので、日本酒に苦手意識を持っている人や、日本酒デビューの1本にもおすすめです。
特徴3:お土産として選ばれるために包装にもこだわり
「御船山」誕生のきっかけとなった西九州新幹線の開業を通して、新幹線利用で県内のあちこちを観光してもらいたいそうですが、旅のスタート地点、もしくは終着駅でもある武雄温泉駅にもたくさんの人に来てほしいとのこと。西九州新幹線の開通とともにできた「武雄 旅 書店」では、店内のイートインコーナーでお酒を飲むことができます。「御船山」は現地で飲むだけではなく、お土産としても購入してほしいと造られたので、しっかりとした化粧箱に入れ、梱包にもこだわっています。「御船山」は「牟田酒造所」のほか、「武雄温泉物産館」「武雄 旅 書店」で購入できるので、武雄市の旅の思い出にぜひ手に入れてみてはいかがでしょうか。
「飲み旅-NOMITABI-チャンネル」でも「御船山」を味わっています
「お酒とおつまみを楽しむ“飲み旅”から、その町を知る」をテーマに、町の魅力や飲み旅の楽しみ方を深掘りしていくYouTube番組「飲み旅-NOMITABI-チャンネル」でも武雄市を特集しています。実際に牟田酒造場を訪れて、「御船山」をはじめ、かつて10万円で販売していたという焼酎「粕取り本部(もとべ)」を味わい、佐賀の酒の魅力に迫ります。ぜひご覧ください。