空知で暮らすこと、鈴井貴之さんインタビュー[北海道空知エリア]
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『月刊旅色2023年7月号』で空知の魅力をインタビューさせていただいた鈴井貴之さんは、移住のきっかけが地域活性のための会議だったこともあり、まちづくりに興味があるそうです。移住の苦労とともに、これから空知でやりたいことを伺いました。
写真/村上未知
目次
住む場所の居心地を整える
――札幌から移住されるにあたって不安や準備の大変さはありませんでしたか?
この土地を手に入れて最初の1年間は自分で開墾したんです。鬱蒼とした森に入って、草を刈って、自分で木も倒して、抜根(ばっこん)っていうんですけど木の根を取って。最終的に整地と、家を建てていただくのは大工さんにしてもらったんですけど、1 年間は札幌から通って自分でやりました。僕みたいな職業の人間が「あそこに土地を買ってすぐ工事を入れて別荘建てたよ」という風に思われたくなかったというか、地元の人に仲間として認めてもらうためっていうのもありましたね。
――仕事の合間を縫っての作業は、かなり大変でしたね。
最初のころ、1人で木をチェーンソーで倒してると森の中から人が現れたことがありました。ここの土地を譲っていただいた地主さんなんですけど、びっくり! その人が、「チェーンソーの音がしていると思ったけど、本当に1人でやってるのか。えらいな」と。それから、チェーンソーの調子を見てもらったりして交流が始まり、やがて「週末来てやっているらしいぞ」と噂が広がって、受け入れられていく感じでした。

――実際に住んでみてどうですか?
今ぐらいの季節はちょうどいいんですけど、北海道ですからやっぱり雪は大変ですよね。道路から家までは自分で除雪をしなくてはなりません。何日間か家を空けて戻ってみたら、雪で埋まっていることもあります。道路に車を置いて、歩いて家まで行って、家から道路までを除雪して、それから車を入れるとなると小一時間ぐらいかかります。最初のころは「こんなところでしんどい生活をして何をやっているんだろう」とか考えていましたね(笑)。さらに、冬場になったら高速道路が吹雪で閉鎖することも。札幌で仕事があっても行けません。いつもなら札幌から車で1 時間ちょっとぐらいなんですけど、雪で高速道路が封鎖されて、渋滞している一般道で、最長8時間かけて札幌から戻ることもありましたね。ただ、一番好きな季節は冬です。一般的には今ぐらいの季節が穏やかで一番いいと思われるんですけど、実は田舎暮らしをして感じてるのは、厳しい冬が一番いい。どさんこって、厳しい冬があるからこそ、春や夏のありがたみというのを感じられるのかな。そして真っ白になるから、仕事であったり、プライベートであったり、いろいろ考えることが多い中でもリセットされるような 1 回白紙に戻る気分にさせてくれるんです。
今後興味があることは「町の再生」
――空知に暮らしてるからこそ、やってみたいことってありますか?
空知に限らず、日本全国そうなのかもしれないですが、どんどん人口が減少して、街にどんどん人が少なくなって、これからどう生活していけばいいんだろうという厳しい状況になっているところはあると思います。そこがどう再生していくのかということに興味があります。
――「再生」というのは何か産業を見つけるとか、そういうことでしょうか?
少子化になっていますし、例えば田舎に企業誘致というのもなかなか難しいと思うんです。そうではなく、スケールダウンして今ある規模のなかでどう再生していくかっていうこと。赤平も昭和40年前後は、人口が6万人くらいいましたが、いまは9,000人くらい。ただ人口5,000人でも魅力ある発信をしている町はあると思うんです。「少ない規模でどううまくやっていくか」。そういう発想になれば、まだ9,000人もいるじゃないという考え方になる。そういう着眼点のもとに、どう町を再生していくかということに興味があります。住民が高齢化して、65歳以上の方がたくさんいるとなったら、その方々とどううまくやっていくかということを考えたほうがいいですよね。世の中って常に若い人を中心に考えて、若い人に来てもらおうとしていますが、なかなかうまくいかないので、いまある中で変えていかないといけないのかなと思っています。

おわりに
作り手として、常に頭をフル回転させている鈴井さんにとってスローテンポな暮らしも刺激だらけのよう。ちなみに、今年の夏までには裏庭をサバゲーフィールドにしたいという野望も。そのほかにも、先々の冬のために薪割りや夏に向けて山の手入れもしなくてはいけないそうです。「田舎暮らしは忙しいんですよ。札幌にいる方がボケーとしていますね(笑)」。のんびりというより面白がって暮らしを豊かにする様に、できる人はどこにいたってできるんだと思い知らされるようでした。鈴井さんが空知の魅力やおすすめの旅先を教えてくれる特集は、『月刊旅色7月号』に掲載中。あわせてご覧ください。
さらに、鈴井さんのご著書「ラストファンタジー」(幻冬舎)を読んでからご覧いただくと感情がざわつきますのでお試しください。