【富山県】職人の技と現代のセンスが融合した「高岡銅器」を手がける能作の工場見学へ
富山県高岡市で400年以上前からつくられる金工品「高岡銅器」。なかでも伝統を受け継ぐ老舗鋳物メーカー・能作。実際に稼働している工場で職人技の見学、箸置きなどの鋳物製作体験など、大人の社会科見学旅を連載する旅色LIKESライター・さっかが体験の様子をレポート! 現代の生活にもなじむ製品を生み出し続けることで多くの人に愛される秘密に迫ります。
目次
銅像やブロンズ像に使われる「高岡銅器」とは
高岡銅器は、富山県高岡市と周辺で作られる銅器です。まちで見かける銅像や、銅に錫(すず)や鉛を混ぜたブロンズ像の多くが高岡市でつくられています。あなたの小学校にあった二宮金次郎像も、高岡銅器かもしれません。近年ではインテリア用品やアクセサリーもつくられ、アメリカ訪問中の岸田総理の夫人からバイデン大統領の夫人へ、高岡銅器のネックレスやピアスなどが贈られたことでも話題になりました。
伝統を生かしながらも新しい“能作のセンス”が光る製品
今回、私が訪れたのは株式会社能作の本社工場。錫や、銅と亜鉛の合金である真鍮(しんちゅう)を素材とし、自社ブランド製品も製造販売している会社です。素材のやわらかさを生かした錫100パーセントの製品は、一つひとつ職人の手作業で仕上げています。平面からかごの形へ自由自在に変形可能な「KAGOシリーズ」はご存知の方も多いのではないでしょうか。簡単に手で曲げ伸ばしできる感覚が気持ちよくてクセになります。
現場の空気感を肌で感じられる! 少人数制の工場見学へ
入ってすぐ目に飛び込んでくるのが、色鮮やかな「そろり」という花器。工場見学というよりも、美術館に来たような気分です。
明るく開放的なエントランスホールが、工場見学の集合場所です。展示されているユニークな形の木製の型は、現役で使われているもの。見ていると、図画工作の授業を受けているときのワクワクした気持ちになります。
工場内は様々な機械の作業音がするので、ワイヤレスイヤホンを通して説明を聞きます。フラッシュオフであれば写真撮影もOK。芸術大学に来たかのような、センス良く掲げられた「鋳」の文字とドアのイラスト。20~30代の職人さんが多く、女性もいらっしゃるそうです。
1日5回開催される見学ツアーは、各回10人までの少人数制。アテンドの方の説明を聞きながらじっくりと見学できるのがいいところです。製造方法や能作の歴史について説明を聞いたら、いよいよ工場エリアへ。
積み上げられているのが枠。エントランスにも展示されていた原型となる木型を囲うようにこの枠を置き、鋳物砂(砂、粘土、水を混ぜ合わせたもの)を入れて踏み固め、製品の素材となる金属を流し込むための型を作ります。鋳物製作体験でこの部分を体験させていただいたので、その話は後ほど。
次に仕上げをする部屋へ。高速で回る円盤のようなもので削り磨くことで、商品として仕上げていきます。全て職人さんの手作業です。削りの厚さや形が製品の印象を決める大切なところです。表面が荒いものが、削られ輝いていきます。
能作がつくる真鍮の風鈴は、どれも手作りで一つひとつ音が違います。削る厚さの調節は驚きの0.01ミリ単位! 職人の技を感じられる商品です。施設内では、厚さや形による音の違いを体験できるコーナーもあるので、お気に入りを探してみるのもおすすめ。
●工場見学
料金:無料
所要時間:約30分
開始時間:11:00、13:00、14:00、15:00、16:00
休業日:日曜・祝日・年末年始 ※土曜は不定休
※工場見学は事前予約制
「NOUSAKU LAB」で鋳物製作体験
「NOUSAKU LAB」では、工場見学で見てきた職人の技の一部を体験できます。砂を押し固めて成型する生型鋳造法(なまがたちゅうぞうほう)で錫製品の製作。ぐい呑みや小鉢、箸置きの製作から選択できます。 私は箸置きをチョイス。
まず板の上に原型となる型と枠を置き、砂をかけていきます。砂の触り心地がよく、子どものころの砂場遊びを思い出し楽しい作業です。
砂を山盛りに乗せたあと、工場内では足で踏んでいましたが、体験では枠内に隙間なく手で押し固めていきます。その後、板を乗せひっくり返し、原型を外して完成。きれいにくぼんでいれば型作り成功です。
くぼみに溶かした錫を流し込む作業はスタッフの方がやってくれます。錫は融点(固体がとけて液体になる温度)が約232度と金属の中では低いため、火にかけた鍋にいれると、固体の錫がみるみるうちに液体に。流し込むと、あっという間に固まってしまい「わーすごい!」と思わず声をあげてしまいました。水の中で1~2分ほど冷まして完成です! 終始、子供のようにわくわくできる体験でした。次回はぐい呑みづくりにも挑戦したいです。
●鋳物製作体験
定休日:年末年始
※事前予約制
≪動物箸置、花箸置≫
開始時間:13:00、15:00
所要時間:約30分
定員:18名(付き添い含む)
対象年齢:小学生以上
料金:1,100円 ※小学生限定550円
≪ぐい呑、小鉢、小皿、箸置≫
開始時間:10:30、13:30、15:30
所要時間:約90分
定員:27名(付き添い含む)
対象年齢:中学生以上
料金:3,300円~4,400円
能作の器で地元の食材を使った料理をいただける 「IMONO KITCHEN」
富山県産の食材を使ったランチやスイーツなどが楽しめるカフェが併設されています。私がいただいたのは「かくれんぼシフォン 〜抹茶モンブランとわらびもち〜」(1,100円)。富山県小矢部産の新鮮卵が使われており、素材の良さを感じる、優しい味わいです。毎日14:00~数量限定で提供で、いつもあっという間になくなってしまうのだとか。アイスコーヒーは、錫のカップで出てきました。錫は古来より、味をまろやかにするといわれているそうです。キンと冷たく、まろやかで飲みやすいコーヒーでした。全てのメニューが能作でつくられた器で提供されます。洗練された無駄のないデザインの器で、目からも大人の雰囲気のカフェタイムを演出していました。
●IMONO KITCHEN
営業時間:10:00~18:00(LO17:30)
電話:0766-63-0050
定休日:年末年始
最後に
すっかり能作の製品に魅了されてしまった私は、併設の「FACTORY SHOP」で花器を購入しました。美しく洗練されたデザインの花器に似合うような素敵な人間になりたいです。まずは、花を絶やさずきれいに飾ることから、センスのいい女性に一歩近づきたいと思っているところです。一つの製品からライフスタイルを考えるきっかけにもなる力を感じました。
◆株式会社能作
住所:富山県高岡市オフィスパーク8-1
電話:0766-63-0001(9:00〜17:00)
営業時間:10:00~18:00
アクセス:タクシーで高岡駅より約20分、新高岡駅より約15分 高岡駅、新高岡駅からバス路線あり
駐車場:32台、大型バス用 2台