【雨の日も楽しめる】地域の文化資産、滋賀でレトロな廃校をめぐる旅
歴史やものづくりに触れる旅が大好きな、旅色LIKESライター・長月あきです。まもなく梅雨入り、雨模様の日が多くなりますね。今回はそんな雨の日の風情も楽しめる滋賀県の昭和初期に建築された小学校校舎を巡る旅を紹介します。歴史的建造物としても価値のあるレトロな校舎はフォトスポットとしてもおすすめです。
目次
ドラマや映画のロケ地にもなっている「旧鎌掛(きゅうかいがけ)小学校」/昭和5(1930)年建築
滋賀県東部に位置する、蒲生(がもう)郡日野町の旧鎌掛小学校。昭和5(1930)年に建築、平成13(2001)年に廃校となりましたが、平成15(2003)年に「しゃくなげ學校」として見学ができるようになった場所です。老朽化が進んではいますが、レトロで雰囲気のある木造の校舎は土・日・祝日のみ中に入れます。
のどかで静かな場所にある学校ですが、NHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』、『スカーレット』、『ブギウギ』をはじめ、さまざまなドラマや映画のロケ地として引っ張りだこ。さらに、テレビアニメ『中二病でも恋がしたい!』のモデルにもなっており、ファン向けにキャラクターのパネルなどが置かれた部屋がありました。
見学者の中には外国人のファンらしき方も。この小学校は、無料駐車場があるので車ならアクセスしやすいですが、公共交通機関ではちょっと行きづらい場所にあるので驚きました。近江鉄道本線日野駅から町営バスが運行しているものの、土曜日は1日3本、日曜日・祝日はバスの運行がありません。日曜日に公共交通機関を利用するなら、日野駅からタクシーかレンタサイクルを利用するしかないのですが、自転車でも恐らく30分程度はかかりそう。ファンの方にとって、ここはそれだけ時間をかけてでも訪れる価値がある「聖地」なんですね。
◆旧鎌掛小学校(しゃくなげ學校)
住所:滋賀県蒲生郡日野町鎌掛2362
電話番号:090-1029-8262
営業時間:土・日・祝日の10:00~16:00
入場料:施設維持協力金300円 ※任意
白亜のヴォーリズ建築「豊郷(とよさと)小学校旧校舎群」/昭和12(1937)年建築
旧鎌掛小学校から車で約40分の場所にある豊郷町は、江戸時代に多くの近江商人(※1)を送り出した町です。中山道(※2)が通るこの町に、国の登録有形文化財となっている建物「豊郷小学校旧校舎群」があります。街道沿いの広大な敷地に建つ白亜の校舎は今年4月に半年がかりで行われていた大規模修繕工事が終わったところです。
豊郷小学校旧校舎群は、地元出身の実業家・古川鉄治郎が私財を投げ打って建設にかかる巨額の費用を寄贈し、昭和12(1937)年に完成させました。古川鉄治郎は現在の商社・丸紅の前身である丸紅商店の専務を長きに渡り務め、丸紅の基礎を築いた人物です(ちなみに伊藤忠商事・丸紅の創業者・伊藤忠兵衛も豊郷町の出身で古川鉄治郎の叔父にあたります)。設計は日本で数多くの西洋建築を手がけた建築家・ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。平成14(2002)年頃まで校舎として使われた後、新校舎建設に伴い学校としての役割を終え、現在は町立図書館や子育て支援センターなど町の複合施設として利用されています。
校舎内の階段の手すりにはイソップ童話の『うさぎとかめ』にちなんだ、うさぎとかめのオブジェが置かれています。ゆっくりでいいから、コツコツ努力して前に進んでいって欲しいという古川鉄治郎とヴォーリズの想いが込められているのだとか。かめは、11歳で親元を離れ大阪に奉公に出て、コツコツと修行を重ねた古川鉄治郎を体現しているようです。
※1近江商人:近江国(現在の滋賀県)に本宅(本店、本家)を置き、他国へ行商して歩いた商人の総称。大坂商人、伊勢商人と並ぶ日本三大商人のひとつ。
※2中山道(なかせんどう):江戸時代に整備された五街道の一つで、江戸の日本橋と京都の三条大橋を内陸経由で結ぶ街道のこと。
旧鎌掛小学校同様、こちらも『べっぴんさん』、『おちょやん』、『カムカムエヴリバディ』、『ブギウギ』などのNHK連続テレビ小説のほか、数多くの映画・ドラマのロケ地となっています。また、アニメ『けいおん!』のモデルとなった学校でもあり、主人公たちが所属していた軽音部の部室などを再現した部屋が設けられています。こちらでも聖地巡礼に訪れているファンの方を何人も見かけました。校舎の左隣には図書館を改装した酬徳(しゅうとく)記念館があります。館内には観光案内所や休憩スペースのほか、『けいおん』グッズがたくさん展示されているコーナーも。
なお、事前予約制の特別見学案内ツアーに申し込むと、普段は見学できない部屋や施設もガイド付きで見学させてもらえます(個人の場合は4名から申し込み)。
ヴォーリズ建築については以前記事に書いたので、よろしければそちらも見てくださいね。豊郷町から近江八幡までは車で約40分です。
◆豊郷小学校旧校舎群
住所:滋賀県犬上郡豊郷町石畑375
電話番号:0749-35-8111(豊郷町役場 総務課) ※8:30~17:15
開館日時: 9:00~17:00
休館日:月曜日、年末年始
入場料:無料
図書館として活用されている総ひのき造りの校舎「旧甲良(こうら)東小学校本館」/昭和8(1933)年建築
豊郷町のすぐ隣にある甲良町には、町立図書館として使われている旧甲良東小学校本館があります。豊郷小学校旧校舎群からは車で約10分。昭和8(1933)年に建てられた総ひのき造りの校舎は、建て替えのため平成4(1992)年、曳家(※3)により現在地に移転されました。
建物の屋内を見学用に公開している旧鎌掛小学校や豊郷小学校旧校舎群とは違い、現役の図書館なので、中で写真撮影をするならスタッフの方に許可をいただきます。
この校舎は住民が材木を運搬、児童はレンガの手送りをし、住民・児童が一丸となって建設に協力した結果、8年もの歳月をかけて完成させたのだそう。古い木造校舎らしい穏やかな時間の流れる空間は落ち着きがあって、図書館として活用されているのも納得です。
◆旧甲良東小学校本館
住所:滋賀県犬上郡甲良町横関927
電話番号:0749-38-8088
開館時間:水・木・金曜日10:00~18:00/土・日曜日 10:00~17:00
定休日:月・火曜日、祝日、第3日曜日
※3 曳家(ひきや):家やビルやお城などの建築物や、樹木などの重量物をそのままの状態で移動する建築工法。
おわりに
今回は、歴史的建造物として魅力のあるレトロな旧校舎を紹介しました。現在、少子化に伴い全国で毎年数百校の学校が廃校となっています。役目を終えた古い校舎を観光施設やカフェ、資料館などに活用する取り組みは各地で行われており、旅の目的地の一つとなりそうな場所もあちこちで見かけます。時には子ども時代を思い出し、懐かしい気分に浸るノスタルジックな旅をしてみてはいかがでしょうか。