【長野】現代風にアレンジした「松本てまり」がかわいい! ~夏は松本で手仕事体験がおすすめ~
歴史や伝統工芸に触れる旅が大好きな旅色LIKESライターの長月あきです。夏本番、涼を求めて信州旅をしようと城下町・長野県松本市へ行ってきました。旅の途中、松本城にゆかりのある伝統的な民芸品「松本てまり」に惹かれ、昔の技法を継承しつつ、現代風にアレンジされた「てまりづくり」のワークショップを体験。涼しい屋内で、地元の伝統文化に触れ、関連スポットも巡ってきました。この夏は、城下町・松本の歴史旅を楽しみつつ、少し暑さから離れて、伝統の手仕事を体験してみませんか。
目次
城下町・松本で生まれた「松本てまり」とは
北アルプスや美ヶ原高原などの美しい自然に囲まれた長野県松本市。平安時代には信濃国府(※)が置かれ、江戸時代になると松本藩の城下町として栄えました。そんな松本市のシンボルといえば国宝・松本城。白漆喰と黒漆の二色の美しい外壁が印象的で、国内でもトップクラスの人気を誇る名城です。そして、松本には松本城とも深い関わりをもつ伝統的な民芸品があります。それが「松本てまり」です。
青森県八戸市・石川県金沢市・愛媛県松山市・福岡県福岡市・熊本県熊本市などなど、現在も日本各地で伝統的な民芸品として作られている「てまり」。これらの地域の共通点、分かりますか? それは「城下町」であるということ。てまりは古くから公家や武家の遊具として使われており、江戸時代には、将軍家や大名家の藩邸に仕えた御殿女中たちから各地に広がっていったのだとか。松本てまりも松本藩の女性が作り、城下の武家の子女たちが遊んでいたとされています。松本てまりの伝統は一旦途絶えてしまいますが、昭和30年代に松本市立博物館に収蔵されていた古いてまりを基にして復元されたことから、伝統が繋がれることになりました。松本の街中で見かけるかわいいてまりを自分でも作ってみたい! と思い、毎月てまり作りのワークショップを行っている「手仕事商會(しょうかい)すぐり」を訪れました。
※国府:現在の県庁に当る役所のことで、その国の政治の中心地。
築140年の蔵で触れる、現代風にアレンジされた草木染め糸のてまり
「手仕事商會すぐり」は築140年の蔵の内部を改装した店舗で、1階が草木染めの糸やオリジナルのクラフト作品を販売するショップ、2階がギャラリーとワークショップスペースになっています。こちらでは、伝統的な松本てまりの技法を継承しつつ、現代の暮らしやインテリアに溶け込むような模様や色合いにアレンジした「すぐりてまり」というオリジナルのてまりブランドを展開。伝統的な松本てまりの技法を用いつつ、地元信州をはじめ各地の植物を使った草木染めの糸を使うところが「すぐりてまり」の特徴です。ワークショップスペースには草木染めの糸がずらりと並んでおり、糸の裏側にはそれぞれ用いられている植物名が書かれています。ちなみに糸を巻いてある紙が「SUGURI SHINSHU」とあるのは地元産の植物の草木染め、「SUGURI」は県外産の植物の草木染めなのだとか。
初心者でも楽しく、かわいいてまりが作れる「すぐりてまり」ワークショップ
わたしが参加したのは、「初めてのてまり作り」ワークショップ。土台となるてまりを作り、刺繍糸で巻きかがりを行います。
まずは熱処理した籾殻(もみがら)をお茶パックの袋に詰め、てまりの芯になる部分を作ります。籾殻は地元の農家さんに分けていただいているのだとか。またこの日は「香りも楽しめるように」とのことで、中にアロマオイルを数滴垂らしました。目の前で先生が実演してくれるので、真似をしながら籾殻の入ったお茶パックにぐるぐると糸を巻き付け球形にしていきます。楽しくおしゃべりをしながらの作業中、手の中の球からほんのりとアロマオイルのいい香りが……。癒やされます。
土台ができると、次は好きな色の糸で巻きかがりをします。糸の色の組み合わせに個性がでますね。最後はキーホルダーかストラップにすることができますが、わたしはこのまま飾りたいなと思ったので、加工せず持ち帰りました。
今回体験した内容はそう難しくないので、小学校高学年くらいからできるそうです。そのほかにも、松本てまりの伝統模様をアレンジした菊模様をかがるワークショップや、時期によっては「季節のてまり作り」ワークショップなどもあるようで、こちらもまた松本を訪れて体験してみたいと思いました。ワークショップの日程・内容はすぐりてまりのWEBサイトから確認できます。事前予約制ですが、空きがあれば前日・当日の電話予約ができる場合もあるそうです。また4名以上なら、別日程を相談できます。
◆手仕事商會すぐり
住所:長野県松本市中央3-2-13 奥ノ蔵
電話番号:0263-33-7736
営業時間:11:00〜17:00
定休日:1~3月 水・木曜日、4~12月 水曜日
※展示替えのための臨時休日あり
町中で見つけた「松本てまり」スポット
松本市内を散策していると、さまざまな場所でてまりモチーフのものを目にします。その中でも印象的だった場所が二つあったので紹介します。
てまりモビールが美しい「松本市立博物館」
2023年10月に移転オープンした松本市立博物館のエントラスホールの吹き抜けには、市民参加型のプロジェクトで作られた「てまりモビール(※)」が飾られています。多彩な色や模様、大きさのてまりが軽やかに揺れる様子は、手仕事の町・松本らしさを彷彿させると同時に、手仕事の温かみも感じられて、本当に素敵! モビールの木製フレームの部分は、地元の木工職人の手によって作られたものだとか。博物館のミュージアムショップではさまざまなサイズのてまりの販売やピンバッチのガチャガチャもあります。
※モビール:「動く彫刻」とも呼ばれる、天井からぶら下がってゆらゆらとバランスを取りながら不規則に動くオブジェのようなもの。
◆松本市立博物館
住所:長野県松本市大手三丁目2番21号
電話番号:0263-32-0133
開館時間:1階 9:00~21:00、2・3階展示室・1階子ども体験ひろばアソビバ! 9:00~17:00
休館日:1階 第3火曜日、2・3階展示室・1階子ども体験ひろばアソビバ! 火曜日、1~3階 12月29日~1月3日 ※祝日の場合は翌平日が休み、臨時休館あり
松本てまりのおみくじがかわいい「深志神社」
もう一つ印象に残ったのが、武の神「お諏訪さま(諏訪明神)」と、学問の神「天神さま(菅原道真公)」を祀る深志神社。こちらの神社にはてまりのおみくじがありました。2色あったのですが、あまりにもかわいいので二つとも引いてしまいました。「深い志」の神社、いい名前ですね。
◆深志神社
住所:長野県松本市深志三丁目7番43号
電話番号:0263-32-1214
おわりに
松本の町を歩いていると、伝統の松本てまりが地域のシンボルの一つになっていることを実感します。町の象徴にもなっている伝統の手工芸に触れたい、と体験したてまりづくりは、糸を巻いたり、かがったりしつつ、講師の方とのお喋りも楽しみ、お世辞にも器用とはいえないわたしでも十分満足できました。暑い夏、史跡や伝統工芸品を見てまわるだけでなく、涼しい屋内で体験もしながら、伝統が次世代に繋がれていることを実感する旅もいいですね。
なお、松本散策には、LIKESライターの&ヨシカさんの「松本はしごマップ」の記事もぜひ、参考にしてみてくださいね(わたしも今回の松本旅では、スタンプを集めてクリアファイルをいただいてきました!)。