“もってこーい!” 観客も一体になる長崎の秋の風物詩「長崎くんち」
九州在住の旅色LIKESライター・かっきーがお届けする九州の魅力。今回は、400年近く続く長崎県民も大好きな「長崎くんち」を大特集。国指定重要無形民俗文化財にも登録されており、九州の秋の風物詩です。毎年奉納される踊りや内容が変わる!? 長崎くんちで耳にする「もってこーい!」の声の意味とは? などを解説! 見所とおすすめグルメも一緒にご紹介します。
目次
「長崎くんち」って?
長崎の氏神様である諏訪神社の秋季大祭で、毎年10月7~9日の3日間開催されます。例年20万人ほどの来場者数を誇り、地元では「おくんち」の愛称で親しまれ、心待ちにしている地元民も多いお祭りです。歴史は古く、はじまりは1634(寛永11)年といわれています。同じ年に長崎では出島の埋設工事が着工し、長崎の発展とともに「長崎くんち」も受け継がれ、1979(昭和54)年には、国の重要無形民俗文化財に指定されました。大きな特徴は、毎年奉納される踊りや曳物が変わることです。長崎では、踊りを奉納する町を「踊町(おどりちょう)」とよんでおり、この踊町の順番が回ってくるのが7年に1度のため、毎年奉納される演し物(だしもの)が変わります。この踊町(おどりちょう)は現在長崎市内に全部で58カ所あり、全町が7つの組に区分されているのです。
今年の踊町をピックアップ
今年の踊町は、西濱町、麹屋町、五嶋町、銀屋町、万才町、八幡町、興善町の7つ。なかでもわたしが注目している2つのまちの演目をご紹介します。
銀屋町
奉納する演し物は、傘鉾(かさぼこ)・鯱太鼓(しゃちだいこ)です。この鯱太鼓は1982(昭和57)年の長崎大水害を機に誕生し、再びこのような災害が起こりませんようにという願いが込められています。長崎くんちの数ある演し物のほとんどが曳く山飾(だし)ですが、この鯱太鼓と今年はありませんが、樺島町のコッコデショの2つは、担ぎ物です。大変貴重で、この2つを待ち望む人も多いとのこと。鯱太鼓の最大の見せ場は「ホーライコ!」の掛け声とともに天高く山飾を放り上げて片手で受け止めるという、勇ましい演出。担ぎ手の息が合わないと山飾が斜めに上がったり、真上に上がらなかったりと危険と隣合わせのなか、山飾の受け止めが成功すると大歓声が巻き起こります。
五嶋町
奉納する演し物は、傘鉾(かさぼこ)・龍踊(じゃおどり)です。龍踊は龍が玉を追い求めて乱舞します。玉は太陽と月を表し、龍が玉を飲むことによって、空は暗転し、雨雲を呼び、雨を降らせる雨乞いの儀式だったのだそう。龍が縦横無尽に玉を追う姿は迫力満点です。わたしは実際に見たことがあるのですが、龍がじっくりとあたりを見回して玉を探す様子や玉を見つけて勢いよく追いかけるその緩急と龍の自然な動きに魅了されました。また龍が町を練り歩く姿も必見です。人間より遥かに高い天地で、その場の空気を支配するかのように悠々堂々と飛行する様は町のどこにいても目を奪われます。
長崎くんちで欠かせない声「もってこーい!」
長崎くんちでは、「もってこーい!」という観客の大合唱をよく聞きます。持ってこい? 何か足りなくて持ってきてほしい? そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは長崎くんちでの「アンコール」の意味。素晴らしい演し物に対して「もってこーい! もってこーい! 」と観客から賞賛とアンコールを込めて観客が大合唱します。ちなみに、長崎で行われるライブやコンサートでもアンコールの声として「もってこーい! 」を使うこともよくあります。
さあ! 長崎くんちを観に行こう
諏訪神社の秋季例大祭ですので、メイン会場となるのは諏訪神社の踊場です。有料席を含めて大人気で地元の人も良い席を確保するのはなかなか困難とのこと。しかし、ご安心下さい! 長崎くんちを見られる場所はたくさんありますのでご紹介します。
八坂神社
長崎では「ぎおんさん」と呼ばれ、古くから長崎の人に親しまれている八坂神社では、中日(10月8日)に奉納踊りが行われ、こちらも諏訪神社同様にたくさんの人々が集まります。長崎くんち好きの中には、八坂神社の方が演し物をより間近で見ることができるので、迫力があってより楽しめるという声も。
◆八坂神社
住所:長崎県長崎市鍛冶屋町8-53
電話:095-822-3833
中央公園くんち観覧場
中心市街からほど近い位置にあり、観覧が楽なベンチシート仕様のためご家族やご年配の方に好評です。また1人単位で観覧券を購入することもできるので、1人でじっくり観たい方にもおすすめです。
◆中央公園くんち観覧場
住所:長崎県長崎市賑町5-27
お旅所
諏訪神社から三基の御神輿がお下りした後に鎮座する仮宮が設けられており、「お旅所」とよんでいます。長崎港や大型商業施設に面しているため、利便性も良く、周辺には露店も多く出店されているので、お祭り気分を感じることができます。
◆お旅所
住所:長崎県長崎市元船町17
庭先回り
長崎くんち期間中は毎日、各踊町が市内中心部の事業所や官公庁、民家などに敬意を表して踊りを呈上して福を分けお祝いする、庭先回りが行われます。これまでご紹介した会場は有料の観覧席がほとんどでしたが、この庭先回りのルートであればどこでも見ることができるので、様々な踊町の山飾を気軽に見ることができます。9月末には庭先周りのマップが公開されるので、公式HPのマップを参考に長崎くんちの庭先周りを観に行ってみてください。
会場周辺オススメグルメ!
ご当地名物「じゃがちゃん」
長崎県は北海道に次ぐじゃがいもの生産地だということを知っていましたか? 長崎のおいしいじゃがいもを使ったご当地グルメが「じゃがちゃん」です。普段はじゃがいもの生産地である島原半島でのみ食べることができますが、長崎市内のお祭りの際には市内に出店されるので町中でも食べることができます。大きめに切ったじゃがいもを蒸し、甘めの衣をつけてさっくりと揚げてありアツアツホクホクです。わたしは初めて食べた時から、長崎のじゃがいもの優しい甘さと、じゃがいもを活かす甘じょっぱくて香ばしい衣の虜になりました。以来長崎くんちの時期が近づくと、そろそろ「じゃがちゃん」が食べれると心躍ります。出店の中から探し出してみてください!
ツル茶んの「ミルクセーキ」
誰もが一度は聞いたことがあるミルクセーキですが、長崎のは一味違います。通常は牛乳、卵、砂糖をよく混ぜた飲み物ですが、長崎は砕いた氷が入った飲むというより、“食べる”ミルクセーキです。九州で初めてオープンした喫茶店「ツル茶ん」が、長崎の夏の猛暑をしのぎやすくする一品をと、砕いた氷を入れて作ったのがはじまりといわれています。それが人気を博し、市内の数々のお店で提供され、次第に家庭でも食べられるようになり、長崎の人々に長年愛されてきました。わたしは一般的なミルクセーキは甘すぎてあまり得意ではないのですが、長崎のミルクセーキは氷が入ることで甘ったるくなく感じないので、食べやすいです。暑さも残るこの頃、長崎の町をたくさん歩いた後に、冷たくて、甘く濃厚なミルクセーキを食べながら休憩してみてはいかがでしょうか。定番の「昔懐かしトルコライス」のほか、牛ロースステーキチーズ焼きと和風クリームスパが融合した「トルコ三四郎」、デミグラスソースのハンバーグが乗った「フリカンデルトルコ」など種類豊富なトルコライスもオススメです。
◆ツル茶ん
住所:長崎県長崎市油屋町2-47リバソンクレインビル
電話:095-824-2679
営業時間:10:00~21:00 (水曜日定休)
さいごに
長崎県民も心待ちにしている長崎くんちの開催までもう間もなく! 400年近く受け継がれてきた、迫力満点の秋の風物詩を一度生でご覧なってみてはいかがでしょうか。観客一体となって「もってこーい!」とアンコールすれば、あなたも長崎くんちの魅力もわかるはずです。