国内旅行専門だけど断言します。久しぶりの海外旅行先は「ブルネイ」一択
ブルネイはボルネオ島にある小さな国です。「どこにあるのか知らなかった」 という方も多いかもしれません。だいたい日本は美しいもの、おいしいもの、心地よい場所にあふれています。『旅色』はそんな日本各地の魅力にさまざまな角度から光を当ててきました。旅色編集部にお世話になって10年以上の私もその思いは同じで、「もうずっと日本でいい!」とさえ思っていました。「ブルネイ」が現れるまでは……。
目次
国内旅行好きにぴったりの国
『旅色』は11月25日公開号で、創刊17周年を迎えます。創刊時から変わらぬことは、⽇本各地の魅⼒を真摯に紹介すること。その姿勢に目を留めてくれたブルネイ大使館から「旅色でブルネイを特集しませんか?」と誘っていただき、2023年4月にブルネイの特集を公開しました。『旅色』としては初めての海外特集。残念ながら、現地取材には行けませんでしたが、調べれば調べるほど、治安がよくてごはんがおいしそうで、見どころがコンパクトなのに異世界感があって「国内旅行が好きな人に向いているのでは」と思っていたんです。そして、ついに行ってまいりました! 「海外はちょっと不安」という方にこそおすすめの国でした。
まずは基本情報。ブルネイとは?
正式には「ブルネイ・ダルサラーム」。東南アジアの中心、ボルネオ島の北部にあり、国の面積は三重県とほぼ同じで、愛知県より大きく、茨城県よりも小さい国です。成田空港から直行便で約6時間。週4便あります。公用語はマレー語ですが、英語がほとんどどこでも通じ、中学英語止まりの私でも滞在中あまり困りませんでした。現地のガイドさんによると、一日中雨が降り続くという雨季はなく、一年中観光を楽しめるとのこと。東南アジアらしく湿度と気温は高いですが、お肌が乾燥しないのはかなりありがたいです。
ポイント1 治安がいいし、人は優しい
海外旅行をためらう理由のひとつが、私は「治安」です。非日常な体験ができるのは魅力ですが、常に周囲を警戒する緊張感はストレスがかかります。その点、ブルネイはとても治安がよいのでリラックスできます。
ブルネイは1984年にイギリスの保護領を独立し、以降、豊富な石油と天然ガス生産により、安定した経済を築いています。社会福祉も充実しており、国民は所得税などの税金や教育費が無料で、医療費もわずか数百円だそう。だからといって裕福な人ばかりではないそうですが、みんな和気あいあいと家族で助け合って暮らしていて、観光客にもとても親切でした。私もナイトマーケット帰りの22時頃、大通りを女性だけで歩いて帰ってきたほど。ただ、このときがラッキーなだけかもしれませんので用心はしましょう!
ポイント2 荘厳なイスラム建築が見られる
ブルネイの国教はイスラム教。首都のバンダル・スリ・ブガワンには荘厳で特徴的なモスクが2つあります。オマール・アリ・サイフディン・モスク(通称・オールドモスク)は前国王によって建てられ、黄金のドームを囲むように、真っ白な大理石の壁がそびえ立つ美しいモスクです。もうひとつが、現在の国王の在位25周年を記念して設立された「ジャミ・アスリ・ハサナル・ボルキア・モスク」(通称・ニューモスク)で、黄金のドームがいくつも連なり、これぞ海外!というエキゾチックな雰囲気を満喫できます。どちらもイスラム教徒でなくても見学ができますが、マントを着て入場(受付で貸出)。信仰の場なので観光や撮影には十分配慮しましょう。
ポイント3 世界最古の熱帯雨林がある
ブルネイの約70%は緑豊かなジャングル、熱帯雨林が占めています。なかでも、ウルテンブロン国立公園は世界で最も古い熱帯雨林のひとつとして知られ、リアルジャングルクルーズが楽しめます。国立公園ゆえにガイドさんの同行が必須で、旅行会社を通して予約すれば滞在するホテルへの送迎と、モーニングティーと昼食がセット。さらに、日本人ガイドもいるので、英語が不安な方でも安心です。お値段はちょっとあがりますが、ブルネイの歴史や文化を詳しく教えてもらえるのでおすすめです。私たちは、空港からホテルの送迎も同じガイドさんで旅を盛り上げてもらいました。
ウルテンブロン国立公園最大の見どころは片道20分ほどのトレッキングを経てたどり着く「キャノピーウォーク」。高さ約50mほどの鉄塔を登れば、360度深い緑の絶景が眼下に広がります。高所が苦手な人は震え上がりますが、人間の小ささを思い知るにはいい場所です。
もうひとつおすすめさせてください。駐車場のあるロッジからキャノピーウォークまでは川をロングボートで移動しますが、帰路はアクティビティーが追加できるんです。私は図らずも「チュービング」なるものを選択したのですが、これが大正解。タイヤのようなゴム製の浮き輪に乗ったり捕まったりして川を下ります。激流を下るアドレナリン全開のアクティビティと思っていたら、私が行ったときは水位が低かったこともあってなのか、まるで桃でした。どんぶらこ、どんぶらこと川をたゆたい、空を流れる雲よりゆっくり流されます。時々聞こえる鳥の鳴き声と、川沿いで遊ぶ子どもたちの声をBGMに、全身の筋肉、久々の海外に気を張った心までゆるみました。
ほかにも、滝遊びやジップラインなどさまざまなオプションが選べるので、体力に自信のあるアクティブ派も、のんびりリトリート派も満足できるはず。天然のドクターフィッシュがいる川に足を浸すなど、ブルネイならではの自然を満喫できます。
ポイント4 東南アジアの熱気も感じられる
夜はナイトマーケットへ。私達は地元の人も利用する「ガドンナイトマーケット」に行きました。ナシゴレンやラクサなど庶民の味が100円ほどで楽しめます。強く勧められることもないですし、各お店を冷やかしながら選びます。ラップがかかっていたり、衛生観念が日本に近いのもおすすめポイントです。
特筆すべきはフルーツの安さ。ライチやランブータンが1kg 2ブルネイドル(約220円)でした。バラ売りはしてないので、覚悟して買いましょう。
ポイント5 世界に2つしかない“7つ星ホテル”がある
5つ星を超える、“7つ星ホテル”が世界には2つあると言われているのを知っていますか? ひとつはドバイにあり、時期にもよりますが1泊30万円以上。そしてもうひとつがブルネイの「ジ・エンパイア・ブルネイ(The Empire Brunei)」です。1泊なんと約3万円ほど。2000年まで王室の所有で迎賓館のように使われていたのが、今や一般の人が泊まれるようになりました。宮殿のような本館と、プライベートビーチ、SUPもできるプールなどがあります。
ホテルは市街地からは少し離れていて、館内のレストランはアフタヌーンティー約3,000円、ディナービュッフェ約6,000円と日本とほぼ同じくらいの額でした。でも豪華な設えの快適な館内で、夕暮れ時には壮大なサンセットが望める特等席揃いなので十分に価値があると思います。
惜しい点も少々
・観光地としては情報が少ない(発掘の楽しみも)
・ブルネイ産のお土産が少ない(輸入に頼っているため)
・トイレは水洗ですが紙をゴミ箱に捨てるタイプ(新鮮!)
・国教がイスラム教なので、公共の場では飲酒禁止(客室では飲める)
・タクシーもバスも少ない(一人あたり車の保有台数が2台だから)
でもそれがなんでしょうか。国内旅行好きの人ならば、その土地に入り込み、その文化を尊重するのは慣れていらっしゃるでしょうから問題ないと思います。
物価も人口密度も低い今が狙い目
私は金曜の朝に日本を発ち、3泊4日(1泊は機中泊)で楽しみました。これでなんと約14万円(繰り返しになりますが、時期によります)。一泊は7つ星ホテルともいわれる「ジ・エンパイア・ブルネイ」に宿泊していますし、ガイド付きでないと入れないウルテンブロン国立公園へのツアー料金も含めてです。しかも、現地のガイドさんに聞いたところ、年末年始や大型連休時も大きな値段の変動はないとのこと。こんな楽園あるでしょうか? まだ世間に見つかっていない、今が狙い目です。