【奈良】巳年にお詣りしたい! 白蛇ゆかりの「大神神社」は超パワースポット

2025年の巳年が明けました。奈良県人の巳年の初詣は“みいさん”へ。「三輪明神」とも呼ばれる日本で最古の神社「大神神社(おおみわじんじゃ)」が大賑わい。三輪の神様が白蛇に化身して娘の元を訪れた伝説があり、”巳さん”と親しまれています。奈良で生まれ育った旅色LIKESライターの私が、古事記や日本書紀にも出てくるそんな伝説とともに、巳年に訪れたい超パワースポットを紹介します。
目次
神様へのアプローチ
大神神社のご神体は三輪山そのもの。神社へ徒歩で向かう場合は、JR万葉まほろば線の三輪駅が近く、二の鳥居近くの参道の途中に出ることができますが、車でお詣りする場合には、国道169号を走っていれば見えてくる巨大な大鳥居が目印。これが大神神社の一の鳥居で、日本でも有数の大きさです。鳥居をくぐり、車を停めたら歩いて二の鳥居まで。空気がぴしっと引き締まるような参道を通り、階段上の拝殿に向かいます。
大神神社には社殿(本殿)はなく、拝殿を通して神様の山を拝むのです。拝殿の奥には、神職も滅多に足を踏み入れない結界の三つ鳥居があるとのことですが、私たちは、ここまでです。
三輪山伝説~白蛇とのゆかり~
白蛇とのゆかりについては、日本書紀に出てくる神話にルーツがあります。
その昔、崇神(すじん)天皇の頃のお話です。天皇の娘・倭迹迹日百襲姫(やまとととびももそひめ)は、非常に美しい娘だったそう。そこへ毎夜、見目麗しい男が通ってきます。男は夜にしか現れないので、娘が「一度お昼に顔を見せてほしい」と頼みます。男は「それならば、明朝に、お前の櫛箱の中に入っていよう、ただし、姿を見ても驚いてはいけないよ」と。約束通り、朝になり櫛箱を覗いた娘は、そこに白蛇がいるのを見て、ギャッと驚いてしまいました。男は怒り、「二度と来ない」と言って娘の元を去っていきます。男は、三輪の神様・大物主神(おおものぬしのみこと)でした。白蛇が三輪山の神様の化身だったというわけです。その後、悲しみに暮れた娘は、自らのホト(陰部のこと)を箸で突いて死んでしまいました。今もお墓は「箸墓(はしはか)古墳」として残っています。
巳の神杉に生卵とお酒をお供えする
お詣りでは、まず、拝殿の脇にある境内の大きな神杉に卵とお酒をお供えしましょう。三輪山の神様が化身した白蛇の大好物が卵だからです。参道に、後で紹介する今西酒造の支店があり、小瓶の酒と生卵の「お神酒セット」が販売されているので、そこで買うのがおすすめ。
神杉の室には白蛇が住んでいると言われる
杉の木には大きな室があり、本当に白蛇が住んでいるらしいです。中々お姿を見ることはできませんが、もし見ることができたら、スーパーラッキーですね。
神様とお酒の深い関係
大神神社は、全国でも有名なお酒の神様でもあります。お酒は、神様に捧げるために造られていたので、日本酒造りは三輪が発祥だといわれるのも道理。ちなみに、万葉集に出てくる「三輪」の枕詞は「うま酒の」。いかにも、お酒の神様の本拠地という感じですね。また、酒、神、みわ、とういう連想からか、御神酒のことを昔は「ミワ」と読んだそうです。
しるしの杉玉は、毎年醸造安全祈願祭で新しいものに取り換えられる
毎年11月14日に全国から蔵元や杜氏が集まり、「醸造安全祈願祭(酒まつり)」が行われます。拝殿の上の大きな「杉玉」が新しい青々としたものに取り替えられる行事です。祭りの後に「しるしの杉玉」が、全国各地の酒蔵に配られます。蔵の軒先に吊された杉玉が茶色くなっていくのが、お酒の熟成が進んでいく目安になるのです。
三輪の神様に一番近い酒蔵
大神神社から歩いて10分ほどのところにある「今西酒造」の本店は、1660(寛文1)年創業の老舗酒蔵。三輪の神様に一番近いところで、古くからお酒を造っていることから、一番に「しるしの杉玉」をいただくのだそうです。この蔵の看板商品は、日本酒の「三諸杉(みむろすぎ)」と「みむろ杉」。「みむろ山」が三輪山の別名であることからの命名です。ひらがなの方は県外へ出荷されていますが、漢字の方は奈良県内のみの流通。現地にお詣りした際には、ぜひ、漢字の「三諸杉」も味わってみてくださいね。JR三輪駅にある店舗では、試飲もできますよ。
先ほど紹介した、お詣り前に卵と「三諸杉」のお酒を買うことができる今西酒造の参道店。お神酒セットは380円也。
奈良酒を飲もう
2024(令和6)年11月、「伝統的酒造り」がユネスコの世界文化遺産に登録されたニュースが話題を呼びました。現在、日本酒といえば、透き通った清酒が頭に浮かびますが、三輪の神様にお供えされた最初のお酒は濁っていたそうで、おそらく「どぶろく」だったのでしょう。
奈良県は日本清酒発祥の地。室町時代の文献『御酒之日記』に出てくる「菩提酛(ぼだいもと)」という酒母(しゅぼ)※2 を使う製法により正暦寺で作られていた僧坊酒に由来しています。正暦寺の酒母を復活させた「菩提酛造り」プロジェクトや大神神社のシンボルである「ささゆり」から抽出した「山乃かみ」という酵母を使ったお酒造りなど、奈良の酒蔵では伝統技法を活かしながら、時代にあわせた工夫で、おいしいお酒を造っています。奈良のお酒を「奈良酒」といい、私は、毎晩のようにいろんな蔵の自慢のお酒を飲み比べている日々です。
※2 日本酒造りに必要なもろみの発酵を促す酵母を大量に培養したもの
ちょっと足を伸ばして摂社(末社)にもお参りを
摂社とは、本社の祭神と縁の深い神を祀っているところ。末社ともいいますが、摂社の方が少し格式が高いそう。
大神神社には、たくさんの摂社があり、少し山の辺の道を歩いてこれらの摂社巡りをするのもおすすめです。
万病に効く薬水を湧出「狭井神社」
大神神社の拝殿から薬業関係者が奉納した薬木や薬草が植えられている「くすり道」を通り、歩くこと約4分。狭井(さい)神社は、三輪山の神様の荒魂(あらみたま)※1 を祀り、特別な許可を得なければ足を踏み入れてはいけない三輪山に登る入口に当たります。病気平癒の神として信仰され、下の薬井戸で汲む「御神水」は諸病に効くとされていました。今西酒造では、この三輪山の伏流水を使ってお酒を仕込んでいるそうです。まさに「神様のお酒」というわけですね。
※1神の怒りを示しており、人に祟りを及ぼすような霊力のこと
◆狭井神社
住所:奈良県桜井市三輪1422
電話:0744-42-6633
通は元伊勢「檜原神社」も
檜原(ひばら)神社は、山の辺の道を北に向かって歩いて約20分のところにあります。崇神天皇に天照大神の御霊を託されたヤマトヒメが、御霊をお祀りした場所のひとつ。最終的には伊勢神宮まで移動していくため、こういったお社は「元伊勢」と呼ばれています。高台に位置し、夕日が落ちる風景がとても美しいところです。檜原神社のほか、「元伊勢」の地を巡るのも粋な旅になりそうです。
大神神社から石上神宮に至る山の辺の道は、崇神天皇陵ほか古墳の宝庫です。健脚向きの道ではありますが、古代ロマンを感じながら、歩いてみてはいかがですか。
◆檜原神社
住所:奈良県桜井市三輪1422
電話:0744-42-6633
一番遠い摂社「率川神社」
摂社のほとんどは、大神神社のある桜井市に集中していますが、ひとつだけ奈良市内にも。近鉄奈良駅からJR奈良駅に向かうメインストリート・三条通からすぐのところです。率川神社は、ご祭神である姫神様を真ん中にして、父神・母神が左右から見守るように3棟の本殿にそれぞれをお祀りしていることから、「子守明神」ともよばれます。大神神社のシンボル「笹ゆりの花」を巫女が捧げる華やかな「三枝(さいくさ)祭り(ゆり祭り)」が、毎年6月17~18日に行われています。三輪の地からは少し遠いですが、日本最古の大神神社の摂社として、奈良市では最古の神社です。東大寺や春日大社のようなメジャーな観光地ではありませんが、こんな小さな神社にも長い歴史が流れています。
◆率川神社
住所:奈良県奈良市本子守町18
さいごに
大神神社では、毎月季節のお祭りが執り行われるほか(これからの時期は2/2に節分祭、2/3に、立春祭など)、神の宿る山としてパワースポットにもなっています。2025年は巳年。巳さんのゆかりの神社を訪ねて奈良にいらしてくださいね。