広島県で世界ランキング2位のウェイクサーファーを空撮! 新しいスポーツの旅はいかが?
今回は、2021年の晩秋にウェイクサーファーの中山健太氏(けんたさん)を空撮したこと書かせていただきます。なんでウェイクサーフィンかって? なぜなら、海好きなわたしのInstagram検索に引っ掛かるけんたさんのウェイクシーンがかっこ良すぎるので、空からぜひ見てみたいと思っていたのです! ところでけんたんさんの実力、驚きますよ……。なんと、世界ランキング2位なんです! ウェイクサーフィンは、アメリカで生まれた比較的新しいスポーツで、ランキング上位はけんたさん以外全員アメリカ人。快挙も快挙、すごすぎるでしょう。そんな超実力者が練習する現場を空から船から撮影するのは、まさに血湧き肉躍る! 寒いしコロナなご時世で不自由感のあふれる今、大海原で躍動する一流スポーツ選手の熱意で、ごきげん度を上げてください。
目次
そもそもウェイクサーフィンって?
ウェイクサーフィンというスポーツをご存知でしたか? わたしは恐縮ながら、1年前にけんたさんと友達になるまで知りませんでした。サーフィンならよく見るんだけどな。それもそのはず、ウェイクサーフィンは船で起こした波に乗って技を決めるスポーツなので、ザッパンと波立つ海ではなく、穏やかな海や湖や川で、マリーナがあって船が走れるところで行うそうです。水辺大好きなわたしですが、これまでの生息地がそういったところではなかったので、自然と目にすることがなかったのですね。
サーフィンとウェイクサーフィン、そういうわけで乗る波が違うので他の事情も何かと変わります。サーフィンは沖まで自分で泳いで波待ちをしますが、ウェイクサーフィンはボートで海の真ん中まで行って、波に乗る準備ができたら海に入ります。サーフィンの波待ち時間は自分が大自然の一部となる偉大な時間なんだろうなぁと想像がつきますが、体力を波乗り以外に使うのは確かだし、いい波がくるかどうかは運次第ですね。その辺をひとっ飛びにクリアしちゃうのが、人口波に乗るウェイクサーフィン 。「波に乗る」という一点に注目すれば、いいとこ取りと言えそうです。
ちなみに、日本でウェイクサーフィンの有名なスポットといえば、瀬戸内海と琵琶湖だそう。瀬戸内海は確かに波が少ないもんなぁ。何かのテレビ番組で「琵琶湖より瀬戸内海の方が波が少ない」と聞いて、海なのに湖に負けるなんてと笑ったし、瀬戸内海のサーファーは船が起こした波を利用して小さく波乗りするってシーンも見て、吹いちゃいました(失礼)。どちらのスポットにも精通するけんたさんにも、どちらが波がないか聞いたら「断然、瀬戸内海」だそうです。
わたしはここ最近、瀬戸内海に面する香川県観音寺市にご縁があってよく行くけれど、海の静かさにはいつも驚きます。はじめて香川で台風を経験した時なんて、知り合いが「やばい、すごい大雨だ」と言っていたけど、いやいや東京のゲリラ豪雨のほうが10倍激しいな〜と。すると「波もすごい!」と慌て気味。台風の時に海に行くのはよくないけれど、雨の件でずっこけたので、どんなもんかと行ってみると、あれれ。通常時の湘南の方が波あるなぁと吹き出しました。オーバーな見方かもしれませんが、そう思わせる威力があるほど、穏やかな海ってことです。
お駄賃付きタクシーに乗って海へ。ゆるゆるほっこりな旅シーンにキュン
けんたさんが主に練習をしているのは広島県福山市の瀬戸内海。合流する桟橋の最寄りは東尾道駅で、9時ごろに到着しました。すると、あらまぁ。タクシーなんて一台もいないし、それどころか人もいません。いわゆる通勤時間だろうし、この状況は予想外です。困ったな、頼みの綱は駅前の小さな交番。
「おはようございまーす」と挨拶しながら交番に入ると、そこには警察の方二人と書類を書いている小さいおじさん一人。
「タクシーいないようですけど、バスで海に行けますか?」
「バスないんですよ。電車でバスのある駅まで行くしかないかな。」
「なるほど、その行き方だと海までどのくらいかかるでしょうねぇ?」
「電車もバスもあんまり本数がなくって……」
「ちょっと待っててもらえたら行きますよ」
お!? 小さいおじさん、まさかの救世主!
話を聞くと、おじさんはタクシーの運転手さんで、交番で書類の記入と罰金の支払いをしているところだったのです。
「ありがとうございます、めっちゃ助かります、ぜひ!」
しばらく待って、おじさんの手続きが終わるとタクシーに乗り込みます。「どこから来たの?」なんて他愛のない話をしてしばし走ったとき、ふとメーターに目が留まりました。
「あのう、メーター動いてない?」
海外の旅だと、メーターを使わずに走って後から吹っかけられることもあるんですよね。ここ日本だし、おじさんいい人感満載だし、そんなことないよね……?
「あ、忘れとった」
てへへとかわいらしく笑ってメーターをオン。なんだ、本気で忘れてたのね。むしろその分得しちゃったよ。
待ち合わせの桟橋に到着すると、メーターは1,300円。
「1,000円でいいよ〜」
「えっいいの? ありがとうございます!」
1,000円札を渡すと
「もっとあげたいけどこれしかないな。コーヒー買ってきな〜」
100円玉を握らされました。あれれ、お駄賃ついちゃった(笑)。
小さいおじさん、ありがとう! もしやおじさん、妖精だったんじゃ!? こんなほっこりするシーンに出会えちゃうとはね。急にアジアの奥地を旅してるような、開放感あふれる気分になったのでした。
揺れる船の上での撮影におすすめの機材
さて、すでに大海原で練習を開始しているけんたさんが桟橋に戻ってきてくれて合流。スーツケースから機材を取り出すと、まずは船から撮影です。
このとき使った機材は「DJI Pocket2 」。これはジンバル付きの小さいビデオカメラで、4K動画も撮れちゃいます。もちろん、静止画も撮れますよ。
4K動画も撮れる一眼レフカメラも持っているわたしがなぜこれを使うのか、主な理由は二つです。一つはブレない動画が撮れるから。その秘密はジンバルにあります。ジンバルは一つの軸を中心にものを回転させる回転台のことで、これにカメラがついていると、動画をぶらさずスムーズに撮ることができますよ。船なんてめちゃくちゃ揺れるところではジンバルが最強にお役立ちなんです。ちなみにジンバルは飛んで動画を撮影するドローンにもついていて、おかげさまで地に足つかぬ不安定な空の上でも気持ちのいいスムーズな映像を収めることができるというわけ。
もう一つの理由は、とってもコンパクトで持ちやすいこと。ご覧ください、写真のサイズ感。小さいしスティック状だから服のポッケにすっきり収まって、片手でスッと取り出してサッと撮影できちゃうからお気軽です。それに運ぶエネルギーほとんど0、ドローンや衣装やMacなどなど、何かと荷物の大きいわたしにもどんとこいですよ。また、ちょっとした遊びのお出かけで小さなバックしか持っていなくても無理なく持ち運べちゃうので、使えるシチュエーション無限大です。
動画では、船から目線の「DJI Pocket2 」を利用したシーンもドローンシーンに組み合わせているので、迫真の技と、ブレずに撮れているスムーズ感をご覧ください。
ウエィクサーフィンしながら野球をする?
それにしても大迫力! ジャンプするわ、くるくる回るわ、どうなってるの〜? さらにけんたさんは、ウェイクしながらいろんなことができるんです。船から投げられた野球ボールをバットでホームラン! バスケだってしちゃいますよ。バランス感覚研ぎ澄まされすぎでしょ! 世界2位の実力、無駄遣いっぷりがお茶目でいい感じです。
こんな遊び技はけんたさんのオリジナルだとしても、できる技の多さもウェイクサーフィンの醍醐味のひとつなんですって。安定した人口の波に乗るからこそですね。ちなみに、サーフィンのように想定外の大波に飲まれて海底に打ち付けられることもないので、怪我もほとんどないそうですよ。
空からドローンで追いかけたら、意外なシーンがツボ
さて、船上の近くから生身でスゴ技の数々を収めた後は、桟橋に戻ってドローンを出動させます。この時は、現在使っている「DJI Mavic3」の発売直前だったので「DJI Mavic2pro」を飛ばしています。
大きい大きい海の真ん中を走る船を空から捉え追いかけて、けんたさんにぐんぐん近づいていくのはとっても快感! けんたさんもドローンに反応して手を振ってくれたり、目線をくれたり。そんな様子をモニターで見ながら操作していると、本当に自分自身がけんたさんの周りをくるくる回って飛んでいる気分になるんです。分身感半端ない〜、実際は遠く離れたところにいるのにね。自分の感覚の範囲が体を超えて機械に通じているようで、SFっぽさにとってもわくわくします。
撮影していて、意外にはまったシーンがありました。それは、けんたさんがボードから海に落ちてぷかぷかと浮かんで船のお迎えを待っているところ。
ウェィクサーフィンは、バランスが崩れてボードから落ちたり、船で起こした波についていけなかったら仕切り直しになりますが、海に落ちてポツンと浮かんでいる時のなんとも心地よさそうなことよ。他に誰も泳いでいる人などいない大きな大きなやさしい海にポッカリ。海は広いなぁ、空は大きいなぁ、人間ってちっさいなぁ。きっと情熱や緊張が瞬間的にスカッと抜けて、海に体を全面的に委ねてプカプカ漂い、心身ともに束の間の究極ニュートラルを味わってるんだろうなぁって。
そして、世界2位もこうして海に投げ出されて練習している現実よ。そりゃそうだけど、目の当たりにすると感慨深いですね。急に親近感も深まるし、自分も頑張ろー! と思わせてくれます。
野球少年、東大、DJ? で、なんでウェイクサーファーになったのか?
世界2番、きっと程なく1番になるけんたさんの経歴はとっても興味深いんです。小さい頃から野球少年だったけんたさんは高三の夏、六大学野球に出場するためにE判定から東大を目指し、見事文化三類学部に合格。念願の東大野球部ピッチャーになります。しかし、夢叶う前、2年の終わりに肩を怪我して部活を辞めることになるのです。熱烈に追いかけてきたことを辞めるってそうとうな打撃ですよね、廃人になってもおかしくないなあ。でもけんたさんは進んで夢中になれるものを探し求め、熱中することで立ち直ります。それは、友人がやっていたクラブDJでした。とことんハマって、イベントオーガナイズもたっぷりしてきたんだそうです。
卒業すると大手IT企業に入社、一方で副業が成功。24歳で超のつくアーリーリタイアをします。そこから世界への旅をはじめて、20代の頃は毎月のようにあちこちに出かけていたそうです。そして、散々旅して気づいたことは……
「別に、旅って好きじゃないな」
聞いてて吹いちゃいました。素直〜(笑)。もちろん、楽しいと思ったから旅をリピートした部分もあったでしょう。なんなら、心の底では旅が好きではなくても、続けてきたんだから好きだと思い込みたい部分もほんの少しはあったのではないでしょうか。ちゃんと自分自身の気持ちを見つけて向き合える方なんですね。
20代の終わり、拠点を東京から故郷の広島県福山市に移すと、再会した友達と交際0日婚。いろいろぶっ飛んでるな〜自分の気持ちに素直だな~。さらには同じ時期、友人の影響でウェイクサーフィンライフをスタート。そこから数年でアジア1位に上り詰め、2022年には世界2位に! 冒頭でお話ししたように、アメリカ人以外がトップチームに入るのは世界的快挙なんですって。もちろん、今は世界1位を目指しているところ、絶対なりますね。
ウェイクサーフィンを目的にした旅、いかがでしょうか
ウェイクサーフィンではほとんど怪我がないという事実は、サーフィンをやりたかったけど怖くて手が出なかった方々にはもってこいの遊びなんじゃないかなと思っています。全国の海や湖で体験することができるプランが多くあるので、興味が湧いたらぜひ検索して旅の目的のひとつに組み入れてください。なんなら、世界2位のけんたさんもレッスンしてくれるので、けんたさんのInstagram(@nakayamakenta0904)から連絡してみてくださいね。あなたもはハマっちゃうかもしれませんよ。