令和6年能登半島地震の影響により当該地域の交通網や施設等へ被害が出ている場合があります。
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- 日帰り
スイーツ消費量日本一の金沢へ!グルメを巡る食いしん坊の文学旅
金沢(石川県)
予算:30,000円〜
・旅行する時期やタイミングにより変動します。あくまでも目安ですので旅行前にご自身でご確認ください。
・料金は1名あたりの参考価格で、宿泊施設は1泊2食付き週末料金を参考にしています。
更新日:2024/11/30
石川県金沢市は、知る人ぞ知る「食いしん坊」の街なんです。多くの小説がおいしそうに食べまくっているんです。酸いも甘いもかみ分けた名文家たちを唸らせる、グルメとスイーツの文学旅を貴方だけにご案内します。

兼六園
兼六園茶屋 見城亭

成巽閣(せいそんかく)

尾山神社

千取寿し 本店

加賀藩御用菓子司 森八 本店

近江町市場

石川屋本舗

メープルハウス 本店
移動は、タクシーに代えて、ウォーキングも推奨します
兼六園

兼六園

美しい冬景色

日本最古の庭園噴水(現地にて撮影)

竜石(現地にて撮影)

雪吊りの準備(現地にて撮影)

三文豪の像(外濠公園白鳥路にて撮影)
日本三名園のひとつに数えられる廻遊式の庭園。歴代の加賀藩主により、長い歳月をかけて形づくられた。1874(明治7)年に全面一般公開され、金沢市民に愛されるようになって150年を超える。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 今回の文学旅は「食いしん坊の」と名打ちましたが、まずは旧跡を巡りましょう。せっかく金沢に来たのですから、日本三名園のひとつに行かなければ、五感で文学を体験したことにはなりませんからね。食べ物は次のスポットで紹介するとして、ここでは純粋に文学のなかの「兼六園」をご案内していくことにします
- ★ 金沢を代表する名所だけあって、兼六園を取り上げる文学(小説)作品は多数存在します。一例を挙げていくと、泉鏡花「義血侠血」「桜心中」、森見登美彦「藪の中」、恩田陸「ユージニア」、米澤穂信「ボトルネック」……などなど。ご興味のある方は、ぜひ手にしてみてねー
- ★ 最後の画像は「三文豪の像」。この3人の立像は、兼六園を出てすぐの「外濠公園」の白鳥路に立っています。いや、これは文学旅ですから、ひとつお許しください。それにしても……どの像が誰なのか、わかりませーん。左から、室生犀星(むろうさいせい)、泉鏡花、徳田秋聲(しゅうせい)です。ちなみに、鏡花と秋聲の像は、鏡花の自宅を秋聲が訪ねた設定で制作されているそうです
兼六園茶屋 見城亭
兼六園茶屋 見城亭

厳選黄金抹茶パフェ

特製 黄金能登あずきぜんざい(季節限定)←甘さ控えめ

プラチナ&黄金ソフト(テイクアウト可)
能登牛ローストビーフひつまぶし~四つの贅沢~

店舗外観
1913(大正2)年から続く茶屋。2019年、世界的な建築家・隈研吾氏の手によって既存の2階建て木組みを活かしつつ「指物造り」と呼ばれる伝統工法を採用した建物に生まれ変わった。
-
【住所】
石川県金沢市兼六町1-19(兼六園 桂坂口料金所横)
- 【TEL】 076-222-1600
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【営業時間】
<1階>カフェ10:00~16:30、<2階>朝食8:00~10:30、昼食11:00~15:00 ※朝食・夕食については要問合せ
- 【定休日】 水曜日(季節により変更になる場合あり)
- 【料金】 <ランチメニュー>特選 金沢の宝石箱:※要予約5,500円(税込)、能登牛ローストビーフひつまぶし~四つの贅沢~:3,410円(税込)、<カフェメニュー>厳選黄金抹茶パフェ:2,530円(税込)、特製 黄金能登あずきぜんざい(季節限定):2,310円(税込)、なたも金箔職人~黄金ソフトクリーム~:1,870円(税込)

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 天井・壁・床を黒で統一し、大きな吹き抜けをしつらえた空間は、開放的ながらも奥行きと落ち着きが感じられます。店内は、金箔和紙をシェードにした照明など、金沢の工芸を活用したスタイリッシュな雰囲気。創業100年を超える茶屋のチャレンジ精神を実感できます
- ★ 1階がカフェ、2階がレストラン。2階からの眺めは最高なのですが、今日はまだ時間も浅いのでカフェのメニューをチョイス。せっかく金沢に来たのですから、ここは名物でもあり、映えもする金箔ソフトクリームはいかがでしょうか? 「プラチナ&黄金ソフト」は、テイクアウトもできますからー
- ★ 金箔工芸を産業化した地域ですからね、金沢は。老若男女・邦人外国人を問わず、観光客であろう方々の「黄金ソフト」を楽しむ姿が目立ちます。「厳選黄金抹茶パフェ」も、リピーターの多い人気メニューだそうです
成巽閣(せいそんかく)

成巽閣(せいそんかく)

群青の間(現地にて許可のもと撮影)
謁見の間
つくしの縁庭園・春

飛鶴庭の秋

全景
加賀13代藩主・前田斉泰(なりやす)が母君・真龍院のために建てた隠居所。大名書院造りと数奇屋風書院造りの2つの様式を持つ。風格ある佇まいは国の重要文化財に指定されており、なかでも「群青の間」は一見の価値あり。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 少し歩きましょう。文学系で知る人ぞ知る場所へご案内いたします
- ★ 必見の「群青の間」「書見の間」は、顔料にラピスラズリを使用しています。西洋画「真珠の耳飾りの少女」フェルメールが好んだ宝石顔料としても知られていますよね。あの顔料を江戸期(1863年)の加賀藩は使っていたんです。その鮮やかな色彩に、藩主の母への思いがあふれているよう……などと小生ごときが言っても説得力はありませんが、英文学者・吉田健一「金沢」がこのウルトラマリンブルーを描いているのですよ。これぞ文学旅の醍醐味
- ★ 吉田健一氏は、戦後日本の宰相・吉田茂を父に持ち、明治の元勲・大久保利通の曽孫にあたる英文学者です。良家の子息によるヨーロッパ仕込みの審美眼は、小生のような凡人とは異なる域にあります。たとえば、われらがインテリ源ちゃん・高橋源一郎氏でさえ、高貴な香り漂う文章に憧れを抱き、まねをしようとして「やっぱりオレにはできない」とあきらめたという逸話があるほど。これなら説得力がありますよね、成巽閣の素晴らしさについては
- ★ 「群青の間」に、吉田は秋の青空を見ます。その青空はヨーロッパの空につながっていきます。続いて部屋を出たところにある庭の芝生の緑を目にすると、吉田は再びヨーロッパへ飛び、緑の芝の上で紅茶を飲むのです。吉田の幻視は時空を縦横無尽に巡り、色彩感覚が炸裂していきます
- ★ さらに色彩を重ねましょう。朱色壁にはベンガラが使用されているそうです。ベンガラは装飾だけでなく、防腐・防虫にも高い効果を発揮するので、劣化が少ないという魅力があります。ちなみに「群青の間」「書見の間」の写真撮影は禁止されています

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 昼食の前に、さらなるウォーキングで、お腹を空かせましょう
- ★ 施設概要で「和漢洋の3様式を観ることができる」と簡単に言ってしまいましたが、実際に目にすると日本の神社としては“異様”そのものです。実はこの神門、江戸年間に出来たものではありません。1875(明治8)年に竣工したもので、当時は「文明開化の西洋かぶれ」と揶揄されることもあったといいます
- ★ ですが、この異様なデザイン・意匠に、大きなインスピレーションを受けた文学者がいました。それが三島由紀夫です。その頃の三島は未確認飛行物体(UFO)ブームに感化されており、取材旅行で訪れた尾山神社に「宇宙(人)」を見てしまうのです。そうして得たインスピレーションは小説「美しい星」に組み込まれましたが、この小説は発表時から「異色作」として扱われ、一般読者からの評判は必ずしも芳しくなかった、とされています
- ★ 以下は、しょーもない私見。三島由紀夫「美しい星」は、宇宙という地球外の視座から、地上(戦後日本の在り方)へ向けられた強烈なアイロニー(皮肉)だったのです。ご興味ある方は、ぜひご一読を。不倫やマルチ商法、まことしやかな陰謀論の詐欺によって、新興住宅街に住む一家が瓦解(がかい:一部の乱れから、組織などの全体が滅びていくこと)してゆく姿は、現代社会のモラル崩壊を予言していますから。ちなみに、映画のほうは(泣)……なんてね
千取寿し 本店

千取寿し 本店

一枚板のカウンター
マダイ(現地にて撮影)
甘エビ(現地にて撮影)
マグロ(現地にて撮影)
寒ブリ! 寒ブリッ!(現地にて撮影)
創業は昭和28(1953)年、兼六園の近くに店を構える正統派寿司店。清冽な白山伏流水で釜炊きしたシャリ、厳選した北陸のネタ、地物の醤油で勝負する姿勢など、すべてが極められている。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 北陸・石川を旅行するからには、食事はもう限りなくお寿司を食べるんだ! と決めている方も少なくないはず。そうとなれば、数ある名店のなかでも、私たちNPO文学旅行のおすすめはこちらです
- ★ とはいっても、文学との関係はいまだ発掘できず……文学縛りの旅はことほどさように厳しいのですが、まあ堅いことは抜きにして、ただただ個人的な好みで絶賛おすすめのお店なんです、はい
- ★ なぜ、おすすめなのかって? それは──手抜きをせぬ清潔な店内とカウンター(←これ大事)、良質な仕事場の雰囲気と絶品のネタ、職人たちの高い技量と受け応えの妙、そして泣きたくなるほど良いコストパフォーマンス、どれをとっても“言うことなし夫ちゃん”で“非の打ちどころがない子ちゃん”なのです
- ★ 表からは見えない裏側の仕事をちょっとだけ紹介すると、握りのシャリは地獄炊きと呼ばれる、お釜と薪を使った方法で炊き上げられているんです。なんて贅沢なんだー!
加賀藩御用菓子司 森八 本店

加賀藩御用菓子司 森八 本店

長生殿

千歳

上生菓子(夏)

落雁手作り体験(要予約)

本店外観
寛永2(1625)年に創業した老舗。加賀藩主・前田利常の創意により、小堀遠州の筆を原型として生み出された名菓「長生殿(ちょうせいでん)」は、落雁(らくがん)の最高峰にして日本三大銘菓のひとつに挙げられる。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ こちらまでタクシーでの移動をご案内しましたが、徒歩にすると約30分です。食いしん坊なら、ウォーキングですよね、当然(笑)
- ★ 森八を代表する銘菓の画像をアップしました。どれも加賀100万石の伝統文化を現代に伝える名作和菓子です。その製法やいわれなどの詳細は、ぜひ同社公式サイトへどうぞ。それにしても、文学旅行がなぜ森八を取り上げるのでしょうか──
- ★ ──それは、井上靖「北の海」に長生殿が登場するからです。同作は井上の自伝的物語であり、同時に旧制高校の学風を普遍的な青春物語へ昇華した傑作。まだ合格していないにもかかわらず旧制四高(国立金沢大学の前身)の柔道部に誘われた主人公の成長を、金沢の美しい情景とともに描き出します。その情景のひとつに森八「長生殿」が登場します。「北の海」では、ほかに「千歳」(森八)や「あんころ餅」も。う、うまいー
- ★ 上生菓子は、2週間ごとにデザインを変えているとのこと。今の時期、茶寮(カフェ)では何を提供しているか楽しみですね。どれもこれも目にも鮮やか、おいしー(語彙)
近江町市場

近江町市場

どじょうの蒲焼き(現地にて撮影)

香箱蟹(現地にて撮影)

香箱蟹の楽しみ方(購入後に撮影)
加能蟹(購入後に撮影)

市場内風景(写真提供:近江町市場商店街振興組合)
金沢の食文化を支える「市民の台所」。アーケードには、鮮魚、野菜、果物などの専門店や飲食店、約170の店が軒を連ねる。地場の食材を求めて、金沢市民のほか、料亭や飲食店の料理人といったプロも仕入れに訪れる。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ スイーツを消化するため、さらにウォーキングしましょう。約10分くらい、なんてことないですよね
- ★ 食いしん坊にはたまらない地場の市場です。宅配を使ってお土産の購入といきませんか? お目当ては(冬季の場合)、やっぱりカニっしょ! 金沢で水揚げされるズワイガニは、オスが「加能蟹」、メスが「香箱蟹」と称されます。とりわけ卵を抱いたメスの香箱蟹は、漁期が限定されるため“赤い宝石箱”として珍重されます。その香箱蟹を全国的に有名にしたのが、泉鏡花の幻想文学「卵塔場の天女」でした
- ★ ちょっとおもしろい名物・郷土料理「どじょうの蒲焼き」(画像2枚目)は、食べ歩きにぴったり。泉鏡花「寸情風土記」に描かれており、大路の屋台で売られていた当時は「関東焼」と表現されていたことがわかります。言葉って、時を重ねると変化するんですよね〜。また、唯川恵「天女」(「病む月」収録)でも、どじょうの蒲焼きは取り上げられています(NPO文学旅行調べ)
- ★ ちなみに、この市場に近江牛はありません……あるのは能登牛ですからー(笑)
石川屋本舗

石川屋本舗

かいちん(いろいろ、動物園)

くるみ松風

ちびうめ

芋いっぽんどら焼き

棒茶どら焼き
天保年間(1830年〜)の創業以来、金沢の地で愛されてきた老舗和菓子司。機械化による大量生産をせず、かたくなに手づくりの味を守る。材料を吟味し、気温や湿度に合わせて最適な味付けを行う品々は、お茶席での菓子やお茶請け、ご進物として重宝されている。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 同店自慢の逸品は「棒茶どら焼き」。餡は北海道産を選りすぐり、使用されるお茶は3種類のお茶をブレンドしたもの。味の深みと色味は、こだわりの極地です
- ★ 私たち文学旅行の“推し”は「かいちん」です。特別な寒天と砂糖を使用した琥珀糖のことですが、「かいちん」と名を打てるのは同店のみ(NPO法人文学旅行調べ)。金沢では昔、おはじきを「かいちん」と言っていたそうで、この和菓子は、おはじきのように色とりどりなのが特徴です
- ★ この「かいちん」が登場する小説には、唯川恵「川面を滑る風」があります。金沢を舞台に展開する、お菓子職人を主人公とした物語はアニメにもなっていて、伝統菓子としての上生菓子や「かいちん」が描かれています

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 表題でお示ししたとおり、金沢市はスイーツの消費量がものすごいんです。例えばチョコレートの消費量は全国No.1だとか。お菓子全体の購入量も多く、金沢市は、まさにスイーツ大国なんです。数あるスイーツの名店たち、わけても洋菓子店に絞るなら、私たちの“推し”はこちらのお店なんです。いったい、なぜ?──
- ★ ──そのわけは、芥川賞作家・川上弘美のエッセイ「東京日記3 ナマズの幸運。」のなかにあります。川上さんは、金沢に来ると楽しみにしているスイーツがあるのだそう。それがこちら「メープルハウス」のスイーツなんです。このエッセイでは、ホテルへ持ち帰り、◯個も食べてしまったと告白しています。そして“ここのケーキは胃もたれしない”とつぶやくのです。ホント、原材料が新鮮だと胃もたれしないんですよね、良い洋生菓子って
四十萬谷(しじまや)本舗 弥生本店

四十萬谷(しじまや)本舗 弥生本店

匠かぶら寿し

金城大根寿し

クリームチーズの漬物

本店外観

かぶら寿し体験教室
1875(明治8)年、白山の清らかな伏流水が湧き出る泉野村に創業。以来、地元文化に根ざした発酵食品を作り続ける。代表的な一品「かぶら寿し」は、泉鏡花や尾崎紅葉、室生犀星などの文豪も愛した金沢の冬のご馳走。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 前スポットからタクシーで約10分の距離ですが、徒歩だと約50分。スイーツのカロリー消費にチャレンジしますか? ここまでの合計で、おそらく1万歩を超えることができるでしょう。どうします?
- ★ さて、食いしん坊の金沢文学旅、今回の掉尾を飾るのは「かぶら寿し」です。かぶら(蕪)といっても、真ん中にブリを挟んだ発酵食品で、そのブリに存在感があり、蕪とのバランスも絶妙なんです。冬の御馳走だったわけがよくわかりますよね。ひとくち食せば、ブリだけに出世(魚)できるかも!
- ★ この郷土料理を“推し”ていた文学者として、ここでも泉鏡花が登場します。故郷を愛する美食家だったんですね。同舗の公式サイトにあるように、鏡花は「かぶら寿し」を、こう描写しています。「年の暮れに霰(あられ)に漬けて、早春の御馳走なり」。ここでいう霰(あられ)は、麹(糀)のこと。美的ですよね─
- ★ 芥川龍之介は、鏡花から贈られたかぶら寿しを、隣人たちにお裾分けするようなこともあったらしいです。芸術家界隈で、この料理が珍重されていたことのわかるエピソードですね(同舗公式サイトより)
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画像提供:金沢市(兼六園、尾山神社)
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