『ゴールデンスランバー』
首相暗殺の濡れ衣を着せられた青年は、監視カメラだらけの仙台市内を逃げ回ります。絶体絶命の主人公を救うのは「記憶」。彼に不利な証言をする人々の嘘を「あの人にそんな習慣はない」と見破ってくれたかつての恋人の密かなる助け、時間どおりに来る宅配のトラック、柔道の技、草むらに放置された車、そして状況を打破するのは花火!? ラストの中央公園での攻防は圧巻です。極上のエンターテインメント。
1,100円/新潮文庫
『眺望絶佳の打ち上げ花火』
著者は30年以上花火を撮り続けている方で、圧巻の80枚に加え「菊」「冠」「千輪」「椰子」といった形の名称の解説、玉の中はどうなっているかなど基礎知識のページも豊富です。200メートルにわたる「富士山型ナイアガラ」、江戸の錦絵ではどう描かれたか、煙の色を楽しむ「昼花火」ほか異色のビジュアルもあり、昔から人々を楽しませ進化を続ける花火に日本の職人さんたちの確かな技術がうかがえます。
2,200円/玄光社
『隅田川の橋』
コロナ禍で今年も花火大会は中止だけれど、水路物流の要として、お花見、祭り、お寺などの観光の場として、隅田川界隈は江戸の昔から人々に愛されてきました。本書は21の橋を、今の姿と昔の写真を対比させながら、歴史や現在の名所を紹介するビジュアル本で、河畔歩きや水上散歩のお供に最適です。P50には両国橋西側から花火を描いた三枚続きの浮世絵があり、当時のにぎわいに胸が熱くなります。
1,980円/彩流社
『華麗なるギャツビー』
村上春樹が人生で出会った最も大切な小説の1つといわれている「グレート・ギャツビー」。たった1人の女性を愛し続けた、男の悲恋の物語です。狂騒の1920年代アメリカ、景気に沸いたこの時期のパーティーシーンはギラギラの宝石箱を開いたかのような華やかさ。ディカプリオ演じるギャツビーがパーティーを彩る最大の目玉である花火をバックに、ワイングラスを掲げながら、「僕がギャツビーだ」と自己紹介。このときの満面の笑みを浮かべるシーンは映画史に残る名スマイルといえます。この物語の語り手であるニックというキャラクターの言葉として「生涯にそうはみられない極上の笑顔」だと表現された、花火と世界的イケメンのコラボレーション。ここだけでも見てもらいたいほどとろけるシーンです!
『糸』
菅田将暉さんと小松菜奈さんのダブル主演。平成元年生まれの男女は13歳の夏、美瑛の花火大会で偶然出会い、初めて恋をします。奇跡のような確率でめぐり逢い、出会いと別れを繰り返す二人のそれぞれの人生と運命を、平成という時代の流れを背景に壮大に描きます。北海道、沖縄、シンガポール。たくさんのロケ地があり、ロケーションを観ているだけでも満足度が高いです。実生活でも夫婦になった2人の演技を見ていると、ほかの恋愛映画とはまた異なる幸福感が湧いてきます。名シーンとともに中島みゆきさんの「糸」が鳴り響き、夢の中でも脳内再生されてしまうほど。結婚式やテレビ番組などでもよく使われる名曲ですが、この映画を一度でも鑑賞したら、この曲の味わい深さがまた一段と増しますよ。
『セイント・フランシス 』
34 歳独身の主人公が、ナニー(ベビーシッター)先の6歳の少女フランシスや彼女の両親であるレズビアンカップルとの出会いにより、少しずつ成長していきます。年齢差別やLGBTQといった現代社会の問題を描きますが、コミカルさを忘れていない演出ですし、生理や中絶といった内容からも目を背けず、真っ向から向き合って女子の痛みを見事に描ききりました。これは傑作……! まるで自分を1番に理解してくれる親友のような映画です。この作品で最もグッとくるセリフが登場するシーンは、フランシスが花火を見に行ったときに配慮の足りない大人に向けて放つ一言。子供は育てているつもりになりますが、学ばせてくれる機会もたくさんくれるんですよね。