旅が大好きだとお聞きしました。最近行かれた旅で思い出深い場所はありますか?
三四郎の相田さん、ゾフィーの上田さんと三人で行った、静岡県・用宗(もちむね)にある一棟貸しの旅館「日本色(にほんいろ)」です。まず駅に着いたらトゥクトゥクで迎えに来てくれるんですよ。この時点ですごくワクワクしますよね。宿のなかは古民家のような落ち着く雰囲気で、とてもおしゃれな空間になっていて、一棟貸しなので周りの目を気にすることなく、温泉に入ったりのんびりすることができました。海にすごく近かったのもよかったです。僕たちが行った日はちょうど満月の日だったので、きれいに月が見えて。夜道の散歩が気持ちよく、めちゃくちゃ癒されました。
とても素敵な宿ですね! 芸人仲間と旅行に行かれることはよくあるんですか?
そうですね。こんなご時世なので頻度はそこまで多くないですが、最近は三四郎の相田さんが誘ってくれることが多くて、よく一緒に行かせてもらっています。芸人仲間と行くと、やっぱり楽しいんですよね。「日本色」に泊まったときは、キッチン付きだったのでそこで僕が簡単な夕食やおつまみを作らせてもらったんですけど、居酒屋ミニコントが始まって(笑)。芸人仲間と行くときは、海の近くでワイワイ盛り上がる感じの旅が好きです。
知らなかったことを知る楽しさ。古都で出会う古い時代が旅の原動力
楽しそう(笑)。では、たけるさんのお気に入りの旅行スポットがあれば教えてください。
年に1回、必ず行くと決めているのが、京都と金沢ですね。芸人仲間と行く旅とは違って、こちらの旅は少人数、もしくは一人で、文化に触れられる場所に行くのが好きです。京都行きの目的は神社巡り。僕のお気に入りの「車折(くるまざき)神社」には芸能の神様がまつられているので1年に1回必ず行って、お参りをするんです。金沢は20歳くらいのときに初めて行って、ハマってしまって(笑)。街の歴史は深いのに、アートスポットが多くて新しい時代の雰囲気もあり、その不思議な空気に惹かれてしまったんです。それ以来何度も足を運んでいます。
金沢旅行で一番思い出に残っていることはどんなことですか?
「金沢21世紀美術館」や九谷焼にシールで絵付けができる「KUTANI SEAL SHOP」などいろいろ楽しみましたが、なかでも一番心に残っているのは時間が空いてたまたま入った「金沢蓄音器館」なんです。ここがちょっとすごかったんですよ。その日、館長さんがつきっきりで蓄音器の歴史や遍歴、どんな仕組みで音がなるのか、それぞれの蓄音器がなぜ「金沢蓄音器館」にやってきたかなど、本当に細かく教えてくれました。そしてさまざまな蓄音器の聞き比べをさせてもらったのですが、大きなものは体の中から響くようなすごく迫力のある音で、デジタルの音とは全く違い、感動しましたね。僕はこういう自分が知らなかった時代のものを知ることが大好きで、旅では古い時代のものについて知れる場所を中心に選んでいます。京都や金沢に惹かれるのも、そういう理由からです。
観光大使にも就任! 備中神楽や生まれ故郷の魅力を発信
古い時代のものを見るのが好きになったきっかけは、何かあるんでしょうか?
2歳から岡山県西部に伝わる備中神楽をやってきたので、それが大きいのかなと。備中神楽は400年ほどの歴史があるといわれていて、それが脈々と受け継がれてきたこともすごいなと思っていましたし、神楽では古事記や日本書記の神様を題材にした演目が多いので、小さい頃から未来よりも過去について考える時間が長かったんだと思います。自然と古いものに興味を持つようになっていきました。ちなみに旅行に行く前に、神社や歴史のあるもの情報を事前に調べることも大好きです。予備知識があるだけで、もっと旅を楽しめるようになると思っています。
2歳から!? そんなに長く備中神楽をやられていたんですね。きっかけは何だったのですか?
最初は野球やサッカーと同じような感じで、近くの人がやっているから自分もやってみようかな、くらいの軽い気持ちでした。親戚にあたる人が備中神楽で岡山県の重要無形文化財に認定されていたり、兄も先に始めていましたし、身近な存在だったんです。子どもの頃から目立ちたがりの性格だったのがうまくハマったのか、舞台でみんなに見られながら舞うのが気持ちよくて、気が付いたら長く続けていました。舞台慣れもしましたし、ツッコミの時の型もできたし、備中神楽をやってきて本当によかったと思います(笑)。ありがたいことに高梁市(たかはしし)の観光大使「備中高梁伝えたいし!」にも任命していただいたので、高梁市や備中神楽の魅力をこれからもっと伝えていきたいと思っています。
撮影/十河英三郎 取材・文/上野郁美(エフェクト) スタイリスト/松本ユウスケ