映画『ソワレ』が初共演だそうですが、撮影前や撮影を通して感じたお互いの印象を教えてください。
芋生 撮影前の印象は、オーディションで初めてお会いしたんですけど、すごく魅力的な目をされている方だなと思って。あと、本当にまっすぐな表現をされる方だなと思いました。
映画を撮っている間は、現場の座長みたいな感じだったので、その責任をちゃんと担ってくれていて、なおかつ、ぎすぎすした雰囲気を絶対に作らず飄々とされていました。大変なシーンの前でもそのスタンスは変えないので、すごく安心感があって信頼できましたね。
村上 最初にオーディションでお会いして、そのあとに豊原(功補)さん演出の舞台(2019年の『後家安とその妹』)を拝見して、それから現場だったんですけど。その3つの場面で共通して、力強いという印象を受けたんですよね。身体的にも表現としてもそうですし、さっき「(魅力的な)目」とおっしゃってくれましたけど、それはお互い様で。
(芋生さんが演じる)タカラは、自発的に行動する人間じゃないけど、凛とした強さは持っていて、いろんな表現の仕方があるキャラクターだと思うんです。それってすごく繊細で難しいと思うんですけど、オーディションの時から、難なく表現されているように見えました。
拝見した舞台も、共演されていた大先輩たちの中でも、存在感があってかっこよかったです。現場に入る時には心配もなく、「頼みました」みたいな感覚でしたね。信頼できる方だなと思います。
『ソワレ』は、お2人が演じる翔太とタカラの関係性が肝になっていると思いますが、その関係性を作り上げるために何かしましたか?
村上 話したことがなかったので、クランクインする前に監督と3人で一度ご飯に行きました。新宿のご飯屋さんで、いろいろと雑談して。
芋生 そうだったね。
村上 和歌山に向かう電車でも、前日に監督伝いで「ご一緒していいですか?」と言っていただいたので「ぜひぜひ」って。そこでだらだらとしゃべったぐらいですね。それ以降は現場に入ったので、タカラと翔太が逃げる瞬間まではあまり会う機会もなく、お互い「いるなあ」みたいな。
芋生 「あ、いるなあ」ってね(笑)。
映画を拝見して、お2人の作り上げる世界観に終始引き込まれました。演じていて、「これはすごいシーンになる」と思うことはありましたか?
芋生 撮影中は、手ごたえみたいなのは、いちいち感じられなかったんです。でも、橋の上で村上さんが独白するシーンでは、村上さんが演じる翔太の思いが、目とか言葉とか、すべてから伝わってくるというか。いろんな悔しい思いをして、いろんなものを見て来た目をしていて、そこから受け取るものがたくさんありました。今でもあの時の村上さんの表情がずーっと残っています。
村上 表情つながりだと、ネタバレになるのであまり言えないですけど、2人が逃げる時のタカラの表情ですね。表現しがたいですけど、鬼とかそういう感じの表情で、(タカラが)憑依していましたね。
そんなお2人の細かい表情も注目ですね。また今回、豊原功補さんと小泉今日子さんがプロデュースを担当されていますが、現場でプレッシャーなどはありませんでしたか?
芋生 プレッシャーはまったくなくて、むしろいてくれるとすごく安心するというか。その直前に一緒にやった舞台で、豊原さんにしこたま怒られたので(笑)。
村上 え、何を怒られたの?
芋生 全部……かな。たくさんしごかれて、そこですでに言葉はもらっていたから、今回の現場にいらっしゃる時は特に何も言われなかったんです。その舞台で築き上げた関係性とか、もらった言葉などがあるから、いてくれるだけで安心しましたね。
村上 僕も俳優を始めて2年ぐらいの時に、お2人同時に舞台で2か月半ぐらいご一緒して、その時すでに全恥をさらしていますからね。もちろん、それから数年経って、ちょっと成長を見せないと、みたいなところはありますけど(笑)。でも今回の現場では、お2人は主に車両部として動かれていたので。専属ドライバーかのように現場まで乗せてもらったり。
芋生 (笑)。
村上 車両止めとかもやってくれて。車を止められた和歌山の方も、「え、キョンキョン!?」って驚いていたと思います。逆に目立つからやめて、って言われてましたけど。
物語の背景となる和歌山の景色も印象的ですが、演技するうえで、環境は影響しましたか?
芋生 めちゃめちゃ影響しますね。和歌山の自然とか海とか、地面が湿っていたり、風で揺れる木が騒がしかったり、全部がすごくシーンに合っていて。天候に恵まれていたのもよかったですね。撮影の時は全然意識していないんですけど、あとになって、走っている時の景色とかが走馬灯みたいによみがえったりします。和歌山じゃないと撮れなかったな、と思います。
村上 僕は暖色のイメージがあって。木々の緑や海の青もあるんですけど、物語に関わる梅のイメージと、神社の朱色がすごく僕の中で印象に残っています。今回の映画はほとんど休みがなかったんですけど、そのあとにまた別の作品で和歌山に行く機会があって、その時にたくさん観光しました。先輩俳優とかと一緒に、南紀白浜の三段壁とか温泉とか、最終的には動物園まで行ったので。(芋生さんに)全然行ってないでしょ?
芋生 行ってない! いいなー。
村上 (観光した場所の)すべてがものすごかったんですけど、那智の滝が特にやばかったですね。話せば長くなっちゃうんですけど。
詳しく聞きたいところですが……最後に、お2人の「旅に行きたくなる映画」を教えてください。
芋生 自分がちょっと出ているんですけど、『恋恋豆花(れんれんどうふぁ)』という台湾で撮影された映画ですね。豆花というのは台湾で有名なスイーツなんですけど、それが本当においしくて。台湾の中でも、地域やお店によって味や入っている具材が違ったりするので、その土地のいろんな景色を味わいつつ、豆花巡りをしたくなります。台湾最高です(笑)。
その撮影の時は観光できたんですか?
芋生 実は、私の登場シーンでは台湾での撮影がなくて……行きたかったー(笑)。台湾には修学旅行で行ったことがあるんですけど、その時に同い年の学生さんたちとすごく仲良くなって、今でも連絡を取っているんです。また台湾に行った時は案内してくれるみたいなので、楽しみにしています。早く台湾に行きたい(笑)。
村上 最近、映画は劇場でしか見たくなくなっちゃって、家にいると海外ドラマしか見ていないんですけど……。
海外ドラマでも大丈夫です!
村上 じゃあ、最近見た『ウエストワールド』。映画界のレジェンドであるアンソニー・ホプキンスが初めて出たドラマで、シーズン3になるとヴァンサン・カッセルとか、『ブレイキング・バッド』のアーロン・ポールとかも出てきて。SF的な世界と名前の通りアメリカのウエスタンの世界が舞台なんですけど、正直ウエスタンにはあまり興味がないので見てなかったんですけど、いろんな人に勧められて見たら面白かったんです。
それで、ウエスタンに行きたいというよりは、アメリカに行きたいと思って。アメリカの映画は見るし、ニューヨークには行ったことあるけど、僕はアメリカとちゃんと向き合ったことがなくて。イギリスとか台湾とか東南アジアはいくつか旅しているんですけど、アメリカはあまり知らないから、改めて行ってみたいなと思いましたね。