【今月の旅写真】川辺の風景を探して~荒川・隅田川・等々力渓谷~
こんにちは。写真家こばやしかをるです。気温の高い日が続くものの、お盆の頃から乾いた空気に変わり、日が沈む早さも感じられるようになります。夏の暑さに疲れた体を休めるためにも身近な水辺を散策しながらリフレッシュしてみませんか。
今回はスマホ片手に気軽に出かけ、東京観光の際にも駅からアクセスしやすい川辺の美しい景観を切り取ってみました。
Text&Photo:こばやしかをる
撮影機材:moto g50 5G(Android端末)
目次
川の役割
街で生活しているとあまり意識することのない川の存在ですが、生活に必要な水を供給し、生活を豊かにするエネルギーであり、安らぎと潤いを与え、普遍的で人々に欠かせない大切な役割を担っています。また、川は自然とふれあえる場所。今では、安全に楽しく遊べるように整備された河原も多くなりました。
水の流れには気分をリラックスさせる効果があるといわれていて、川の流れや音、輝く水面を見ていると気持ちが落ち着いてきます。私自身も川辺の風景に癒されることが多く、リフレッシュしたくなると足を運んでしまいます。
青空の似合う場所 広々とした空の下、深呼吸したい荒川河川敷
初めに紹介したいのは、北区出身の私にとって一番なじみ深い荒川です。荒川河川敷へのアクセス方法はいろいろとあるのですが、おすすめは東京メトロ南北線志茂(しも)駅、または赤羽岩淵駅から徒歩約15分ほどで行くことができる荒川と隅田川の分岐点。ここには「赤水門」と呼ばれる、有名な旧岩淵水門(きゅういわぶちすいもん)があります。
青空の下に水門の赤色が映えて、とても清々しい景観です。新旧2つの水門があり、旧水門の「赤水門」と、300mほど下流に新しく建設された水門は「青水門」と呼ばれています。こちらは荒川・隅田川の氾濫を防ぎ、都心部への洪水・浸水を防ぐ砦として大きな役割を担っています。
撮影ポイント:荒川河川敷は雲のある快晴の日にお出かけするのがおすすめ。空の青さと雲の白さを広々と画面に取り入れます。カメラにグリッド線(分割・ガイドライン)を表示して、水平をきちんと意識して。
青空の広がる土手は、吹く風も気持ちよく絶好の眺望ポイント。サイクリングやウォーキング、ランニング、ボードウォークにキャンプ、ピクニックなどアクティビティと共に自由なスタイルで楽しめる開放的な空間です。
赤水門の裏手を渡ると、小さな中之島(荒川赤水門緑地)があり、ここでも読書や釣りを楽しむ姿の人々を目にします。のんびりと各々の時間を過ごすことのできる、まさに自由空間。お弁当を持参し、食べながらゆっくりと過ごすのもおすすめです。
新河岸橋~岩淵橋間を歩き、赤羽岩淵駅へ戻る途中には、江戸時代に徳川将軍が日光東照宮に参詣する際に利用し、日光御成道の第一の宿場として栄えた岩淵宿の鎮守社「岩淵八雲神社」が。昔ながらの長屋アパートも立ち並び、今も薪で沸かしている銭湯「岩の湯」も健在で、下町気分に浸れます。
撮影ポイント:狭い路地などでは、下からあおるように撮影するとダイナミックな印象になります。建物の柱や地面に合わせて真っ直ぐになるように水平を取ります。
開放的な空間で深呼吸したら、銭湯で汗を流してリフレッシュ! そのままJR赤羽駅まで歩けば、夜のお楽しみ“センベロの街”も待っていますよ。
◆旧岩淵水門
住所:東京都北区志茂5-42-6付近
アクセス:地下鉄南北線赤羽岩淵駅または志茂駅より徒歩約15分
都市景観と橋梁デザインの美しさに惹かれる隅田川
東京都心部を流れる代表的な川といえば隅田川です。川の両岸には堤防を補強する際に護岸基礎を親水施設として造った「隅田川テラス」があり、川のすぐ横を歩くことができます。駅からアクセスしやすい場所でもあり、ランニングや散歩をする人の姿も多く見られます。
川には観光に最適な水上バスや江戸時代から続く、船遊びの屋形船も往来。夜間は船体の光が美しく、街の輪郭が色濃く映し出されます。大きな川幅の隅田川を歩いていて魅了されるのは、景観にマッチする橋梁のデザインです。それぞれの橋ごとに趣や色が異なります。
今回は、JR両国駅付近の水上バス乗り場から都営大江戸線蔵前駅まで歩きました。速足で15分、ゆっくり歩いて25分くらいの散歩にちょうど良い距離です。
隅田川テラスは、護岸は高く作られているので眺望もよく、さまざまな角度から橋を眺めることができます。西日の温かい光に包まれて穏やかな気持ちになれる、夕暮れ時からの景観が素晴らしいですよ。
こちらは蔵前橋。橋には珍しい独特なクリーム色が印象的で、夜になると鮮やかな黄色となり、煌びやかです。
撮影ポイント:夕暮れ時は光が水面に写り輝きます。画面全体が白く、明るくなりすぎないように「明るさ調整」機能でマイナスに補正することで、水面が美しく表現されます。
ピントを外したいときは、マクロモードを活用して。
隅田川で唯一の優美な3つの曲線が連なるアーチの厩(うまや)橋。私も特に好きな橋です。駅が近いこともあり、人や自転車の往来も多く見られます。
撮影ポイント:曲線の流れが生きるように奥行を活かした構図を狙い、街の景観と曲線を絡めたポジションに移動しながら撮影をします。
日が沈む時間からは、橋梁の美しさと街の輝きを合わせて捉えることができます。特に光が美しく、日が落ちる時間が早い晩秋に訪れるのがおすすめです。
撮影ポイント:夜景撮影ではスマホ以外のカメラをおすすめします。三脚で固定しシャッタースピード優先で1~2秒の長秒撮影を行います。そのことにより、水面の流れる光を捉えることができます。
今回紹介しきれなかった永代橋、清洲橋、両国橋、駒形橋、吾妻橋、言問橋も独特なデザインと美しいライティングなのでぜひ夜に訪れてみてください。隅田川では、東京の2大タワー「東京スカイツリー」「東京タワー」や「レインボーブリッジ」などの東京湾の夜景を堪能できるクルージングもあるので全ての橋を網羅できそう。私も近いうちに体験してみようと思っています。
自然を堪能できる都内随一の等々力渓谷
東京都の名勝の一つとして指定されている等々力渓谷は、都内随一の渓谷。渋谷から約20分、東急大井線等々力駅から徒歩約3分というアクセス抜群の立地の良さです。
橋の脇に渓谷入口から階段を下るとすぐに別世界へと没入します。
渓谷の入口を降りるとすぐに赤い橋げたの「ゴルフ橋」が迎えてくれます。緑の中にコントラストが強く印象的です。かつてゴルフ場があったことからこの名が付いたのだとか。
渓谷の川沿いの歩道は舗装されているので普段着でお出かけできるのも嬉しい点です。木々に覆われた緑の下は外気温より2℃ほど低く、直射日光を浴びずに歩けるので快適です。(但し、虫よけ対策はしておきましょう)静かなせせらぎの川面を眺めつつ、撮影しながらゆっくり歩いて片道20分程度の距離。
川面に反射する空の青さと木々の色、流れによる変化を眺めていると気持ちが安らぎます。
撮影ポイント:川幅は広くなく長く続くため、縦構図で奥行を活かして撮影します。画面全体が白く、明るくなりすぎないようにマイナスに補正を忘れずに!
不動の滝すぐそばにある甘味処「雪月花」では、滝の音を聞きながら抹茶やかき氷、葛餅などがいただけます。また、その横にある階段を昇れば等々力不動尊。そちらでも休憩を取るができ、高台に吹く風で揺れる木々や、木漏れ日を眺めながらほっと一息。緑の癒し効果は絶大です。
来た道を戻り駅に向かいます。反対側から眺めるとまた違った印象の風景が見られるのでゆっくりと散策しましょう。
撮影ポイント:影の引き締まった黒さが大事なので、ここでも「明るさ調整」機能でマイナスに補正を。暗さの中に光が引き立ち印象的になります。
都会の中で大自然に癒される等々力渓谷は都会にいることを忘れるくらい自然豊かな場所。季節によって違った姿を見ることができるので、何度訪れても楽しめるはず。これからの紅葉シーズンも楽しみです。
◆等々力渓谷
住所:東京都世田谷区等々力1丁目22番、2丁目37から38番外
アクセス:東急大井町線等々力駅より下車徒歩3分
おわりに
3つの川はそれぞれに違った魅力に溢れて、どの川辺を歩いても、川面の揺らめく光と水の音に心が癒され緩やかになることを実感できます。
空も、川も、木々も、自然の恵み。そして街の景観とともに美しいデザインの橋梁。光の変化を楽しみながら身近な場所で季節ごとの川辺の風景を楽しんでみませんか。少し足を延ばすだけで、日常とは違う時間の流れを感じることができますよ。