“スタッフが魅力”のホテルサンパレス球陽館に聞く、覚えられるホテルの秘訣

沖縄県

2024.04.25

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“スタッフが魅力”のホテルサンパレス球陽館に聞く、覚えられるホテルの秘訣

沖縄県ではホテルの新規開業が続いています。背伸びをしてでも訪れたいラグジュアリーな雰囲気、隙のないサービス、海外リゾートのようなホテルも素敵ですが、三線と島唄が耳心地のよい国内旅行では、遠い親戚の家にお邪魔するような気軽さが恋しくなりませんか? 沖縄の中心地・那覇市にある「ホテルサンパレス球陽館」はまさにその雰囲気。社長の金城さんは、ホテルの特徴を「スタッフ」と断言します。「タイパ」「コスパ」を重視する時代だからこそ際立つ魅力についてお話を伺いました。

目次

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親子三代で受け継ぐホテルマンマインド

インターネット新時代にコンセプトがフィット

使命は「沖縄を楽しんで過ごしてもらう」

“スタッフ”を目印にホテルを覚えてもらう

『月刊旅色2024年5月号』で沖縄県那覇を総力特集!

大学卒業後、キャピトル東急ホテル(現 ザ・キャピトルホテル 東急)に入社。その後、ハワイやオーストラリアでホテルマンとしてのキャリアを築いたのち、帰国し、父が経営するホテルサンパレス球陽館へ。2004年より現職。(一社)沖縄観光の未来を考える会の会長を務めている。

ホテルサンパレス球陽館

沖縄県那覇市久茂地2-5-1

ホテルサンパレス球陽館

親子三代で受け継ぐホテルマンマインド

――ホテルサンパレス球陽館は、ゆいレールの「県庁前」駅からほど近く、国際通りなど中心街にも歩いていける一方で、大通りから一本入っているので静かですよね。

球陽館は、もともと祖父が昭和23(1948)年ごろ、国際通りから一本入った浮島通りというところで宿屋業を始めたのがきっかけです。その8年後、現在の場所に移転し、やがて父と母の経営になりました。父も母も、遅くにしか帰ってこないほど仕事に打ち込んでいて、その姿を見てたので、長男でもありますし、いずれこのホテルを継ぐのだなと思っていました。

ホテルサンパレス球陽館は2004年「モノレールから見える緑化コンテスト」 最優賞を受賞

ホテルサンパレス球陽館は2004年「モノレールから見える緑化コンテスト」 最優賞を受賞

――東京、ハワイ、オーストラリアのホテルで修行された一流ホテルマンとして、早くから頼りにされたんじゃないですか?

いや、最初は難しかったですね。当時、都心部のシティホテルと、沖縄という土地柄、まして家業としてやっている中小企業のホテルとでは、なにもかも違うので、習ったことや学んだことをすぐ導入するというのはできなかったですね。やろうとして失敗したり、スタッフもなかなか理解してくれなかったり。社長である父とは、このホテルをよくしようという思いは同じだったものの、やはりたくさん衝突しました。

――その後、事業継承されて、 2008 年にリニューアルもされました。

当然ですが、それまで社長である父がホテルの中心でした。いわば、父が理念のようなもの。私はそのようにはなれないので、父の指導を仰ぎながら、「これからどういうホテルにするか」や「ホテルのコンセプトはなにか」を決めようというところからスタートして、現在テーマに掲げる「沖縄ロハススタイル」に行き着きました。ただ、それまでやってきたことと大きく変わらず、そのスタイルに名前をつけたという感じです。

ホテルサンパレス球陽館の金城社長

ホテルサンパレス球陽館の金城社長

インターネット新時代にコンセプトがフィット

――転機はありましたか?

20年程前は、インターネットが始まった時代でした。それまでは窓口となる旅行会社だけに営業すればよかったのが、直接お客様にアピールするためにはどうするかという課題が出てきたところでした。いわば、販売方法が変わってきたんです。そこで宿泊サイトにいち早く登録し、ホームページを準備。ネットで客室が埋まることがわかってからさらに力を入れ、当時は「じゃらん」などで一番売れた宿として表彰されたこともありました。キーワードとして「沖縄ロハススタイル」があることで、わかりやすくホテルサンパレス球陽館の魅力をアピールできたんだと思います。

使命は「沖縄を楽しんで過ごしてもらう」

――「かりゆしウェア」の無料レンタルも、沖縄ロハススタイルにぴったりですよね。

ホテルサンパレス球陽館の目標のひとつに、「ご宿泊いただいた方に沖縄を楽しんで過ごしてもらう」というのがあります。そのお手伝いをすることが僕らの使命だとスタッフ間で共有しているのですが、沖縄らしさを演出するのにかりゆしウェアはぴったりなんです。そもそも僕は、ホテル組合の青年部で、かりゆしウェアの普及活動をしていたんです。1990 年代ぐらいでしょうか。当時はホテル組合の我々ぐらいしかかりゆしウェアを着ていなかったので、各市町村の役場や官公庁を回って「着てください」とプレゼントする活動を4~5 年やってました。2000 年の九州・沖縄サミット首脳会合では、かりゆしウェアを着て各国の首脳を受け入れましょうという機運となり、かりゆしウェアが一般化していったんです。かりゆしウェアが、沖縄らしさに一役買うのは間違いありません。

かりゆしウェアは、受付で手続きすれば無料で借りられる。レディースやペアルックも

かりゆしウェアは、受付で手続きすれば無料で借りられる。レディースやペアルックも

――「沖縄観光の未来を考える会」の会長もお務めですが、そのヴィジョンに「沖縄らしさを活かしたアジア随一の国際リゾートアイランド」とありました。“沖縄らしさ”ってずばり、なんでしょうか?

難しい質問ですね……本土に比べて、歴史も文化も、人も全然違います。空港に降り立つと感じる空気感から違うんですが、それを言葉にするのは難しいですね。しいていうならば、風土や気候、食べ物、建物の雰囲気さえ沖縄特有のそれぞれが醸し出すものでしょうか。それから「楽しい」という気持ちも“沖縄らしさ”を支える要因だと思いますね。

――かりゆしウェアはパッと見て“沖縄!”とわかり、沖縄らしいですもんね。ただ、いつ着たらいいか迷います……。

いつでも着てください。気軽に着ていただきたいという思いから、無料なんです。食事に出かけるときでも観光のときでも、お仕事のときにも。本土の人からすると、かりゆしウェアは派手で着るのが恥ずかしいと思われるかもしれませんが、沖縄ではみんな着ています。沖縄でこそ着て、写真を撮って、旅の思い出にしていただきたいです。気に入れば、ぜひ新たなものを買っていただきたいですね。実際、ホテル滞在中にレンタルされる方は多いですよ。例えば、東京と沖縄では10度ほどの気温差があるので、そのままの服装だと暑いんです。以前お泊りになった海外の映画監督は、毎日かりゆしウェアを替えていました(笑)。

“スタッフ”を目印にホテルを覚えてもらう

――まさに「沖縄を楽しんでもらう」演出ですね。それ以外に心がけてることはありますか?

「お客様と自由にお話できるようになりなさい」とは常に言っています。私は本土で、沖縄に行ったことがあるという方に「どこに泊まりましたか?」と聞くのですが、よっぽど有名なホテルでなければ、ほぼ誰も覚えていないんです。では、なにを覚えているかと聞くと、そこで食べたものや出会った人、どういう体験をしたかということ。なので、ホテルサンパレス球陽館では、「こんなスタッフと話したホテル」と覚えてもらえればと思い、お客様とのコミュニケーションを大切にするように意識していますね。お陰様でリピーターも増え、「ホテルに来る」ことにプラスして「そのスタッフに会う」と思っていただけるようになりました。

スタッフの皆さんと。撮影中も笑顔が絶えません

スタッフの皆さんと。撮影中も笑顔が絶えません

――それは唯一無二の魅力ですね。

コロナ禍を経て、どんどんシステムが整備され、自動チェックイン機ができ、人と接することなく滞在できるホテルが増えました。そのよさもありますが、ホテルサンパレス球陽館がそれをしてしまうと、魅力が消えると思っています。やはり人を介したサービス、お客様とスタッフの繋がりは大切にしてきたいですね。例えば、長期でお泊りいただくお客様が朝食に来ないときは、念のためお部屋にお電話します。「今日は食べないんですか? 体調大丈夫ですか?」とお伺いします。やっぱり心配なんです。体調が悪いと伺えば、病院に電話することも。自分の身内のように寄り添う、それが沖縄らしさでもありますし、また「沖縄を楽しんでもらうためのお手伝いをする」という我々の使命にも繋がります。遠い親戚の家に来たような気安さで過ごしていただきたいですね。

朝食は自慢のうちなー御膳

おかわりの案内もやさしい

『月刊旅色2024年5月号』で沖縄県那覇を総力特集!

ホテルサンパレス球陽館に宿泊させていただいた取材の当日のこと、朝食会場でスタッフの方がご年配のご婦人に、「薬飲んだ? だめよ~飲まなきゃ」と声をかけていました。ご家族かご友人なんだなと思った矢先、「今日チェックアウトでしたっけ? また来てくださいね」と話していて、アットホームさに衝撃を受けましたが、金城社長のお話を伺って納得。ワクワクも含めて気を張っている旅先では、心置けないホテルがあるのはとてもありがたいことです。一度、泊まってみてください。また“帰ってきたくなる”ホテルです。さて、ホテルサンパレス球陽館がある那覇はすでに初夏。ひと足早く夏を迎えた那覇を『月刊旅色2024 年5月号』で特集しました。2つのモデルコースのほか、お取り寄せできる知られざる沖縄の名品を取り上げたコーナーも。ぜひご覧ください。

月刊旅色2024年5月号
沖縄・那覇特集はこちらから

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編集部 ホソブチ

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ホソブチ

『月刊旅色』副編集長。写真家・浅田政志さんの連載「宿旅」を担当して痛感したのは、全国各地にいい宿がたくさんあるということ。趣味は「温泉石鹸」集め。名物・お土産探しが大好きですが、下戸なので銘酒やお酒との相性はちんぷんかんぷんです。

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