【今月の旅写真】大阪で優雅なひとときを感じる3つのバラ園めぐり
新緑の若葉が芽吹き、緑のまぶしい季節。外を歩いていてもすがすがしい空気を感じられ、気持ちがいいものです。まもなくやってくる梅雨前線を前に大阪を訪れ、満開のバラが楽しめる3つの公園を巡りました。花だけでなく、造園や景観の美しさを取り入れた撮影ポイントをお届けします。
Text&Photo:こばやしかをる
撮影機材: RICOH GRⅢx
目次
バラの開花時期や見頃はいつ?
バラの開花時期は、その年の気候やバラの品種によって異なりますが、おおむね5月〜6月頃とされています。関東から西日本では5月〜6月はじめ、北陸や甲信越、東北では6月に、北海道は6月中旬〜7月がバラの見頃です。
また、春に一度だけ開花する「一季咲きのバラ」、一度開花した後に剪定を行うことで約一か月後の夏頃に咲く「二番花」、春と秋に開花する「返り咲きのバラ」、気温15度以上あれば咲き続けることができる「四季咲きのバラ」などもあり、厳冬以外の季節でその姿を目にすることができます。
雨の「浜寺公園ばら園」でしっとりと
はじめに訪れたのは堺市にある浜寺公園です。明治6(1873)年につくられた府営公園で、園内のバラ庭園は、全国でも珍しい日本庭園になっています。回遊式庭園に見立てた「湖沼・水路の景」、「里の景」「山間の景」など5つのゾーンと遊歩道、ヨーロッパの庭園を思わせる「まちの景」など、敷地内には約 400 種、6,000 株のバラが咲いています。
訪れた日は、あいにく雨足の強い日でしたが、雨は写真好きにとって絶好の撮影のチャンス。カメラがなるべく濡れないように配慮が必要ですが、自然を対象としたとき、緑や花の美しさと鮮やかさを引き出してくれるのが雨です。滴をまとった姿も、雨の日にしか見ることのできない美しさ。雨に濡れたバラからは芳醇な香りが立ち込め、五感を通してバラを堪能できます。
撮影ポイント:傘の下の限られた状況で撮影するとき、GRIIIxの「クロップ」50㎜または70㎜に切替えながら撮影しています。70㎜は中望遠レンズのようになり、被写体を引き寄せた撮影ができるので、花に近づけない場合にも活躍します。「マクロモード」を合わせて使うことで背景のボケも柔らかく表現できます。
撮影ポイント:スマホと同様に、カメラ背面モニターのタッチパネルでAFを使い、ピントを置く位置を自分自身で決めます。手前と奥、どちらも撮影すると伝える意味合いの異なる写真を撮影することができます。
雨の日は園内に人影も少なく、集中して撮影できるのも魅力です。これからは、雨の日も撮影日和として楽しんでみてくださいね。
◆浜寺公園 ばら庭園
住所:大阪府堺市西区浜寺公園町
開園期間:3月16日~12月15日(閉園中は「まちの景」のみ OPEN )
開園時間:10:00~17:00(入園は16:00まで)
入園料:無料
休園日:火曜日(祝日の場合は翌日)※休園日は「まちの景」中央口も閉門
国の登録有形文化財「浜寺公園旧駅舎」のカフェで一息
撮影に没頭し、気が付けば土砂降りの大雨になってしまった夕刻。この日の終わりに、浜寺公園旧駅舎内にある、「カフェ駅舎」に立ち寄りました。浜寺公園旧駅舎は、明治時代の代表的建築家である辰野金吾氏が、同じく建築家であり、都市計画家の片岡 安(やすし)氏と1905年に大阪で設立した、「辰野片岡事務所」が手掛けた木造建築物です。柱や梁が幾何学的デザインで美しく、学術的評価も高い建物は、国の登録有形文化財になっています。現在は、地域の歴史・文化の振興の発信の場としてギャラリー、カフェ・ライブラリー、イベントホールの営業がされています。
◆浜寺公園駅旧駅舎
住所:堺市西区浜寺公園町2-232
営業時間:10:00~17:00(カフェ営業は16:00まで)
川に挟まれた都会のオアシス「中之島公園」のバラ園
翌朝は雨も上がり、都心のオアシスとして市民に親しまれている「中之島公園」を訪れました。堂島川と土佐掘川に挟まれた水辺に位置する中之島公園は、明治24(1891)年に大阪市で初めて誕生した公園です。周囲には、中央公会堂や府立中之島図書館、レトロなビルが立ち並び、川には観光船が走るなど、大阪を代表する観光地としても有名です。年末にはイルミネーションのライトアップも開催され、多くの来園者でにぎわいます。
撮影ポイント:背景や近くにある建造物をあえて取り入れて撮影しましょう。園内の造形美や周囲の建物などがバラの美しさとコラボすることで、季節感あふれる思い出の写真になります。
花の美しさを引き出したいと思うとき、晴天時に気を付けておきたいのは、直射日光の当たっている花を避けることです。特に、赤やマゼンタなどの濃い色や黄色の花は、直接強い光が当たっていると、花びらに立体感がなくべったりとした色になってしまいます。できるだけ日陰に咲いている、痛んでいない花を探して撮影してくださいね。
撮影ポイント:ここでも、GRIIIxの「クロップ」70㎜に設定して前後にボケをつくり、奥行きを活かした撮影を行います。前ボケは、花びらなどをレンズにぴったりと付くほど近づいて撮影することで透けるように淡くボケます。背景のボケは、手前の花にしっかりとピントを合わせ、遠方の背景を取り入れることでぼかすことができます。
図鑑のように花ばかりをコレクションするのではなく、景観とともに花を楽しんでくださいね。
◆中之島公園 バラ園
住所:大阪府大阪市北区中之島1
開園時間:常時開園
ビジネス街にたたずむレトロな名建築
次の公園へ移動する間に、レトロ建築を散策しながら歩いてみませんか? 国指定重要文化財であり、大阪のシンボルともいえる中之島中央公会堂をはじめ、中之島公園の南側に位置する、淀屋橋〜北浜〜船場(せんば)界隈は、昔も今も商都大阪の中心地です。御堂筋沿いには、新たに建てられたオフィスビルが立ち並び、ビジネスマンが往来する姿が多く見られます。そうした街中に、時代の時を刻む美しいレトロ建築が点在しています。
大正7(1918)年に完成 赤レンガとアーチが美しいネオ・ルネッサンス様式の中之島中央公会堂
明治、大正、昭和初期に名をなした大阪商人たちが財を投じて建築した近代名建築の数々は、町の一角に異彩を放つように現れ、当時の大阪の歴史を伝える美術館のよう。ここに、あそこにと、見つけながら歩けばそれだけで楽しい散策ができます。
このほかにも淀屋橋〜北浜〜船場界隈を歩けば、たくさんの名建築に出合えます。レトロ建築が目的の散策もおすすめです。
市民のオアシス 「靭(うつぼ)公園」のバラ園
大阪のオフィス街に広がる靭(うつぼ)公園は、東西に細長い形をしており、公園の中央を南北になにわ筋が貫く形で「東園」と「西園」に分かれています。最も駅に近い、公園の東側から入ると、真っ直ぐに伸びる美しいケヤキ並木が迎えてくれます。木の下では、付近の住民やオフィスの休憩時間を過ごす人など、まさに市民のオアシスです。私自身が初めて大阪を訪れた際に一度立ち寄り、とても気に入っている場所の一つでもあります。
新緑の季節、爽やかな風が抜けていくケヤキ並木
「東園」には、国際バラ会議優秀庭園賞を受賞しているバラ園があり、園内は水辺環境とともにバラが栽培され、色とりどりに咲いていました。子どもたちの目線でも鑑賞できる低木も多く、柵もありません。階段もないバリアフリー化された園内は視界を遮るものがないことから、地域の人々に愛されていることが一目でわかります。撮影していて聞こえてくるせせらぎの音も心地よく、爽やかな庭園です。
撮影ポイント:広々とした靭公園のバラ園では、風景のように全景撮影や、スナップ撮影をするのがおすすめです。また、人物が写り込む場合には、カメラ背面モニターのタッチパネルでAF(ピント)を手前に位置させ、背景をぼかすテクニックを使い、顔を明確に写さないように工夫しましょう。
靭公園の北側に位置する「京町堀」には、おしゃれなカフェや雑貨店も多いので一度訪れてみてはいかがでしょうか。
◆靭公園 バラ園
住所:大阪府大阪市西区靭本町2-1-4
開園時間:常時開園
おわりに
大阪は、「くいだおれ」のイメージと、「街の活気と勢いのよさ」という印象が強いですが、観光地ではない場所にしっかりと歴史が刻まれ、街の発展と市民の生活を垣間見ることができます。バラ園をめぐり、香りに包まれ、歴史とふれあう優雅なひとときを大阪散策の際に取り入れてみてくださいね。