徳川家康や千利休、与謝野晶子ゆかりの地・堺市で歴史トリップ
歴史やものづくりに触れられる旅が大好きな旅色LIKESライター・長月あきです。今回は大阪市のすぐ南に位置する堺市へ行ってきました。堺市は、世界遺産の仁徳天皇陵古墳を含む百舌鳥(もず)古墳群や室町時代の南蛮貿易港、千利休や与謝野晶子ゆかりの地などとして知られ、古代から近代まで、多くの歴史遺産を有しています。かわいい路面電車「チン電」に乗って歴史散策へ。
目次
阪堺電車(チン電)で堺に向けていざ出発!
堺市へは、大阪市の天王寺駅前駅から阪堺(はんかい)電気軌道、通称「チン電」で向かいます。レトロで可愛い路面電車「チン電」については、LIKESライターの先輩であるなおさんがつい先日紹介されていました。
家康人生最大の危機、伊賀越えの出発地「妙国寺」
天王寺駅前駅からチン電で約30分、妙国寺前駅で下車し徒歩10分程でアクセスできるのが妙国寺。本能寺の変が起こった際に、家康が滞在していた場所として知られています。ここから家康人生最大の危機と言われる逃避行、「伊賀越え」がはじまります。その後、妙国寺は大坂夏の陣で焼失、江戸期に再建されたものの、第二次世界大戦の堺空襲で再び焼失します。そんな二度の大火をくぐり抜けて生き残ったのが、境内にある樹齢1100年の大蘇鉄(ソテツ)。国の天然記念物に指定されているこの蘇鉄には、織田信長を震撼させたという伝説が残っています。本堂からは、蘇鉄を背景にした枯山水の美しい庭を眺めることができるのですが、本堂内や境内の写真撮影はできません。ボランティアガイドさんが堺の歴史やお寺の由緒、明治維新期の堺事件などを丁寧に詳しく説明してくださり、宝物殿では空襲を免れた様々な史料の見学ができます。
◆妙国寺
住所:大阪府堺市堺区材木町東4-1-4
電話番号:072-233-0369
拝観料:大人400円、小・中学生200円
拝観時間:10:00~16:30(15名以上は要予約)
休業日:年末年始
堺伝匠館(堺伝統産業会館)で堺の伝統産業を知る
妙国寺前駅に戻り、徒歩すぐの堺伝匠館(堺伝統産業会館)へ。堺の伝統産業に触れられる施設です。包丁の展示販売フロアには多種多様な形状のものがずらり。2階には刃物の歴史や製造工程などが学べるミュージアムがあります。入場無料で、電車の待ち時間にでも気軽に立ち寄ることができます。堺の名産品が揃っているのでお土産を購入するのもよいですね。
◆堺伝匠館(堺伝統産業会館)
住所:堺市堺区材木町西1丁1番30号
電話番号:072-227-1001
開館時間:10:00~17:00
休館日:第3火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)※その他臨時休業あり
入場料:無料
さかい利晶の杜(さかいりしょうのもり)で茶の湯体験
妙国寺前駅から再び電車に乗って7分、宿院(しゅくいん)駅近くにある、千利休と与謝野晶子をテーマにした文化観光施設「さかい利晶の杜」へ。1階が「千利休茶の湯館」と茶の湯の体験施設、2階が与謝野晶子記念館になっています。「千利休茶の湯館」の音声ガイダンスでは、片岡愛之助さん(堺出身なのだとか)が千利休の声を担当されており、穏やかで重厚な雰囲気の声についつい引き込まれました。
また、立礼茶席や本格的な茶室があり、茶の湯の体験ができます。私は立礼茶席でお抹茶と和菓子をいただきました。立礼茶席は当日チケットを購入できますが、本格的なお茶室でのお点前でお抹茶がいただける体験は事前予約が必要になるようです。
◆さかい利晶の杜
住所:大阪府堺市堺区宿院町西2丁1-1
電話番号:072-260-4386
開館時間:<千利休茶の湯館、与謝野晶子記念館、観光案内展示>9:00〜18:00 ※千利休茶の湯館、与謝野晶子記念館の入館は17:30まで、<茶の湯体験施設>10:00〜17:00
休館日:<千利休茶の湯館、与謝野晶子記念館、茶の湯体験施設>第3火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始<観光案内展示室>年末年始
料金:<千利休茶の湯館、与謝野晶子記念館、さかい待庵外観自由見学>大人300円、高校生200円、中学生以下無料 ※茶の湯体験「立礼茶席」は大人800円
与謝野晶子幼少期の遊び場「開口(あぐち)神社」
さかい利晶の杜から徒歩10分程の開口(あぐち)神社。奈良時代に神功皇后により創建されたとされる神社です。与謝野晶子の生家にほど近い場所にあり、晶子が幼少期によく遊んだ場所だそう。それほど大きな神社ではありませんが、晶子の出身校、堺市立堺女学校(現・大阪府立泉陽高等学校)の発祥の地の記念碑や、晶子の開口神社を詠んだ歌の歌碑があります。
開口神社のおみくじは晶子の歌で表される「晶子恋歌みくじ」。和柄の筒の中に、晶子の歌が書かれたおみくじと水引きが入っていてかわいい!(ちゃんと歌の意味も書かれています)
◆開口神社
住所:大阪府堺市堺区甲斐町東2丁1-29
電話番号:072-221-0171(9:00~17:00)
氷くるみ餅でクールダウン
宿院駅のお隣、寺地町駅から徒歩3分の鎌倉時代末期創業の老舗和菓子店「かん袋」へ。青大豆で作られた餡に、お餅をくるんで食べる「くるみ餅」が有名なお店です。くるみ餅は、室町時代、堺が勘合貿易の港町として栄えていた頃、明(当時の中国)から輸入した農作物を利用して作り出されたのがはじまりだとか。明治時代からは、そのくるみ餅にかき氷をかけた「氷くるみ餅」が提供されています。かき氷のお陰で甘い餡もさっぱりいただけます。くるみ餅はお持ち帰りもできますが、賞味期限が短いので注意してくださいね。
◆かん袋
住所:大阪府堺市堺区新在家町東1丁目2番1号
電話番号:072-233-1218
営業時間:10:00~17:00(店内飲食受付16:45まで)※売り切れ次第営業終了
定休日:火、水曜日(祝日は営業)
徳川家康は夏の陣で討ち死にしていた!? 南宗寺(なんしゅうじ)
寺地町駅からさらに一駅南、御陵前駅から10分ほど歩いた場所にある南宗寺(なんしゅうじ)。三好長慶が父・元長の菩提を弔うために建立した寺院ですが、大坂夏の陣で焼失し、現在の場所に再建されました。千利休が修行をしたといわれる寺で、境内には国指定名勝の古田織部作とされる枯山水の庭、国指定重要文化財の仏殿・山門・唐門、千家一門の供養塔、茶室などがあります。お寺は写真撮影が禁止で、写真をご覧いただけないのですが、美しい庭や天井画が見事な仏殿は一見の価値ありです。
また、南宗寺には徳川家康の墓があるという伝承があります。家康は大坂夏の陣の際、駕籠で逃げる途中に後藤又兵衛の槍に駕籠ごと突かれ、南宗寺に到着した頃には亡くなっていたのだとか。その伝承を裏付ける話として、2代将軍徳川秀忠と3代将軍徳川家光が、それぞれ堺に足を運び南宗寺を参詣したという記録が残っていること、境内に東照宮があったこと、日光東照宮に保管されている夏の陣で使われた家康の駕籠には、屋根の部分に槍で突き刺したような穴があいていることなどを、ボランティアガイドさんに教えていただきました。徳川家康の影武者説はいくつかありますが、さて真相は……。
◆南宗寺
住所:大阪府堺市堺区南旅篭町東3丁-1-2
電話番号:072-232-1654
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:大人400円、中人300円、小人200円
残暑が厳しい季節。一日乗車券でのんびり歴史散策を
歴史好きには見どころの多い堺市。レンタサイクルで、世界遺産の百舌鳥古墳群を含めた歴史スポットめぐりをするのもおすすめなのですが、暑い時期だったのと、町中を走る可愛い路面電車に乗ってみたかったので、今回は阪堺電車を利用しました。まだまだ残暑が厳しい季節、ぜひ一日乗車券を利用して、無理なくのんびりと歴史散策を楽しんでみてくださいね。