7万年分の歴史が目の前に! 福井県年縞博物館で世界一のシマシマに感動しよう

福井県

2024.02.01

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7万年分の歴史が目の前に! 福井県年縞博物館で世界一のシマシマに感動しよう

歴史やものづくりに触れる旅が大好きな、旅色LIKESライター・長月あきです。福井県屈指の景勝地「三方五湖(みかたごこ)」に世界の歴史学・考古学・地質学にとって、とても大きな意味を持つ場所があるのをご存じでしょうか。今回は三方五湖の湖畔にある、わたしイチオシの博物館、「福井県年縞(ねんこう)博物館」を紹介します。

目次

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三方五湖にある世界標準の歴史のモノサシ「年縞」

世界一のシマシマ「年縞」を学べる世界で唯一の博物館

なぜ世界一のシマシマができたのか

博物館に行くなら立ち寄ってほしい! 「道の駅三方五湖」

福井が世界に誇る、唯一無二の博物館

三方五湖にある世界標準の歴史のモノサシ「年縞」

三方五湖

出典:一般社団法人若狭湾観光連盟公式サイトより

まもなく延伸開業予定の北陸新幹線の終点「敦賀駅」。そこから車で20~30分の場所に三方五湖はあります。福井県美浜町と若狭町にまたがる5つの湖から構成される三方五湖は、湖それぞれが違う青色に見えることから、「五色の湖」と呼ばれ、国の名勝となっています。三方五湖と若狭湾を見渡せるドライブコース「レインボーライン」は絶景ドライブを楽しめる人気の観光スポットです。
三方五湖の一つ、水月湖(すいげつこ)の湖底にはシマ模様に積み重なっている※1堆積物の層があります。この堆積物のシマシマを「年縞(ねんこう)」といいます。水月湖の年縞は世界最長で、年月にして約7万年分、深さにして約45mもあり、いま現在も積もり続けているのだとか! そして、世界各地で発見された化石や遺跡がいつの時代のものか、その年代を測定するための世界標準のモノサシとなっていて、世界の考古学や地質学の研究を支えているのです。そんな水月湖の年縞を展示・研究する施設として、2018年にオープンしたのが「福井県年縞博物館」です。

※1堆積物:地表の風化によって生成された砕屑 (さいせつ) 物、火山噴出物、生物遺骸などが海底や地表に堆積したもの。

世界一のシマシマ「年縞」を学べる世界で唯一の博物館

旅色LIKES

建築家・内藤 廣氏が手掛けた建物

旅色LIKES

木の屋根と鉄骨が印象的なデザイン

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トイレの前に飾ってあった建物の設計図

年縞博物館は、縄文文化に触れられる公園「縄文ロマンパーク」内にあります。博物館の建物自体も周囲の自然豊かな風景と調和して美しく、建築関係の賞を受賞していることから、建築に関心のある方が来ることもあるそう。
受付を済ませると、まずは年縞がどのようなものか、水月湖の年縞からわかることを映像で紹介する「年縞シアター」に案内されます。美しい映像が正面だけでなく床面にまで映し出され、予想外の迫力にふわっとした浮遊感を覚えました。映像を見たあとはスタッフさんが年縞についてわかりやすく解説してくれます。なぜ水月湖にだけこのような年縞ができたのか、どうして水月湖にこのような年縞があることがわかったのか……などなど、興味深い話ばかり。素人の質問にもわかりやすく答えてくれました。

福井県年縞博物館

水月湖年縞 7万年ギャラリー

福井県年縞博物館

黒い層と白い層セットで1年分の年縞。およそ7センチで100年分になる

福井県年縞博物館

ところどころに、手書きで注釈が。QRコードで音声ガイドを聞ける

福井県年縞博物館

1586年に豊臣秀吉が直面した大地震の年の年縞。大量の堆積物が一度に積み重なっているのがわかる

2階に上がると、湖底から掘り出した年縞をステンドグラス状に加工し、原寸大で横にして展示した「水月湖年縞7万年ギャラリー」があります。この年縞ステンドグラスを作れる技術を持つ方は、世界に一人しかいないそう! 展示されている年縞がどのように掘り出され、どのようにステンドグラスに加工されたのかは、先ほどスタッフの方に説明していただきましたが、実際に年縞のステンドグラスを目にすると、気の遠くなるような技術者・研究者の努力と、希少で高度な技術に改めて驚きます。

福井県年縞博物館

水月湖年縞でたどる人類と環境の年表

福井県年縞博物館

年縞を歴史のモノサシとして、人類と環境の歴史が7万年分紹介されている

年縞ステンドグラスの展示の裏側には、水月湖の年縞を歴史のモノサシの目盛りとし、約7万年の人類と環境の歴史を解説したパネルがあります。約20万年前にアフリカで誕生したホモサピエンスは、約7万年前から世界各地へ生存の場を広げたとされていますので、水月湖の年縞は人類の歴史を網羅していることになります。

なぜ世界一のシマシマができたのか

福井県年縞博物館

年縞ができる仕組みを映像で解説

福井県年縞博物館

ボーリングに使用された道具。中には100円均一やホームセンターで入手した道具も!

福井県年縞博物館

年縞に含まれている花粉の模型

館内には、なぜ水月湖にこれほどの年縞が形成されたのか、その仕組みを映像で学べるコーナーや、実際の※2ボーリング調査で使われた道具の展示、世界や日本各地の年縞の紹介、地層に含まれている花粉の拡大モデルなどが展示されています。年縞に含まれる花粉や火山灰などからは、かつての気候の様子などを知ることができ、環境変動を把握できるのだとか。
「水月湖の秘密」と名付けられた映像やスタッフの方のお話によると、水月湖に年縞ができた理由は大きく三つ。一つ目は、流れ込む大きな河川がなく、周囲が山に囲まれている地形のおかげで、水の動きが少なく、水がかき混ぜられることないから。二つ目は、水深が深いため湖底近くには酸素がなく、堆積物をかき乱す生物が生息できないから。そして三つ目は周囲の断層の影響で、毎年少しずつ湖が沈降し水深が年々深くなっているため、堆積物が積もっても浅くならないからです。これだけの条件が偶然に重なったのと、四季がはっきりしている日本の気候が、年縞の形成に適していることもあり、水月湖は世界に類を見ない“奇跡の湖”とされていることがわかりました。

※2ボーリング調査:穴を掘って地盤の状況や地層境界の深度などを調べる際に用いられる地盤調査方法のこと。

◆福井県年縞博物館
住所:福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1縄文ロマンパーク内
電話:0770-45-0456
開館時間:9:00~17:00(※最終入館~16:30)
休館日:火曜日、12月29日~1月2日 ※火曜日が休日の場合は翌日休館、GW期間および夏休み期間は休まず開館、施設メンテナンス等のため臨時休館あり)
入館料:一般500円、小中高生200円

福井県年縞博物館 公式サイト

博物館に行くなら立ち寄ってほしい! 「道の駅三方五湖」

道の駅三方五湖

年縞をイメージした「うそば」。「うそば」は福井県若狭で生まれたもので、表はうどん裏はそばの麺。食感はもちもちしていて、細くてコシが強め。

道の駅三方五湖

年縞マスキングテープ

道の駅三方五湖

年縞をイメージしたクッキー(プレーン、いちご、紅茶が交互に入っている)

道の駅三方五湖

年縞をイメージしたようかん

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道の駅三方五湖の野鳥観察棟

縄文ロマンパークに隣接している道の駅三方五湖には、水月湖の年縞にちなんだ商品などもあります。わたしも年縞をイメージした「うそば」とクッキーを買いました。また、直売所と後述の野鳥観察棟には博物館の入館割引券(通常価格から2割引き、2026年3月31日まで有効)が置いてありました。博物館はJAF会員対象の割引はありますが、会員でない方は先に道の駅に立ち寄ると良いかもしれません(わたしは先に入館してしまいました……)。
道の駅敷地内にある、湖に面した2階建ての野鳥観察棟もおすすめです。窓際に望遠鏡や双眼鏡が並べられ、屋内から湖に飛来している野鳥のバードウォッチングができます。望遠鏡を使うと、たくさんの鳥の動きが手に取るようにわかり、ついつい見入ってしまいますよ。

◆道の駅三方五湖
住所:福井県三方上中郡若狭町鳥浜第122号31番1
営業時間:9:00~17:00
定休日:第一火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始 ※7~8月無休

福井が世界に誇る、唯一無二の博物館

年縞博物館は世界の考古学・人類史研究を支える水月湖の年縞の価値を、世界に発信する貴重な博物館です。「年縞」という言葉すら知らなかったわたしは、水月湖の年縞の現物を目にして、自然の奇跡や、研究者の方々の気の遠くなるような根気と努力に圧倒され、感動を覚えました。博物館の規模としては決して大きくありませんが、日本が世界に誇れる博物館の一つなのではないでしょうか。敦賀・若狭エリアを旅する際には三方五湖と合わせて、ぜひ立ち寄ってみてください!

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#博物館 #北陸新幹線 #歴史旅 #若狭 #三方五湖 #北陸を元気に

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時間を見つけては、歴史や伝統工芸などに触れられる旅スポットを巡っています。ものづくりの技術や創意工夫を知る産業観光も大好き。東海・関西エリアを中心に、歴史やものづくりを身近に感じられる旅体験をお届けします。近年は道の駅とかわいいおみくじ、地サイダーがマイブーム。

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