初詣前に知りたい! これ、本当に合ってる!? 神社の参拝マナー
旅のプロ=プランナーが旅の行程・実例を紹介する「みんなの旅プラン」でプランナーを務める、旅エッセイストの吉野りり花です。日本各地の神社仏閣で受け継がれる、食べると御利益があるとされる食べ物に興味を持ち、「まじない食」と名づけて取材しています。「みんなの旅プラン」では、厄除招福の「まじない食」をテーマに、おすすめプランを提供しています。今回は知っておきたい神社の参拝マナーについてご紹介します。
Text&Photo: 吉野りり花
目次
神社に参拝する機会が増えるお正月。参拝のマナーが気になる方も多いのではないでしょうか。
私は現在、各地の神事や民俗行事を取材することが多く、過去に神社で巫女としてご奉仕していた経験もあります。その経験から、覚えておきたいポイントをご紹介します。
神社は神道の神様が祀られている所です。マナーと聞くとちょっと堅苦しく感じるかもしれませんが、神様を敬う心や、神様への礼儀をあらわすための形が作法だととらえてみて下さい。
清らかな気持ち&清潔な服装で
神道で大切にされる言葉に「浄明正直」というものがあります。「じょうみょうせいちょく」または「じょうめいせいちょく」と読み、「きよき、あかき、ただしき、なおき」の意。わかりやすい言葉になおすと、清らかで明るく正しく素直な心でいることです。神職や巫女は、日々この「浄明正直」を心がけるよう教わります。一般の方の参拝も基本は同じです。ネガティブな気持ちではなく、清らかで明るい気持ちで参拝できるといいですね。
参拝の服装に決まりはありませんが、清浄を尊ぶ神社に行くならば、やはり清潔な服装が望ましいです。目安としては、目上の方を訪問する時のような服装を思い出してもらうと分かりやすいと思います。普段はカジュアルな服装で過ごしている方でも、目上の方を訪ねる時にはあらたまった服装で伺いますよね。特に、拝殿などに上がってご祈祷を受ける「昇殿参拝」をする場合は、より御神前に近づくことになりますので、スーツやジャケットを着用するなど、身だしなみを整えて臨むとよいでしょう。
寺院では、露出の多い服装や、動物の殺生を想像させる毛皮などは避けた方がよいとされます。
鳥居をくぐる前に一礼
神社の入り口にある鳥居の先は神様のいらっしゃる御神域なので、くぐる前に軽く一礼をしましょう。参拝を終えて鳥居から出た後も、向き直って軽く一礼します。鳥居がいくつもある場合は、鳥居ごとに一礼します。また、御神前に向かう参道の真ん中は「正中」と呼ばれ、神様の通り道とされます。歩く時は真ん中を避けて歩くとよいとされます。
寺院の場合は、鳥居に代わるものに山門があります。宗派によってもさまざまな違いがあると聞きますが、やはり寺院でも山門をくぐる前に合掌し、軽く一礼してから入るものだそうです。その際、敷居を踏まないように気をつけて!
手水の柄杓に口をつけてはダメ?
神道では清らかであることを大切にします。神社の入り口に設置されている「手水(てみず、ちょうず)」は、参拝の前に心身を清めるためのものです。本来は海で行った禊を簡略化したものとされます。
手水を取る際、柄杓に直接口をつけるのは誤りです。
下記の順番で行うと、柄杓に口をつけずに清めることができます。
1、右手で柄杓を持ち、柄杓に水を汲む。
2、左手に水をかけ、左手を清める。
3、清まった左手に柄杓を持ち替え、右手に水をかけ、右手を清める。
4、もう一度右手に柄杓を持ち替える。
5、左の手のひらに水を受けて、口をすすぐ。
6、最後に左手を軽く清め、柄杓の柄を立てるようにして洗い清め、伏せた状態で戻します。
実際に口に水を入れることに抵抗がある方は、口に水を含んだ動作をするだけでもかまいません。
寺院でも手水の作法は同じです。
早くお願い事をしたい? でも、ちょっと待って!
お参りの作法は、現在では「二礼二拍手一礼」が一般的です。お辞儀の深さには「礼」や「拝」といった種類がありますが、より丁寧に「二拝二拍手一拝」とするお宮もあります。また、出雲大社のように「二礼四拍手一礼」とする神社もあります。参拝する神社の作法に合わせてお参りしてください。
参拝したら、「一刻も早く願掛けしたい」と気持ちがはやる方も多いと思います。でも、まずは神様への感謝の気持ちを伝えることが大切です。お願い事をするならば、その後に。
寺院では、本堂の前で一礼した後に合掌し、お祈りをし、手を合わせたままで深くお辞儀をします。
願掛けをしない神社や、海から参拝する神社も?
神社の中には、願掛けをしないお宮もあります。以前、伊勢の神宮の内宮へ地元の方と一緒にお参りした際、「御祭神が祀られている正宮では世の中の平安の祈りや日ごろの感謝を捧げ、個人的なお願い事はしないもの。お願い事をするときには別宮の荒祭宮でね」と聞きました。
他にも、神社によっては特有の参拝マナーがあるところもあります。「土佐の宮島」と呼ばれる高知県の鳴無神社は、参道が海につながっていて、海から上陸して参拝するのが正式な参拝ルートだそうです。今でも、巡航船を使うと神社から50mほど離れた船着場から上陸でき、正式な形に近い海からの参拝も可能です。
こういった信仰は地元の方によって今も大切に守られています。お参りする際は、特有の参拝作法も知っておくとよいですね。
◆神宮(じんぐう)
住所:三重県伊勢市宇治館町1
電話番号:0596-24-1111(神宮司庁)
参拝時間:5:00〜18:00(1月〜4月、9月)、5:00〜19:00(5月〜8月)、5:00〜17:00(10月〜12月)
◆鳴無神社(おとなしじんじゃ)
住所:高知県須崎市浦ノ内東分3579
電話番号:0889-49-0674
参拝時間:自由
著者プロフィール
吉野りり花
日本の旅ライター/旅エッセイスト。日本の風景、ふるさとの祭りや民俗、郷土食や食文化のエッセー・コラムを書く。日本文学を専攻後、神社の助勤巫女、和文化業界誌の編集を経た経歴をいかし、民俗行事や伝統文化について執筆。著書『日本まじない食図鑑~お守りを食べ、縁起を味わう』『ニッポン神様ごはん~全国の神饌と信仰を訪ねて』(ともに青弓社刊)。旅のプロ=プランナーが、旅の行程・実例を紹介する「みんなの旅プラン」でプランナーを担当している。「りり花」の名はlyricalから、「日本の旅を詩的に」がテーマ。
おわりに
神社仏閣の正しい参拝マナーについて、いかがでしたか? 意外と知らない参拝方法を知って、気持ちのよい初詣を迎えたいものですね。このほか、「みんなの旅プラン」では、神社仏閣で振る舞われる開運招福の味を訪ねた「まじない食」プランを公開中。ぜひ、そちらもチェックしてみてください。