酒旅ライター・岩瀬大二さんが新酒を飲みに行きたい春の蔵4選

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2022.03.09

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酒旅ライター・岩瀬大二さんが新酒を飲みに行きたい春の蔵4選

冬から春へと季節が変わるころは、日本酒も新しい息吹が感じられる季節。そう、楽しみな新酒の登場です。酒旅ライター、ワインナビゲーターとして活躍し、「みんなの旅プラン」プランナーとしても活躍する岩瀬大二さんに、この季節ならではの、少し心を緩めて散策を楽しめる酒蔵、酒の街を紹介してもらいました。

文/岩瀬大二

目次

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そもそも新酒って?

おすすめ①高知・土佐

おすすめ②愛媛・伊予西条

おすすめ③広島・西条

おすすめ④富山・岩瀬

おわりに

そもそも新酒って?

新酒という定義は様々で、また時期としても、早いところでは仕込んですぐの10月から、少しじっくりと構えた3月ごろまでと幅広い。蔵元さんもそれぞれの思いや考え方があって、味わいも仕上げ方も違い「これが新酒」と一言では表しづらい酒です。味わいは熟成時間が短いためおおむね「フレッシュ」で「軽やか」。秋のひやおろしの季節の円熟した味わいや、香り立つ華やかさに比べて、出来立てだからこその個性や魅力を楽しむ酒と言えます。

おすすめ①高知・土佐

酒飲みの聖地・高知を代表する酒蔵『酔鯨酒造』。中でも英国のワインアワードを受賞するプレミアムラインの酒を生み出す醸造所が『土佐蔵』です。まだオープンして3年ほどと新しく、働く蔵人が誇りをもって、世界に喜ばれる酒をつくるという思いのもと、最新鋭の設備を備えています。その思いを訪れた人に伝えるために、丁寧なガイドツアー(木~日、1日3回)、素敵なテイスティング空間、ショップなどもあり、ゆっくりと楽しむことができます。海のイメージも強い高知ですが山林面積の割合は日本一。ガーデンに腰かけて、ほろ酔い気分で眺める緑、田園風景、そして山から吹く、春先、まだ少し冷たい風を頬に感じれば、「豊かな自然と蔵人の気持ちが重なって日本酒は生まれる」ということが確認できます。

おすすめの酒は『純米吟醸 吟麗 しぼりたて』などの生酒。豪快な高知の伝統の酒というルーツはありながら、フレッシュで瑞々しく、うすはりのワイングラスが似合います。ローカル線の駅からバスを乗り継いで、その最寄りのバス停からでも徒歩15分。お酒を控えてくれる友人とドライブもいいのですが、この時期、あえて風景と風の中で歩くのもいいかもしれません。

酔鯨酒造 土佐蔵
住所:高知県土佐市甲原2001番地1
電話:088-856-8888

おすすめ②愛媛・伊予西条

JR予讃線特急で高松から1時間30分、松山からは1時間。伊予西条(西条市)は、美しく柔らかい水の街。標高1982m、西日本最高峰であり、日本七霊山に数えられている石鎚山からは、高知へと続く水質ランキング全国1位にも選ばれた “仁淀ブルー”として知られる仁淀川へ、同時に西条の街へも地下水として注がれます。口当たりが良く、まろやかな味で名水100選にも選定されているこの水が「うちぬき」という自噴水からあふれる姿が西条名物。柔らかい伊予の春の日差しにきらめき、心癒してくれる素晴らしい水の風景です。

美味しい水があれば、そこにあるのは酒づくり。伊予西条には5つの酒蔵があります。春におすすめは『成龍(せいりょう)酒造』の『伊予賀儀屋』から、地元愛媛県産の酒米「松山三井」を使った『無濾過 純米 生原酒』のラインアップ。酒本来の味わいを大切にするため全て「無濾過」で仕上げる酒蔵の逸品。西条の癒しの水とともに心に陽だまりをつくってくれるような感覚です。

成龍酒造
住所:愛媛県西条市周布1301-1
電話:0898-68-8566

おすすめ③広島・西条

同じ地名が瀬戸内海をはさんで広島にも。広島から新幹線で一駅、山陽本線では35分の東広島市の西条にもまた、美しい水があります。中国山地・龍王山の伏流水が井戸水となって湧き出る名水の地で、今でも井戸から汲み上げて仕込み水として使われています。西条は京都・伏見、兵庫・灘とならぶ三大醸造地に数えられますが、灘は硬水でキレ味のいい辛口になり、この地では中軟水によりロあたりが柔らかく、芳醇、まろやかなうま味となります。

ここで尋ねたいのは『加茂鶴酒造』。もうすぐ150周年を迎える老舗。「四杜氏四季酒」という4人の杜氏が季節ごとに醸す酒の春バージョンである『純米しぼりたて』は西条らしい柔らかさ、豊潤さがありながらもフレッシュな香りと味わいが楽しめます。街並みは散策スポットとしても魅力たっぷり。赤い煉瓦の煙突と白と黒の海鼠壁が立ち並ぶ酒蔵通りは、ありし日の活気を伝えるノスタルジックな映画のロケ地のような趣です。

加茂鶴酒造
住所:広島県東広島市西条本町4番31号(本社・醸造蔵)
電話:082-422-2122(代表)

おすすめ④富山・岩瀬

春の早い西日本。一方で、まだ冷涼さが残る北陸の春もまた魅力的。富山駅からトラムでふらりと行ける港町・岩瀬エリアへ。富山を代表する酒蔵『桝田酒造』で、世界の名ワインメイカーやウィスキーブランドとのコラボレーションでも話題の『満寿泉』はぜひ味わいたい。北前船で活況を呈したころの豪商の古民家を活かしたテイスティングルームには定番、レアから季節限定品もずらり。

春の芽吹きを思い起させる『MASUIZUMI GREEN』。ワインでおなじみのローヌ地方のワイン酵母で醸された純米生酒で、生酒らしい若々しく清々しい香りと、白ワインらしい甘酸っぱい酸や果実味が心地よくエキゾティック。冷涼でも春めくこの季節との相性は素晴らしいものがあります。岩瀬は端から端まではわずか10分ほどの古く静かな街並みですが、一歩足を踏み入れると、富山が誇る器作家のアトリエ、星付きや富山を代表するレストラン、クラフトビール工房&バー、町屋をリノベした宿などがひしめいているという不思議な場所。時代を行ったり来たりしながら、いつのまにか豊かな時間が過ぎていきます。

桝田酒造
住所:富山県富山市東岩瀬町269番地
電話:076-437-9916

※現在、新型コロナウィルス感染予防対策など、蔵見学、試飲などに制約がある場合があります。見学可能スケジュールなど、詳細は公式サイトなどでご確認ください。

おわりに

新酒は、その軽やかさや瑞々しさで気持ちをほがらかに、明るくしてくれる酒。微発泡であることも多く、生き生きと快活な気分にもしてくれます。まだ少し寒さの名残も風の中に感じられるけれど、それもまた春旅の良さ。酒蔵でいい酒、街歩きでいい春の時間。生きる力に溢れた、さわやかな酒を味わって、春の陽気と風を感じれば、きっと気持ちもふわっと上がっていくことでしょう。

◆岩瀬大二

ライター/酒旅&ワインナビゲーター/MC。守備範囲は「赤提灯からレッドカーペット」、「新橋から世界のワイナリー」まで。全国の酒場、各国のワイナリーを巡り、その魅力や行間を伝えるライター業を軸に、酒やフードにちなんだイベントのプロデュース、演出、MC/DJとしても活動。 シャンパーニュ専門サイト『シュワリスタ・ラウンジ』編集長、シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。
公式サイト:http://daijiiwase.jimdofree.com

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