『宿泊者の「売ってほしい」から生まれたドレッシング』にまつわるストーリー
創業当時から作られるホテルオリジナルのドレッシング。「野菜をもっとおいしく食べられるように」という思いから開発されたこちらは、多くの宿泊者から「家でも食べたい!」という声が頻出するほどの人気商品です。
目次
各国を旅した総料理長が、空間も味も“一番優れたもの“をセレクト
長野県山ノ内町にある奥志賀高原。ウインタースポーツだけでなく、避暑地としても名を馳せるこのエリアの奥、ブナの原生林や白樺に囲まれた自然豊かな場所にホテルグランフェニックス奥志賀はあります。
舌の肥えた宿泊者を満足させるレストランが、和食、中華、そしてイタリアンの3つ。その全ての味を決める総料理長であり、ホテルの代表取締役社長、そしてこのドレッシング開発者でもある田島和彦さん。
22歳の時から5年間スイス国に渡り現地商社に勤務していたご経験を持つ田島社長。各国で出会った“一番優れたもの”を開業時に集めたんだとか。レストランで提供するメニューに関しても質を落とさないよう、現在も東京とホテルを一か月に何度も往復し、試食を行っているそうです。
人々に愛されるドレッシングは、スイスで出会った「醤油」から始まった
田島社長のこだわりが詰まったものといえば、宿泊客からも絶大な人気を得ている「野菜を野菜で食べるドレッシング」。ホテル内にあるイタリアンレストラン「La Stella Alpina(ラ・ステラ・アルピーナ)」で創業時から提供されており、社長がスイスで出会った “醤油”からインスピレーションを受けたと言います。
「スイスに住んでいた時、たまたま日本の醤油を見つけてね。発酵しているから味に深みがあって、こんなに素晴らしいソースは、他にはないなって思ったんです」と、日本が恋しくなっていたのかなと前置きをしつつ、当時を振り返る田島社長。この時、日本食のすばらしさを改めて実感したと言います。
「あの時は、サラダと言うと、オリーブオイルとビネガー、塩コショウのシンプルなものばかりで。他にはないのかと思っていた時だったんです。だからアパートの方にミキサーを借りて、セロリ、たまねぎ、にんじん、それに少し醤油を入れてみたら、すごくおいしくて。試食した友人たちから“もっと作ってくれ”と頼まれたりもしましたよ」と話してくれました。現在もホテル内のレストランで使用しているこのドレッシングは、“日本の醤油”と出会ったからこそ生まれた、奇跡のドレッシングでもあったようです。
ホテルの創業当時から愛されたドレッシング。宿泊者の「売ってほしい」を実現するために
“優れたもの”を追い求めた田島社長がスイスで考案したこのドレッシングに改良を加え、ホテル創業時から、作り方を変えずに提供を続けています。
原材料になる野菜は、発案当時の材料でもあるセロリ、たまねぎ、にんじんの3種類。しかも55%が野菜というから驚き。傷みやすいセロリは茎の部分を丁寧に下処理し、本来の食感を楽しめるようにすり潰さず、かといって食べにくくないような大きさに加工しているそうです。素材のうま味や栄養を壊さないよう、加熱せずに作るのがこだわりのひとつ。
ドレッシングに用いるのは、もちろんその時“一番のもの”。今でも市場に足を運び、目利きの技術を磨く田島社長から見ても、選ぶ食材の産地はほとんどが長野県産になるそうです。さらに、時期などの変化に合わせて塩や酢を微調整し、常に最高の味を出しているそうです。それだけこだわって作られたドレッシングは、瞬く間に人気となり宿泊者から「ドレッシングだけでも売ってほしい」という声が頻出し、商品化することに。非加熱にこだわったため、商品化にはかなりハードルが高かったそう。提供している味と遜色がないよう、試行錯誤を繰り返しながら、およそ4年前に商品化を果たしました。
現在は、ホテルの地下にある工場で約6時間かけ、ひとつの寸胴で64本分のドレッシングを製造しています。大量生産はできないものの、“一番優れたもの”にこだわったホテルの売店の中で人気ナンバーワンの商品として君臨している至極のドレッシングです。