【バーチャル大阪】自宅で大阪観光! メタバース空間で、目の前の仏像にご挨拶
メタバースとは、「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を組み合わせた造語で、インターネット上に作られた仮想空間のことです。言葉を耳にする機会は増えましたが、実際に触れたことがある人はまだまだ少ない未知の世界のはず。今回は、週に3日以上バーチャル空間に足を運んでいる私・編集部イシダがおすすめする「バーチャル大阪」について、監修の佐久間洋司さんにお話を伺いました。「バーチャル大阪」とは、インターネット空間に広がる大阪の街。歴史的建造物が仮想空間に再現され、誰でも・自由に旅することができます。「リアル旅」が好きな人たちにとって、「バーチャル旅」は真逆の体験に思えるかもしれませんが、建物の細部まで見えたり、普段は公開されていない仏像を目の当たりにできたりとバーチャルならではの魅力が盛りだくさん。仮想空間ならではの新しい体験ができること間違いなし!
目次
佐久間洋司(さくまひろし)さん
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)大阪パビリオン推進委員会 ディレクター、都市連動型メタバース「バーチャル大阪」監修。アバターやエージェント(バーチャルビーイング)の研究に取り組む。大阪大学 グローバルイニシアティブ機構 招へい研究員、ムーンショット型研究開発事業 ミレニア・プログラム チームリーダーなどを歴任。日本オープンイノベーション大賞 文部科学大臣賞などを受賞。
バーチャル大阪とは?
2025年に開催する大阪・関西万博に向けて、「大阪の都市魅力」を国内外に発信するためにできた、ユーザーと共に作る都市連動型メタバースです。2021年12月のプレオープンを経て、2022年2月に本格始動。梅田スカイビルなどの実在する建造物や街並みが仮想空間に表現され、アバターを介して自由に観光できます。リアルタイムで世界中の人とコミュニケーションを取ったり、1人でのんびり楽しんだり。スマートフォンやパソコンから誰でも・気軽に・入場無料で参加できるのも大きな特徴です。
バーチャル大阪観光マップ
「エントランス」
ど真ん中にそびえたつ巨大な太陽の塔。近づいて見たり、遠くから眺めたり、色んな角度から楽しめます。
「新市街エリア」
大阪城や梅田スカイビル、海遊館など大阪市内の代表的なランドマークを散策できます。ハロウィンイベントや万博に関連したイベントなどを定期的に開催中。
「今昔街(こんじゃくがい)」
大阪府富田林の寺内町を歩いて散策したり、観心寺や金剛寺で参拝したり。歴史ある建築物を観光できるエリアです。大阪の街を歩きながら、妖怪捕獲ゲームにも挑戦!
早速、佐久間さんにお話を伺います!
――バーチャル大阪を作るときにこだわったことはありますか?
大阪の魅力を「抽象化」して再現することです。特定の地域をそのままバーチャル化するのではなく、重要な建物や特に感じていただきたいものを集めた、ダイジェストのような空間を目指して作っていただいています。実際には歩いて1時間かかる距離の観光スポットも、できるだけ違和感のない形でくっつける。そこに遊びに来るだけで、そのエリアの魅力が詰まった場所に遊びにいけるのは、バーチャルだからこそできる魅力だと思います。
実際には見られない近さで仏像を拝める 今昔街の秘密
――移動時間を気にせず観光できるのは大きな魅力ですね! 他にも“バーチャル大阪だからこそできる”ことってありますか?
本来見えるはずのないところまでご覧いただけるのは、バーチャル大阪だからできることだと思います。例えば、新市街エリアにある梅田スカイビルは屋上周りまで登れたりしますし、金剛寺では障子越しでしか見ることができない大日如来像を近くで拝めます。観心寺の如意輪観音菩薩像(にょいりんかんのんざぞう)も不思議な仕掛けで拝観できます。今昔街は大阪の歴史や文化が詰まっているので、旅好きな読者の皆さんに興味を持っていただけるんじゃないかと思っています。
――歴史や文化が好きな読者様にはぜひ、遊びにいってほしいです! その他、今昔街にはどんな魅力があるんですか?
河内(かわち)で有名な金剛寺と観心寺は、それぞれ離れた場所に位置しているのですが、バーチャル空間だと向かい合うように近くにあって、不思議な光景が楽しめます。両方のお寺さんもご面識が深かったりしてご快諾いただきました。その中でお参りができるのは、河内ならではの雰囲気につながっていて、「バーチャル観光」の新しい魅せ方ではないかなと思います。
――河内エリアの中でも、この2つのお寺を選んだ理由はありますか?
河内の魅力を伝えるには、どこを抽出すればよいだろうと考えた結果、これまで取り組めていなかった文化や歴史を中心に表現しようという話になりました。その中で選ばれたのが観心寺と金剛寺です。実際のお寺や神社を配置しているバーチャル空間は珍しいし、そもそもそういった神聖なものを再現してよいのだろうか? と心配していたのですが、嬉しいことにどちらのお寺も新しい取り組みに寛容にお応えいただきました。視察に伺った際、ご住職の方から仏像を撮影して帰っていいよとか、動かした方が面白いんじゃないかというご提案までいただきました。バーチャル空間でのトライを好意的に捉えてもらえるのは、大変ありがたいことだと感じています。
大阪らしい「やってみなはれ」の精神
――バーチャル大阪を作る上で、大阪だからできたことはありますか?
企画の提案から動き出すまでの早さは、大阪の「やってみなはれ」精神があってこそだと思います。バーチャル大阪は、大阪・関西万博のために開かれた有識者懇話会で、万博に向けたバーチャルコンテンツを作っていくべきじゃないか、と知事・市長に提案させていただいたことが始まりです。バーチャルの部会を作って調査や検討をしたのですが、『これ、来年からやった方がいいんじゃない』という市長の言葉で、翌年には万博のバーチャルコンテンツに先立って、バーチャル大阪の公募をすることになりました。その後は受託事業者のKDDIと博報堂、吉本興業にご尽力いただいています。普通なら検討するだけでも2年以上かかるところを、まずはやってみて、どんどん改善していけているのは大阪の強さだと思います。
バーチャル大阪とリアル旅の未来
――現実世界の旅とバーチャルの旅は、今後どのように交わっていくと思いますか?
一緒にバーチャル大阪を遊んだり、作ったりしていくことが、新しい旅先としての"大阪"を作っていくのではないかと期待しています。少し歩くだけで様々なものが見られる抽象化、というのは今昔街などで上手く表現できました。だからこそ、次は違う仕組みのことをやらないといけません。私たち1人1人が思う大阪の良さを集めることができれば、新しい大阪の魅力が創発するはずです。今後は、ユーザーの皆さんからも『大阪ってこういう場所もあるよね』とか『こういう魅力的な要素があるよね』という意見を集めながら共創していきたいです。
――ユーザーの皆さんの想いが、これからの大阪を作っていく。とても素敵ですね!
例えば、観光地としてリストアップされていない場所でも、地元の憩いの場になっていたり、散歩道として有名な道があったり。大阪に住んでいるからこそ感じる声を集めていくと、まだまだ知られていない大阪の魅力が浮き彫りになってくると思います。それを次のエリア拡張へとつなげていきたいですね。
おわりに
今後も、大阪・関西万博に向けてエリア拡張予定のバーチャル大阪。各エリアの魅力をぎゅっと集めた空間で観光できるのは、他にはない大きな魅力! 歴史が好きな方や気軽に観光したい方、これから実際に大阪へ訪れる方にもおすすめです。1人1人の意見がバーチャル大阪を育てます。まずは体験してみてください!