【長崎さるく】丸山遊郭は上から見られるのか? 新旧歓楽街をぶうらぶら。
旅色LIKESライター・長月あきさんの名古屋・中村遊郭の記事に触発されて、旅色LIKESメンバーのおんりさんがご自身の地元・長崎の丸山遊郭も上から見られるのか気になり、思案橋(しあんばし)界隈を※さるいてみることに。2月に「長崎ランタンフェスティバル」を控える長崎市、今回のさるくエリアとフィスティバル会場は徒歩10分ほどなので、イベント参加ついでにいかがでしょうか。
※さるく:「~して回る」という意味の長崎弁。
目次
思案橋の電停(停留所の意)を降りたところからスタート
長崎市の丸山町にある花街「長崎丸山」は、「江戸の吉原」「京の島原」と並ぶ、3大花街のひとつ(諸説あり)で、映画「長崎ぶらぶら節」の舞台になったことでも有名です。丸山遊女は、外国人隔離居住区の唐人屋敷やオランダ屋敷(出島)への出入りを許されており、外国人と交流があったところが他の遊郭にはない特徴といえます。
丸山町にある「思案橋」は、戦前、花街に「行こうかもどろうか」思案したことからその名がついたそう。今でもこのエリアは長崎の夜の繁華街として知られ、飲食店や飲み屋、スナック、BARなどがぎゅうぎゅうと並び、夜は呼び込みの人なんかも立っています。未成年の頃は「思案橋界隈は、女の子が一人でうろついたらダメ」と親から言われたりしたものです。
思案橋をまっすぐ行くと、長崎カステラでお馴染みの「福砂屋本店」が見えてきます。歓楽街でありながら、昼間は修学旅行生にも人気のスポットでもあります。
福砂屋の右手の電柱のところに、柳の木が1本あるのが見えますか? 「見返り柳」と言われ、花街へ足を運んだ人々が、ここで振り返り丸山遊女との別れを惜しんだとされることからその名がついています。「見返り柳」の根元には、「思切橋跡の石碑」もあります。花街へ繰り出す決意を固め、昔このあたりにかかっていた「思切橋」を渡り、朝には遊女との別れを惜しんで振り返ることからこの名がついたとか。石造りの丸山町交番が見えてきたら、このあたりが「山の口」と呼ばれていた花街の入口です。
※丸山遊郭は昔「やま」と呼ばれていた。
◆福砂屋本店
住所:長崎県長崎市船大工町3-1
電話:095-821-2938
営業時間:9:30〜17:00
定休日:水曜日
多くの料亭と検番がいまもなお残る
レトロな丸山町交番と丸山公園の間の道を歩いていくと、突き当りに「史跡料亭 花月」が見えてきます。もともと丸山随一の太夫屋「引田屋(ひけたや)」の庭園内に茶屋として造られたのが始まりといわれている花月。「引田屋」が廃業した後も、全国的にも珍しい史跡料亭として残り続け、今では結納や結婚式なども行われる格式高い料亭となっています。数々の文人墨客に愛され、龍馬の刀傷があることでも有名です。
長崎名物の卓袱(しっぽく)料理(大皿に盛られた料理を各自がとり分けて食べる、中国の食事様式をとり入れたもの)も楽しめますし、花月の利用者限定で、引田屋ゆかりの資料を集めた「集古館」や立派なお庭やお部屋の数々も見学できるので、是非お立ち寄りください。
花月から左へ曲がって行くと、今度は右手に※「長崎検番」(旧 松月楼)が見えてきます。全盛期にはたくさんあった検番も、今では九州にあるのは博多券番と長崎検番だけだとか。長崎検番は、長崎市民にとってはわりと身近な存在で、検番に所属する芸子さんが長崎くんちで踊りを奉納したり、結婚式やパーティー、観光イベントでよばれて芸を披露したりしています。新しく芸妓さんが入ると、ローカルニュースになるほどお馴染みの存在です。
※検番…芸者屋を管理する事務所であり、また、芸者さんが踊りや三味線の稽古をする場所。
長崎検番を過ぎると、だんだんと坂の街・長崎らしくなってきます。突き当りの階段の上に見えるのは、「料亭青柳」(旧 料亭杉本家)。このあたりが丸山遊郭の東端だったそう。ここから道幅が狭くなり、両壁が高くそびえるような感じがあちこちで見られます。花街の名残だと思われます。道が狭く入り組んでいて迷路のよう。探検するにはおもしろいけど、遊女が逃げないよう隔離されていたと思うと、ちょっと複雑な気持ちになります。
ここらへんの民家にはまだ昔の妓楼の跡を残した建物も多く残っています。昔の風景を思い描きながら、探検気分でぶらぶら散策していると「中の茶屋」が見えてきました。
長崎ぶらぶら節で唄われた茶屋と天満宮
「中の茶屋」は、遊女屋「筑後屋」が設けた茶屋で「花月楼」とともに人気があったそう。「長崎ぶらぶら節」にも
♪遊びに行くなら花月か中の茶屋 梅園裏門たたいて丸山ぶうらぶうら ぶらりぶらりと云うたもんだいちゅう♪
とうたわれたほど。現在は、カッパの絵で有名な長崎市出身の漫画家「清水崑展示館」となっています。展示館は有料ですが、庭園のみの見学は無料です。「中の茶屋」をゆっくりと見学したら、先ほどの「長崎ぶらぶら節」にも出てきた「梅園」へと向かいましょうか。「梅園」とは「梅園身代天満宮」のこと。
◆中の茶屋
住所:長崎市中小島1-4-2
電話:095-829-1193(長崎市文化財課)
営業時間:9:00~17:00
定休日:毎週月曜(祝日を除く)
料金:清水菎展示館100円
「梅園身代り天満宮」は、昔から「身代わり天神」と親しまれ、遊女や芸者さんの心のよりどころだったそう。なかにし礼の小説「長崎ぶらぶら節」の丸山芸者・愛八(あいはち)が参拝していたゆかりの神社でもあります。境内には、狛犬の口に水あめを含ませると、歯の痛みがなくなるという「歯痛狛犬」もいます。歯痛で困ってる方は、飴を袋から出して口に入れてあげてください。
梅は菅原道真公の象徴であり、「梅の種の中に天神様がいらっしゃる」という言い伝えから、梅干しの種を捨てずに収めた「梅塚」もあります。遊女や芸者が「身代」(みがわり)を(みだい)と呼び、参拝のたびに持参して納めたそう。
◆梅園身代り天満宮
住所:長崎県長崎市丸山町2-20
電話:095-823-2281(料亭 青柳)
本家じゃない、オランダ坂
丸山オランダ坂をくだれば、スタート地点近くの電車通りに出ます。電車通りあたりは昔は川で、出島の阿蘭陀(おらんだ)商館へ出向く遊女はここから小舟に乗っていったそう。「オランダ行き」の遊女が通ることから、「丸山オランダ坂」と呼ばれたともいわれています(本家の「オランダ坂」はこれではありません)。
ちなみにこの丸山界隈は路地裏が多いせいか、猫の発生率が高いです。猫好きの方は、長崎名物の「尾曲がり猫」を探してみるのも楽しいかも。
遊郭を一望できる場所は……
残念ながら中村遊郭のように上から遊郭全体を一望できるポイントはなさそうでしたが、「史跡料亭 花月」だけは、上から眺められる場所を発見しました。丸山界隈は、昔ながらの入り組んだ路地がたくさん残っていて、見どころがギュッとつまっているので、歩いてさるくには絶好の観光地です(さっと歩けば30分、ゆっくり見れば1~2時間といったところ)。長崎に何度か来たことがある方でも、じっくり見て回った方は少ないエリアではないでしょうか。是非さるいてみてください。
次回は福山雅治の※皇帝パレードも決定した「ランタンさるく」ができたらいいなぁ。
※「長崎ランタンフェスティバル」は、中国の旧正月(春節)を祝うお祭りで、その中で行われる『皇帝パレード』は、清朝時代のお正月に皇帝・皇后がそろって町中に出かけ、 民衆と一緒に新しい年を祝う様子をイメージしたパレード。
◆長崎ランタンフェスティバル
開催日程:2024年2月9日(金)~ 2月25日(日)
開催場所:長崎県長崎市新地中華街、観光通りアーケード、中央公園 他
電話:095-822-8888(長崎市コールセンターあじさいコール)
・皇帝パレード
開催日時:2024年2月17日(土) 13:30~15:00(予定)
出演者:福山雅治さん・仲 里依紗さん
コース:長崎市・出島(国指定史跡)~出島メッセ長崎 約1.3㎞
◆この記事を書いたメンバー
おんりさん(8期生)
長崎市在住。人が少なそうなところや自然が多い場所に旅行することが好き。最近興味があるのは、アフリカ、古民家、巨石、水がきれいな場所など。