出来立てビールを求めて! 山形で味わうフレッシュホップビール
みなさん、こんにちは。“酔い子の味方”ビールおねえさんこと古賀麻里沙です。日中の暑さも和らぎ、もうすっかり秋ですね。秋といえばビール界ではフレッシュホップビールが飲める時期です。8~9月に収穫した生のホップで仕込んだ貴重なビールは、ワインでいう「ボジョレー ヌーヴォー」のようなイメージでしょうか。ということで今回は、できたてのビールを求めて山形県に行ってきました。
目次
ウェディングに人気のレトロな駅舎
初めて山形県に訪れたので、ビールを飲む前にまずは歴史に触れながら山形について知ろうと思います。やってきたのは旧高畠駅。今から約100年前の1922年に開通して、のちに「山形交通高畠線」として活躍、1974年に50年余りの歴史に幕を閉じました。レトロな雰囲気があって、なんだかロマンを感じます。国の有形文化財にも登録されていて、最近ではフォトウェディングの撮影で使われることもあるそうです。駅舎は地元特産の高畠石でつくられていて、電車や線路なども残されています。高畠石は古くは古墳時代の石室に、江戸時代には民家の石塀などに使われていました。手彫りで採掘されていましたが、近年最後の職人が引退してしまったので、今では高畠石の建物はとても貴重です。
この電車が停まっている場所から約5km続いていた線路は現在はサイクリングロードになっていて、春になるとずらりと桜が咲き誇るそうです。
◆旧高畠駅
住所:山形県東置賜郡高畠町高畠1568
電話番号:0238-52-1111
まかない飯で腹ごしらえ
散策したらお腹がすいてきたので、名物の元祖鳥中華を食べに天童市へやってきました。食欲の秋ですし、空きっ腹にビールは危険ですから! ここはしっかり腹ごしらえといきましょう。天童市は温泉と将棋のまち。その歴史は江戸時代にまで遡り、天童の将棋駒産業は全国の9割以上を占めるといわれています。まちの至るところに将棋の駒が溢れていておもしろい。これからランチをいただくお店にも、ほら! お店の看板に将棋の駒があしらわれています。
名物の鳥中華。そばの優しい和風出汁に、つるつるもちもちのちぢれ麺がたっぷりと絡みます。鶏肉もプリッとしていて食べ応え抜群。このメニュー、もとはまかないのご飯だったそう。50年くらい前に「おいしそうだ、食べてみたい!」とお客さんから要望があり、一部の人にだけ提供する裏メニューになったのですが、どんどん注文があり……今では正式な大人気メニューとなりました。
◆水車生そば
住所:山形県天童市鎌田本町1-3-26
電話番号:023-653-2576
フルーツたっぷりの“映えパフェ”
山形は果物栽培も盛んですよね。まだ食べるんかい! と思ったあなた、はい、食べます。だって食欲の秋だもの(2回目)。山形といえばサクランボのイメージが強かったのですが、実はブドウも名産。ブドウ栽培の歴史はサクランボよりも古く、江戸時代初期から作られているんだそうですよ。収穫量は全国で第3位を誇り、収穫時期は6~11月で、まさに今が食べ頃です。
広大な農園の中でブドウパフェをいただきました。360度ぎっしりとブドウ! まさに“映えパフェ”。ブドウが甘くてジューシーで、緑に囲まれて味わうパフェは一段とおいしく感じました。
フレッシュホップビール解禁
さぁ、山形散策を終えて、いよいよビールタイムです。やってきたこちらの宿「湯坊いちらく TENDO SPA & BREWERY」は、敷地内に醸造所があり、できたてのビールを飲むことができるんです。私が訪れたのはちょうどフレッシュホップビール解禁の日。8月に山形県内で収穫したホップで仕込んだビールでの乾杯イベントの日でした。通常は収穫したホップを乾燥させ、粉状に粉砕して圧縮したタブレット状の“ペレット”と呼ばれるものに加工してビール造りに使用します。保管にも適しているし扱いやすいのですが、生のホップを使うとペレットと比べて香りが格段に違います。香り高い生ホップのビールを飲めるのは今この時期だけなんですよ。
では、乾杯! 柑橘系の爽やかな香りが鼻腔をくすぐります。苦味とコクのバランスがよく、とても綺麗なビールという印象。華やかな香りがするエールタイプのビールなので、魚との相性もいいんです。握りたての寿司や焼きたての鮎とのペアリングをたっぷりと楽しみました。さすが温泉旅館がつくるビール、和食によく合いますね。
◆湯坊いちらく TENDO SPA & BREWERY
住所:形県天童市鎌田本町2−2−21
電話番号:023−654−3311
ビール豆知識▶ビールの魂
ホップはビールに苦味と香りを与えてくれます。ほかにも、ビールを綺麗にしてくれたり、防腐作用があったり、泡持ちをよくしてくれたりと、ビールに良い影響を与えてくれるんです。そんな特徴から、ホップは「ビールの魂」と呼ばれます。5000年を越えるビールの歴史の中で、ホップが使われるようになったのは14世紀頃から。種類や入れるタイミングによって香りや味わいが大きく変わってくるので、ホップはビールにとってなくてはならない存在なんですよ。
ホップの力でまちを笑顔に
山形はもともとホップ栽培が盛んでした。かつては3000人のホップ農家の方がいて、全国でもトップクラスのホップ生産地だったんです。ところがその数は後継者不足により徐々に減り、今では30人ほどになってしまいました。現在、唯一残っているのは山形県白鷹町のホップ農家です。今あるホップを次の世代へ繋ぎ、山形のクラフトビールが地域のブランドとして確立されるように願いが込められてつくられたのが、今回飲んだビールです。この一杯に未来が託されているんだと思うと、飲みながら背筋がシャンと伸びる気がしますね。おいしいビールがもっともっとたくさんの人に届きますように。