連載2周年記念 写真家・浅田政志さんが選ぶ「◯◯と行きたい宿」【家族・ひとり編】
「泊まることが旅になる宿」を、写真家・浅田政志さんが切り取る写真連載「宿旅」。連載開始から約2年半で30か所以上の宿を撮影してきた浅田さんは、連載を通して宿に求めるものや考えが変わってきたそうです。印象深い宿を振り返ってもらいつつ、4つのシーン別におすすめの宿を教えてもらいました。今回は、「家族で行きたい宿」「一人で行きたい宿」です。
写真/浅田政志
目次
――まずはこれまでの「宿旅」を振り返っての感想を教えてください。
取材を通して思ったのは、宿それぞれにこんなにも個性があるんだということ。人でいうと十人十色だから、宿だと“十宿十色”っていうのかな。旅館、ホテル、ヴィラなどのカテゴリーごとの違いくらいに思っていましたが、さらにそのなかでもいろいろな個性があるのは勉強になりました。奇しくも、連載中に新型コロナウィルスが流行し始めました。「宿旅」で取り上げている、宿だけで完結する旅に注目が集まって、そういう旅をする人はこれからも増えるでしょうし、また館内や周辺だけで楽しい旅ができる宿も増えていくだろうなと思いますね。
――もともと宿でゆっくりしたい派でしたか?
……単に寝られればいいと思ってました(笑)。宿以外に目的があって、そのために泊まるくらいの優先度でしたが、「宿旅」の撮影をしていくうちに、旅行に行ったときこそゆっくりしたいと思うようになりました。その“ゆっくり”の仕方にも、宿それぞれに違って、おいしいものを食べたり、きれいな風景を見たり、日本にはいい宿がこんなにあるんだなと感じています。
――たくさんの宿を見てきたからこそ実感ですね。ではシーン別におすすめの宿を教えてください。
家族で行きたい宿 1 「王ヶ頭ホテル」(長野県松本市)
なんといってもあの絶景! 360度どこを見ても景色がいいし、日本百名山のうち41座も見渡せて、さらに美ヶ原自体も日本百名山なんですよね。そしてごはんもおいしい。夜は星空のツアーがあったりと子どもから大人まで楽しめるホテルです。
見どころは、やはり景色ですね。雲の上に泊まるというか、特別な景色はあそこでしか見られないものです。
家族で行きたい宿 2 「ツインリンクもてぎ」(栃木県茂木町)
小学生の息子と一緒に遊べそうなので選びました。カートレースはもちろん、キャンプもできたり、アスレチックもあったりと遊ぶところはたくさん。設備が揃っていて手軽にグランピングができるのもいいですよね。家族と来たら、楽しめると思います。
なによりこんなに本格的なレース場があるところはあまりないので、周回ごとに、「あのコーナーの入りをこうしよう」とか「あそこの直線を…」とか技術を極めたいですね。
一人で行きたい宿 1 「曹洞宗 福王山 正覚寺」(埼玉県飯能市)
一人で行くなら、自分と向き合ってみたいなと思うので、座禅ができて、写経ができて、精進料理も食べられる正覚寺さんです。
印象深いのは、精進料理。普段の食事はスマホを見ながらしてしまうこともあるけれど、「五観の偈」を唱えてから食事にじっくり向き合うと、ごはんが食べられること、さらに言えば一つひとつの食材への感謝の気持ちが湧いてくるので、本当に贅沢なひと時だなと思います。
一人で行きたい宿 2 「農家民宿Iimura」(茨城県桜川市)
一人で旅をするなら。誰かに会いにいくのもいいですよね。いままで取材してきたなかでは農家民宿Iimuraのオーナー・飯村さんがとても印象的で、また会いたいな。おしゃべりも楽しいし、ごはんもおいしいし。1日1組限定の一棟貸しのような感じなので一人の時間ももてるのがとてもよいです。残念ながら一人では泊まれないんですけど(笑)。なにより、飯村さんに会いたいな。
見どころは縁側。スマホもパソコンも持っていかず、飯村さんが入れてくれたコーヒーを飲みながら日向ぼっこするなんて贅沢な時間です。
後編の「友達と行きたい宿」「両親と行きたい宿」は、1月5日(水)公開です。お楽しみに!