[タベサキ Vol.10]ご当地スーパーの味 イツモノ
「カルメル会修道院 ゴブレット詰め合わせ」(京都・フレンドフーズ下鴨店)
京都府
2020.02.27
タベサキ
そのエリアの食を支えるご当地スーパーで、地元の“いつも”の味をピックアップ!
文:菅原佳己
「カルメル会修道院 ゴブレット詰め合わせ」
カルメル会修道院 ゴブレット詰め合わせ(1580円)
京都・下鴨のスーパーで見つけたのは、素敵な缶入りのお菓子。ふたには「ベルギー風 カルメル ゴフレット Home Made」の文字。京都の『カトリック・カルメル修道会』の手づくりの焼き菓子で、修道院のほかには市内でもこのスーパーを含めて2軒しか小売していないのだと、スーパーの担当者が教えてくれた。
香ばしい「ごふれっと」(ゴーフレットとは読まないらしい)、薄手でジュワッと口どけする「まるろっと」、ワッフルのようでじつはカリカリの「シャルロット」、ほどよいチーズの風味と塩気でワインのお供にもなる「ちーずごふれっと」の4種類の焼き菓子でワンセット。いずれも添加物は一切使っていない。日常のお菓子として「ちーずこふれっと」は単品でも扱いがあったそうだが、あまりに人気が高く生産が追いつかないとのことで、現在はこの缶入りのセット商品でしか入手できなくなっている。
修道院発の人気商品は、どんな人たちが一体どんな風につくっているのか?
思い切ってカルメル修道院に電話をしてみると、シスターの声が響き、受話器の向こうに広がる静謐な空間を感じた。
カルメル会は12世紀ごろ、パレスティナのカルメル山中で発祥した修道院。世界に広がったカルメル会が日本に初めて来たのは1933年の東京で、京都の同修道院は昨年、創立60周年を迎えたという。当時の院長がベルギー人ということで、ベルギーのクッキーを参考に日本風にアレンジしてつくられたと考えられている。
じつは、世界の修道院では、焼き菓子やビールを製造、販売し生活費を捻出。ベルギーのシメイビールや北海道のトラピストクッキーが有名だ。ここ、京都のカルメル会修道院では、1日7回の祈りの合間に、院内の小さな作業場ですべて手作業により焼き菓子を製造している。焼き型の前に立ち、一枚一枚生地を手焼きする、正真正銘の手づくりのため、一般の工場のように「ちーずごふれっとが人気のため増産!」とはいかないのだという。だからぜひ、この記事を読んでもそっと静かに買ってほしい。
缶に同封されたしおりには、京都中が祈りを捧げる五山送り火の「左大文字」を背景に修道院が描かれている。原画はシスターの手描きという。宗教や時代や国境を超えて、通じる「祈り」の力はシンプルなお菓子も抜群においしくする。
Profile
スーパーマーケット研究家
菅原 佳己(すがわら よしみ)
スーパーマーケット研究家。夫の転勤で国内外の転居を繰り返すうちに、スーパーの魅力に気づき、埋もれた日常食の発掘などの研究をスタート。ご当地スーパーやご当地グルメブームの火付け役として、テレビや雑誌、新聞などで活躍している。著書は『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』(講談社)など多数。新刊『東海 ご当地スーパー 珠玉の日常食』(ぴあMOOK中部)では、より狭くディープに探究。
https://www.gotouchisuper.online
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vol.10黄色い歓声。