【町おこし企画第一弾】 水戸の観光について地元の方と真剣に考えてみた
創刊から間もなく15年を迎える旅色。これまでは、日本全国の魅力を多数発信してきました。今後は発信だけに留まらず、まだまだ知られていない地域の魅力を再発見・再定義し、新しい観光の魅力として読者に届ける活動もしていきます。今回は、そんな思いを胸に7月に活動をスタートした「吉久保酒造に教わる梅干し体験」。8月20日(土)に実施した2回目の様子をご紹介します。
目次
旅色が考える町おこしとは!?
「地域について考える」といってもいきなりは難しい。ましてや、縁もゆかりもない土地となればなおさらです。だからこそ、旅色では実際に現地に足を運ぶことを大切にしています。実際にその地域を訪れ、話を聞き、地域の特産物に触れることで、よりリアルに地域の魅力や思い、そして課題を考えてもらえるような活動をしています。さらに、深掘りするために、各分野の専門家と活動し、より具体的に地域の観光と向き合っていきます。
そんな町おこし第一弾は、1790年の創業から12代続く水戸に根付いた酒蔵「吉久保酒造」とタッグを組み、酒というキーワードをもとに、今年7月から活動中。
水戸の特産品である「梅」に着目し、梅酒や梅シロップ、梅干しといった3つに分けて作る行程を編集部員と読者を含めた参加者全員で体験します。。1回目の活動は下記をご覧ください。
2回目は梅を干す作業を体験
活動場所は前回に引き続き、吉久保酒蔵さんが運営する飲食店「水戸 門のまえ」。
初回活動時に梅干し用に漬けた樽は3つ。梅の形を崩さないように丁寧に取り出し、ざるに並べていきます。丁寧に並べるメンバーと作業スピードを重視するメンバーなどそれぞれ個性が出ますよね。
並べたざるから天日干しをします。この日の天気は曇りでしたが、天候を考慮しながら3日間干すことに。
青い柵に干されている梅は吉久保さんが活動日の2日前に干していた梅。少し乾燥しているのが分かりますよね。
作業後はお待ちかねの昼食! 2ヶ月前に漬けた梅酒の味見も。
昼食は1階に移動して水戸門のまえがおすすめする天ぷら定食をいただきました。
サクッという食感と素材の旨味が作業の疲れを吹き飛ばしてくれます。米のおいしさにも参加者一同感激していました。やはり茨城はおいしいものが多い!
食事とともに2つの種類の酒を提供していただきました。1つは全国梅酒品評会で金賞を受賞した吉久保酒造が製造する「水戸梅酒 一品」。もう1つは自分たちで漬けて2ヶ月程度しか経過していない梅酒。一品の梅酒は和三盆と辛口清酒がベースで作られています。
自分たちで漬けた梅酒はホワイトリカーと氷砂糖がベース。味は当然異なりますがどちらも個性があり、おいしい!
熟成途中の酒を楽しめるのも、活動の醍醐味の1つ。
午後は一転して、参加者全員で水戸の観光について議論
吉久保酒造さんのスタッフでもある松沢さんは「いばらき観光マイスターS級」の資格を持っているほど茨城に精通されていて、地域活性に強い想いを持っている方。
「なかでも盛り上がったのは、水戸の「観光課題」についてでした。水戸に着いてからの交通手段や、宿泊を伴う旅行が少ないなどのいくつかの課題が挙がったなかで着目したのは「地元の方々の観光地としての意識が薄い」という点。なかでも特徴的だったのが、下記3つの意見。
1. 観光客だとわかっていても、飲食店のサービス内容が地元客と同じ。
2. 水戸駅や駅周辺はチェーン展開のお店が多く、観光気分を感じられない。
3. 地元の特産品を、店頭などで提供していない。
大切なのは1人1人の意識で作り上げる水戸の「観光ブランディング」
例えば人気観光地の飲食店で食事する際に「おすすめは?」と質問すると「電車でいらっしゃいましたか?」と聞かれ、出発まで短い時間の場合はおすすめメニューのなかでも早めに提供できるものを提案される。
そういった心配りが行き届いた接客によって、地域全体の観光ブランディングが作られていきますが、水戸にはまだその意識が根付いていないと語る松沢さん。
参加者のメンバーや編集部も実は同じような想いを感じていました。
水戸駅を降りた際に帰りにお土産を購入できるお店を探そうと思いましたが、なかなか見つからず「チェーン店が多く地元のお店やお土産店が少ないな」という印象を受けたそう。観光客として迎え入れられていない感覚があった、という声も。
地元の酒を提供することの意義
酒や米、海産物などがおいしいエリアとしては、関東近郊だと新潟県をイメージする人も多いはず。実際に新潟では、土産屋や飲食店、旅館などを訪れると、地元の酒がメニューの90%以上並び、新潟の味を存分に堪能することができるのだとか。一方で茨城では地元の酒の提供は15%程度。それ以外は他県の酒が店頭やメニューに並んでいるそうです。なかなか茨城ブランドや酒がおいしいというイメージが定着しないのはこういった点からも感じられます。
ちなみに茨城県は関東地方では最も多い41の酒蔵あるそうです。
酒好きの方には知られているように酒は地元のグルメとよく合うように作られていることが多いといわれています。だからこそ、その土地に訪れて食事をすることの楽しみが増え、満足感をより感じられる。そんな機会を失っていることを松沢さんは懸念されていました。
駅前に水戸の酒を味わえる店がオープン予定!
駅前で気軽に水戸の酒を飲み比べできて、土産まで購入できる「いばらき地酒バー水戸」が、2022年11月1日にオープン予定。吉久保酒造さんの酒ももちろん店頭に並ぶそうです。地酒販売を通して「茨城の魅力発信」をテーマに36種類の日本酒を気軽に試せるサーバーが導入されるなど試飲感覚で茨城の酒を堪能できます。酒に合うお蕎麦も合わせて提供されるようで、帰りの電車に乗り込む前、ちょっと小腹を満たすのにも最適なはず。「地酒」と「地元グルメ」のマッチングによる相乗効果で水戸に訪れた観光客へのさらなる㏚になりそうです。
◆いばらき地酒バー水戸
住所:茨城県水戸市宮町一丁目1番1 水戸駅ビル エクセル プラムストリート2階 みどりの窓口隣
営業時間:10:00~22:00
いばらき地酒バー水戸で提供するメニューについても、ひと盛り上がり
ちなみに話し合いの場では「駅前に出店するならこんな店だと嬉しい」という意見も出ました。
・茨城の米がすごくおいしいので、おにぎりも提供してほしい!
・おにぎりだと電車に乗り込んだ際にも食べやすい。
・おにぎりの具材として水戸の梅が入っていると水戸の魅力をより感じてもらえるはず!
などなど、とにかく熱量が高い!
首都圏でもたしかにおにぎりの店は人気な店が多いことや、朝早くから開店してくれていると助かるなど。店のコンセプトにまで話題が広がっていきました。
こういった声は松沢さんがしっかりと店のオーナーに届けてくれるとのこと。
今回の話し合いで感じたこと
「水戸の梅って皆さん知っていましたか?」という質問からスタートした今回の話し合い。水戸の納豆は参加者全員が認知していましたが、梅が名物であることは知りませんでした。地元の方が観光地として意識を変化させていく活動はとても大切ですが、さらに大事なことはその魅力を1人でも多くの方に知って触れてもらうこと。そんな機会を多く作っていかなければいけないということです。
旅色ではこれからも地域の魅力を発信するだけでなく、読者の方と一緒に体験し、現地で感じたことを発信していく。そんな活動をしていきたいと感じる1日でした。引き続き、現地に訪れて水戸の知られざる魅力を発信していきます。
次回は2023年3月に偕楽園の梅を鑑賞して、自分たちで作った梅酒や梅干しを食べに行こうと計画しています。まだまだ活動は続きます!